中島健人&milet、まるで“セッション”にように奏でたラブストーリー「色んな音を引き出すのがうまい」【インタビュー】

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2025年02月26日 07:01  ORICON NEWS

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映画『知らないカノジョ』で共演するmilet、中島健人 撮影:山崎美蔓(※崎=たつさき) (C)ORICON NewS inc.
 歌手で俳優の中島健人が主演、シンガー・ソングライターのmilet(みれい)が映画初出演する『知らないカノジョ』(2月28日公開)。アーティスト同士である2人が撮影を重ね、互いの音色を引き出すように芝居に相乗効果を生みながらつむいだラブストーリー。ともに走り、壁にぶつかったりしながら2つの世界を生きるカップル役を生き抜いた撮影の日々はまるでセッションのようだったとうなずく2人に合同取材会で話を聞いた。

【写真】中島健人が涙…!主題歌を熱唱したmilet

 本作は、恋に落ちて8年、喧嘩(けんか)した翌朝、2人が出会わなかった世界になっていた――“もしも”の世界を描くファンタジック・ラブストーリー。大学時代に運命的な出会いをしたリク(中島)とミナミ(milet)は結婚し、それぞれの夢を追いかけるも、大人になってからの2人の生活はボタンの掛け違いばかり。そんなある日、リクが目覚めると2人が出会っていない世界線に変わっていた…。監督は三木孝浩。

■miletの俳優としての立ち振舞いに中島が感心「何作目?」

――まずmiletさんは今作が初の映画出演となりますが、芝居挑戦に至った理由は?

milet:最初はただただびっくりして『なんで私なんだろう!?』と思ったのですが、歌手の役柄でもあったので、なるほどな、と。三木監督から『ぜひmiletさんで』と台本もほぼ当て書きのような感じでラブコールをいただきました。今まで三木さんとは、私のミュージックビデオで一度ご一緒させていただいて、三木さんの作品の雰囲気や世界観がより好きになったので、ぜひこの世界に出会ってみたいと思いました。シンガー・ソングライター役ということで、音楽にも携われる映画っていうのがすごく決め手の大きな1つでしたね。

――中島さんはそんなmiletさんをヒロインとして迎えていかがでしたか。

中島:『(miletが出演作は)何作目なんだろう?』くらいのなじみ方をしていて、自分がお芝居とは、を語れる立場ではないけど自然と誘導したりというタイミングは来なかった(笑)。本当に演じてる時の自然体な姿に自分もうまく相乗できた。あとは、セリフを間違えないので、そこがすごいですね。

milet:セリフは間違えられないなって思いました。色々、足引っ張りそうだからこそセリフだけは覚えてかなきゃって。

中島:ほんとにストイックですごかったです。

milet:多分記憶力は良い方な気がします。自分の歌詞を覚えることが身近だったのと…やっぱり足は引っ張れないなと(笑)。

中島:結構長いセリフが多いんですけど、逆に俺やキリケンさん(桐谷健太)が笑ってNGを出すことのほうがあったので…。

milet:桐谷さんがいる日はちょっと気を張っていました。逆に笑っちゃわないか…面白すぎて。変な声出したりするので(笑)。

中島:そうだね、キリケンさんは結構そういうトリッキーな時あるから(笑)。

――お2人は会う前の印象と、共演してみてから発見した意外な素顔はありましたか。

中島:miletさんはクールビューティーなイメージが強いと思うんですよ。どのアーティスト写真を見ても、やっぱりカッコいい音楽家、“アーティスト・milet”だし。僕は歌番組でお会いする機会もあったから、ちょっとだけ内側というか人柄も、少しは知っていたけれど、改めて現場で2ヶ月ぐらいしっかりご一緒すると『我々はまだmiletを知らない』というぐらい人間らしいところ…情熱的な部分あったりする。そのギャップが、すばらしい方だと思いました。

milet:人間らしいと言えば、私は中島さんの方が人間らしいと思いましたちゃんとご飯食べて生きているんだなって(笑)。

中島:食べるでしょ、それは。

milet:おにぎりとか食べるんだって(笑)。キラキラ王子様のイメージだったので。でも、陰ながら、ものすごく真面目な人なのだろうなっていうのは、これまで共演していても思っていたんですよ。実際にそれは変わらず、すごく真面目で、お仕事にストイックな方。とにかく気が回る。ずっと周りを見ている人だった。気遣いもすごいですし、だからこそ、この世界でずっと生きているのだな、と感動したところでありました。

中島:そんなふうに見てくれていたんだ。

――ともにお2人はアーティスト同士でもありますが、共感する部分や、親近感を感じたことって何かありますか。

中島:僕自身も、アルバムを出すことになり自分で楽曲を作る立場になった時に“締め切り”って言葉に追われるようになったんですよ。思い返してみると撮影中にmiletさんが締め切りで大変そうだった時期があって。その当時は、締め切りってどんな感じなんだろう?と実感が湧いてなかったんだけど、今は“こんなに大変なものを経験していたのか。しかも映画撮影中に”…と。数ヶ月経って、その苦労を改めて知りました。

milet:(今は)締め切りに追われてますか?

中島:アルバム発売1ヶ月ぐらい前でもできてないからね(笑)。miletさんはアーティストとしての先輩でもあるので、そういう点では共鳴というか、分かり合えた。数ヶ月経って、また あんなに大変な思いをしていたんだな、でも映画はしっかりやっていたから、すげえな…というところに直結しました。

milet:とは言いますけど、中島さんも撮影期間中、仕事をずっとしていて。ファンクラブのことだったり、ストーリー投稿とか空き時間に常にやっていたなと。

中島:やってましたね(笑)。

milet:だから、その仕事のストイックさも見て、私も、『ああ、まだまだ足りないな』と思いました。

中島:僕のファンクラブが「I AM:U」というんですが、miletさんが『「I AM:U」って「I LOVE YOU」みたいでいいよね』と言ってくれてテンションがあがったの覚えています。

――改めて完成した作品を見た感想を教えてください。

中島:自分自身の等身大の姿、まるですっぴんを見られているような気持ちになりました。それはなぜかというと、今まで僕が出てきた劇場映画って結構飾っている役がまあまあ多かったんです。あとはド・コメディだったり…ここまで人間味の強い役は多くなくて。しかも現代劇だし、ちょっとリアルを映さないといけないというプレッシャーもあったりするなか、三木監督が環境作りをしっかりしてくれたので、自然な飾らない姿でいれたかなと思いますね。

――初日からアドリブシーンだったと。

中島:でもだいぶあそこでチューニングできたよね。

milet:本当にあのシーンたちがあったからこそ、リクを見ながらミナミもできて。ミナミを見ながらリクもできていった感じがありましたよね。

――アドリブシーンのおかげで緊張せずスッと役に入れたんですね。

milet:私は、あんまり緊張しませんでした(笑)。

中島:いや、だから、何作目?(笑)。僕は結構緊張したんですよ。どういうセッションが行われるのかなわからなくて。いきなりセリフのないシーンから始まることは、全幅の信頼を置かれてない限り、結構キツい。でも、本番始まったらいけちゃったんだよね。

milet:私はリクを通して素の中島健人さんを見ることができたから、すごく安心しました。リクと中島さんは重なっているところがたくさんある。ちゃんと中島さんの中からリクを引き出していることがわかって、私はこの人の素と向き合えているんだという感じがした。やっぱり繕(つくろ)っている人と向き合うよりも、素顔で迎え入れてくれている人に向き合う方が、自分もさらけ出せる。それが初日から伝わってきてよかったです。

――初日から良いセッションができたんですね。ご自身の初めての作品はいかがでしたか。

milet:いや〜私、映画出演したんだなって思いました。ちゃんと自分の芝居も形になっていて、三木さんすご!って(笑)。不思議な感覚ですが、結構、自分のまま。正直なままでミナミできたと思います。繕って違う人間を演じていたら違和感を覚えると思うんですけど、ミナミが本音で語りかけてきているように見える時もあった。私のちゃんとまっすぐな心で演じることができたと思います。これをいろんな人に観てもらうことも『大丈夫だな』とホッとしました。三木さんがmiletの中のミナミをずっと探してくださっていたんだなって思います。

――ある意味、お2人のちょっと素がでているようなところもある。

中島:その感情を投影しやすい役だったからがゆえに、多分、観客の方は違和感を覚えず普通に映画に没入できると思います。

milet:miletとしてじゃなく、ミナミとして観てほしいなと思います。

中島:ミナミとしてちゃんと観てくれると思うよ。

――2人が付き合っていた世界線と、付き合ってない世界線。根底は変わらないかもしれませんが感情に変化があるからこそ、演じる上で意識していたことはありますか。

中島:僕は世界が変わる前と、切り替わった後って意識していないんです。ミナミはもちろん人生の境遇がまるで違うけどリクは前の世界を知った状態、地続きでIfの世界に行ってるからどちらかといえば、グラデーションをつける作業。言ってしまえば、鎧(よろい)をワンシーンごとに外していくっていう感覚でした。徐々に鎧を外して、イノセントな状態になっていく。ミナミに向き合って、本当に大切なものは何かを知っていく。シーンごとに自分の中で感情を埋めてったかもしれないです。

――そのなかで軸として大事にしていたものはありますか。

中島:それはシンプルに飾らないでいることだと思います。三木監督に『大人になったのび太くんの気持ちでいてほしい』と言われて『え?のび太くん?』と思って、キリケンさん演じる梶さんにドラえもん〜!みたいな感じで泣きつく。多分、売れていた頃のミクはいろんなものが繁盛しているから、それをやらない。ただ、人間はどこかやっぱ弱い部分もあって、誰かにそれを共有することで支え合っていくことを知る。僕はIfの世界でリクに人間味を感じ始めたから、すべての要素が絡んでいき、後半のリクは自分の心情も組み立てていけました。

milet:リクはすごく真っ直ぐだけど不器用。リクが夢に向かって突き進んでいく。それに振り回されるミナミもいるし、ミナミに振り回されるリクもそれはおちゃめでかわいかったです。私は気持ちを切り替えていく作業が大きかった。リクのことを好きだったミナミのシーンの翌日には、リクのことを全然知らないミナミになっていたりもする。毎日違うシーンを撮影しているからこそ、リクに心を開いている度を計算していました。5%の翌日は10%に戻らさなきゃいけないとかもあったり、そうしながらクライマックスに持っていっていました。完全に個人的な作業はありましたが、監督には『もうちょっと心開いている』『この時にはまだリクには心開いてないよね』と教えていただきながら、自分で調整していました。

―― オープニングのデートシーンはすごくミュージックビデオ的で自然な笑顔に癒されたのですが、撮影エピソードはありますか。

milet:中華街での撮影で私はエッグタルトを食べたんですけど。あのシーンがすごく楽しかった。朝から人が少ない中華街に来て…。

中島:あれはちょっとなかなかない機会だよね。

milet:私リハーサルから本当に食べちゃって。リハーサルでは別に食べなくていいって知らないから…『ごめんなさい!』って交換させてもらうことが何度かありました。

中島:確かに(笑)。教えればよかったね。あのシーンはリラックスして楽しんでたよね。

milet:あのシーンはmiletだったかもしれないっていうぐらい素だった。切り替えがすごかったよね。でも、あそこが1番キラキラしていた瞬間を切り取った最高の青春シーン。オープニングは私も大好きです。

――撮影中に距離がぐっと縮まったなみたいな瞬間や互いの信頼度が増した瞬間はありましたか。

milet:私は日に日に重なっていった。でも、一番は学校の中で走り回った時かな。やっぱ体を動かすと仲良くなるんです(笑)。ダッシュして、リクの手を取って『こっち!』って夜の学校を駆け抜けていってるシーンとか。すごく疲れたじゃないですか?一緒にへとへとになりながら、同じ気持ちになっていったことで仲良くなれました。

中島:あのシーンで、ファーストフード店に行く、みたいな話をして。全然行かないイメージだったから『嘘でしょ!?』みたいな。ちゃんと知っているんだ…って(笑)。

milet:中島さんは、ケンタッキーをおかずにお米を食べるんですよね(笑)。

中島:海外のケンタッキーでニンニク風味のクリスピーチキンにライスが出て。それがすごく好きで。

milet:庶民的なところがあるんですよね(笑)。私もそういう会話から、中島健人さんは、ちゃんと地に足ついているんだな、と思いました(笑)。

――お互いにそう思い合ってたんですね(笑)。

中島:お互いにそう思いましたね(笑)。

――オープニングはまさかのSFテイストで始まって驚きました。中島さんがすごくイキイキとされていましたが、撮影は満喫できましたか。

中島:よく見てますね〜、その通りですよ(笑)。あのシーンに関しては、やっぱり拭いきれない厨二みたいなところがあるから(笑)。銃とかいつも以上に写真撮りまくっていました(笑)。

milet:あのシーンの前日、みんなで焼肉を食べに行ったから、また熱も高まっていました。

中島;そこでチーム一丸となったんですよ。でも、あの1日きつかったし、長かった。走り回って体パンパンになって(笑)。しかも叫ぶシーンもあったり。あの日だけ別の映画を撮っているみたいでした(笑)。あれ、これ恋愛映画だよな?って。衣装合わせの段階で楽しみだったんです。この映画では僕のやりたいファンタジー系も恋愛系もどちらもできたんですよ、だから自分の願望が叶った映画でもあります。

――レストランのシーンでは印象的なエピソードもあったそうですね。

中島:最初のテイクはちゃんと感情移入できたんですけど、たまに一気に感情が入りづらくなっちゃうことがあるんです。現場にも撤収のリミットがあるなかで三木監督は『ここで泣いてほしい』という希望だったのに僕が泣けなくなってしまったんです。現場全体がじゃあもうしょうがない、オッケーかなという雰囲気になった時にやっぱりあきらめきれなくて。「ちょっともう1回できませんか」って言ってお願いをしたんですよね。「ちょっとできるかわかんないけど」と、そして多分ほんとラス1の本番に行く5秒前ぐらいにmiletさんが、ミナミとして手を握ってくれて「リクくん、私たちは愛し合ってたんだよ」って。ヨーイ、スタートとなった瞬間にバーッて泣いて(笑)。

milet:めっちゃ泣いていたね!

中島:やばかったね…それが映像になっています!

――miletさんは、どういう気持ちで中島さんにその言葉をかけたんでしょうか。

milet:決して涙を流してほしいとかじゃなくて、こんな辛い切ないシーンだけど、ミナミとリクってあんなに愛し合っていたんだよな、と思うんだろうな…と思って、そこを伝えただけ。

中島:すごかったです。

――miletさんのその言葉があったから流せた涙だったんですね。

中島:あれはもう僕はこれまでの現場で経験したことがない。対面の芝居の場合ってプレッシャーがあるからこれまでいくつかの別の作品の中でも、ダメな時があって…慰められると逆によりダメになったり。あ、俺ダメなんだって、くそ〜ってなっていたんだけど、miletさんがその役で話しかけてきてくれて。なんか一気に思い出したんです。

――それこそデートのシーンを思い出したり…。

中島:そうです。だからすさまじかったです、あの瞬間。だから…何作目ですか?(笑)。信じられない引き出し方をするから。試写後にあの涙は(miletが)私の涙でもあるよね〜って(笑)。でもおっしゃる通り(笑)。

milet:お互いにとって要のシーンでもあった。それがまたプレッシャーになっていたけど途中から本当グルーヴが高まってきて、リハーサルを重ねて、何回かあのシーン撮るうちに、本当に酔っているような気持ちになったんです。ワインを一気飲みしたみたいな気持ちでしゃべれました。実際にはウェルチですが…(笑)。

中島:でも本当にごめん。何回も飲ませちゃって(笑)。

――アーティスト同士のセッションみたいなのかもしれませんね。

中島:そうかも。だからほんとにソリストじゃないけど、なんか色んな音引き出すのがうまいんだと思う。

milet:良かった。役に立ってよかったです。

中島:いやいや、感謝しています。

――最後に公開を楽しみにされている皆さんに見どころやメッセージをお願いします。

中島:大切な何かをより大切にしようと思える作品だと思います。日常の中で欠けてるものを、見つけることができる映画でもあると思う。今、生きているこの世界がより愛おしくも感じる。当たり前じゃないんだなっていうことを、痛感する作品でもありながら、今、目の前のことに対して感謝であふれるような。大切なものをより豊かにしていきたいと思えるような作品になったんじゃないかな。ぜひ、あなたの大切な人と観に行ってほしいです。

milet:初めての演技をした作品でもありますし、中島さんとしてもソロとして初めての主演作品というのもあって、私は今まで見てた中島健人と全然違う顔がこのリクによって引き出されていたことが、共演していて楽しかったことでもあります。本当にリクの素直な、だけど不器用なところもどこか応援したくなってしまうとも思うし、ミナミの孤独にも共感してもらえるところもあると思います。大切な人やもの、そういったものへの向き合い方をちょっと優しく向き合わせてくれる。しんみりしみてくるような愛おしい映画。大人でキュートな、ちょっと甘酸っぱい、いろんなファンタジー要素もある面白いラブストーリーになっています。もちろん主題歌「I still」も歌ってるシーンもあるので、大音量で聴いていただきたいなっていうのもありますし、大切な人と見ていただきたい作品ですね。

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