開幕戦はフォード陣営のエースに君臨するキャメロン・ウォーターズ(Tickford Racing/フォード・マスタング)が記録的な強さを発揮 オーストラリアを代表する観光名所シドニー・ハーバー・ブリッジを封鎖し、壮観な“アクティベーション・ラウンチ”を開催していたRSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップは、そのまま2月21〜23日のシドニー・モータースポーツパークにて2025年開幕戦『スリフティ・シドニー500』に突入。
ここでフォード陣営のエースに君臨するキャメロン・ウォーターズ(ティックフォード・レーシング/フォード・マスタング)が記録的な強さを発揮し、週末すべての予選シュートアウトでポールポジションを射止めると、ウエットでもドライでも、昼でも夜でも。無敵の3連勝を成し遂げ、レースウイーク完全制覇の開幕“クリーンスイープ”発進を決めている。
昨季2024年のタイトルを獲得した新王者ウィル・ブラウン(レッドブル・アンポル・レーシング/シボレー・カマロ)を筆頭に、名門トリプリエイト・レースエンジニアリング(T8)の僚友を務める次世代候補のブロック・フィーニーや、古豪ディック・ジョンソン・レーシング(DJR)移籍の2023年王者ブロディ・コステッキ(シェルVパワー・レーシング・チーム/フォード・マスタング)、さらに祭典『レプコ・バサースト1000』の優勝経験を持つチャズ・モスタート(ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド/フォード・マスタング)や、こちらも新天地を求めたアントン・デ・パスカーレ(チーム18/シボレー・カマロ)など、今季のシリーズも豊富なタレントがタイトルコンテンダーとして集う。
そんななか迎えたシーズン最初の真剣勝負となる金曜予選は、チャンピオンチームのフィーニーを0.3秒の大差で破ったウォーターズが、2025年シーズン最初のポールポジションを獲得。一方で王者ブラウンは最終ラップにミスを犯し、Q1をカットラインからわずか0.003秒差の11位で終え、Q2進出を逃す厳しいスタートを切った。
「最初の走行では順調だったが、望んでいたところまでには至らなかった」と、自らの失態を認めたブラウン。「2回目のアタックではタイムは悪くないように見えたが、ターン8に向かう途中でフロントがロックしてしまい、コースアウトした。望んでいたタイムを記録できず、残念ながらトップ10には入れなかったが、結局はそれが現状だ。今夜はなんとか良い戦いをして挽回し、明日に向けリセットしたい」
■20年ぶりとなるトップ4独占
迎えた金曜ナイトレースのオープニングは、ポールシッターが力強いスタートでリードを奪い、そのまま独走状態へ。一方、2番手発進だったフィーニーは中盤でパンクを喫する災難に見舞われ、タイヤ交換作業でトップ争いから脱落して14位に終わり、勝者ウォーターズは2位モスタートに17秒の大差を築いてチェッカーを受ける。
終盤にマット・ペイン(グローブ・レーシング/フォード・マスタング)との表彰台争いを制したトーマス・ランドル(ティックフォード・レーシング/フォード・マスタング)が3位に入り、11番手スタートのブラウンは5位まで挽回してフィニッシュ。これでフォード陣営がレース1の表彰台ばかりかトップ4を独占し、2005年開幕戦以来となる記録を達成した。
レース後、予選でのブラウンに続きフィーニーもまた失意のパンクは自らのドライビングミスであることを明かし、ターン3でコースを外れ路肩に車輪を落とし、コース復帰の際に「タイヤを切った」と説明した。
「ただミスをしただけだ。事前のブリーフィング・メモで路肩について警告を受け『路肩には大きな落差があり、埋め戻しは行われません』と書かれていた。それにラップの終わりでピットインすることも知っていた」と続けた前年度ランキング2位のフィーニー。
「ターン3でほんの少しのミスがあった。リヤタイヤが端から落ち、おそらく1フィート(約30cm)ほどの落差があったんだ。大きく滑って脱輪した方がよかったけど、戻ったときにタイヤが完全に粉々になってしまい、パンクした。クラッシュせずにピットへ戻ってこられたのは幸いだった」
こうして宿敵T8陣営が人為的ミスにより流れを失うなか、土曜のレース2に向けた予選でもウォーターズの勢いが加速。引き続きフィーニーを0.2268秒差で撃破すると、ナイトレースでは5番手発進を決めたブラウンを含め壮絶な戦いを繰り広げることに。
序盤8周目でセーフティカー(SC)が導入されリードを失ったモンスターエナジー・マスタングだったが、最後の義務ピットを終えフィーニー、ブラウン、モスタートの背後から逆襲を開始すると、残り4周で首位フィーニーの背後へ。
ターン4での接触を含むバンパー・トゥ・バンパーの2台に、さらに3番手ブラウンが迫って三つ巴と化すなか、最終コーナーからサイド・バイ・サイドに転じた優勝争いは、加速勝負のドラッグレースで優ったマスタングが、まさに“サイドドラフト”の効果を得たようにフィニッシュライン直前で前へ。
この劇的スプリントでわずか0.030秒差で先頭に立ったウォーターズが連勝を収め、0.1996秒遅れでブラウンが3位チェッカーとなった。
■史上ふたりめのおまけ付き
「ああ、ターン4で激しく突っ込んでフロントをロックしてしまった。ブロック(・フィーニー)はこちらがロックしたのに気づかずターンインしたと思う。でも大丈夫だった、彼というよりこちらのせいだからね」と語った連勝のウォーターズ。
「僕はできる限りベストを尽くしてそのポジションを返し、そこからすべてのバトルと戦術を駆使して、ただゲームが始まっただけ。とても楽しかった。勝利を収め、このフォード・マスタングをポジション1に運べたのは最高だ」
明けた日曜、週末最後の予選シュートアウトも制したウォーターズは、定位置となったポールからレース3をスタート。全車が天候急変の可能性を気にしつつ義務ピットの2回目を終えると、残り11周で雨がサーキットを襲った。
この混乱で元T8配下のルーキー、クーパー・マレー(エレバス・モータースポーツ/シボレー・カマロ)と交錯したフィーニーを尻目に、快走を続けたウォーターズがトップのままフィニッシュラインへ。
2025年の新規則ではすべてのスプリントで最速ラップのボーナスポイントが提供されるが、週末の3レースすべてで最速ラップを記録し、金曜に最高65ポイント、土曜と日曜に125ポイントを獲得した30歳のウォーターズは、2021年のボーナス導入以降、あの“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲンに続く週末最高315ポイントを獲得した史上ふたり目のドライバーとなった。
「なんて素晴らしいことだ。2025年のスタートとしては最高の週末になった」と、悲願のタイトルに向け好発進を切ったウォーターズ。
「こんなに速いクルマ、これほど良きものを提供してくれたチームには感謝してもし切れない。天候が裏切るだろうこともわかっていた。その時点では本当に余裕があったし、残り5周でペースを落として、そのままゴールにたどり着くことができた」
「最後に雨が降ってきたときでも、クルマは相変わらずとても速かった。雨は実に良くて、キャビンの温度が少し下がったよ。モンスター・マスタングは(黒の塗装により)かなり暑かったからね!」
こうして幕を開けたRSCの2025年シーズン。続く第2戦は恒例となるアルバートパークでのF1グランプリ併催イベント『メルボルン・スーパースプリント』が、3月13〜16日に開催される。