ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの2台のポルシェ963 2025WEC第1戦カタール WEC世界耐久選手権のディフェンディングチャンピオン、ケビン・エストーレは、2025年のシーズン開幕戦となる『カタール1812km』のハイパーポールにポルシェのファクトリーカーが2台とも出場できなかったことに対し、「がっかり」し「イライラしている」と述べた。
■受け入れがたい3年目の苦戦「奇跡は期待できない」
2月27日、ルサイル・インターナショナル・サーキットで行われた予選のセッションでは、5号車ポルシェ963のジュリアン・アンドラウアーが11番手、6号車エストーレは13番手となり、トップ10車両が進出する二次予選『ハイパーポール』への進出を逃した。
開幕前週に行われた公式テスト『プロローグ』、そしてレースウイークに入ってからのプラクティスでのパフォーマンスから見て、ポルシェに対する期待は控えめではあったものの、エストーレは昨年963が優勢だったこのカタールのトラックでのパフォーマンスのなさに失望を隠せなかった。
「とくに1周のパフォーマンスにおいて、かなり不足している」とエストーレは現状を語った。
「FP2、FP3のロングランを見ると、少し良くなっているように見える。そこまで遠いところにいるわけではない。だけど、これまでに行った予選シミュレーションでは、最低でも(トップから)1秒差だった」
「チャンピオンシップを争うためにここにいるのに、戦うためにはパフォーマンスの面で遠すぎるので、がっかりしてるし、イライラしている」
「結局のところ、これが現実だ。今週末はそれを受け入れるしかない。イモラ、スパ、そしてもちろんル・マンでは良くなることを願っているよ」
ポルシェが28日に行われる決勝レースで進歩できると確信している一方で、エストーレは、ロングランのパフォーマンスではトップランナーに挑戦するには充分ではないだろうと警告している。
「奇跡は期待できない」とこのフランス人ドライバーは語る。
「表彰台を争うことは、確実に期待できない。だけど、良い仕事をすればポイントを獲得できるはずだ」
「どうなるか見てみよう。単独でのロングランペースは大事なかことだが、レースを戦い抜く能力や、追い抜きは別問題だからね」
エストーレは今週のカタールでのレースで963のBoP(性能調整)についても言及した。ポルシェは新シーズンをトヨタGR010ハイブリッドと並ぶ最重量メーカーとしてスタートしており、その最低重量は1064kgとなっている。
ポールポジションを獲得したフェラーリ499Pは27kg軽量だが、250km/h以下では6kW、いわゆる「パワーゲイン」のしきい値を超えると約13kWもパワーが落ちる。
「最大の違いは、間違いなく重量だ」とエストーレ。
「ここは重量に敏感なトラックで、実際、僕らはこれほど重量が重いことはなかった」
「昨年、(トヨタとフェラーリは)それについて大いに不満を言っていたが、我々も彼らと同じように苦戦しているようだ」
一方、5号車のアンドラウアーは、ワークスチームのポルシェ・ペンスキー・モータースポーツに加入して初のWEC予選に臨んだが、ハイパーポール進出に必要な基準タイムにわずか0.020秒、届かなかった。
「もちろん、あちこちで少しタイムを稼ぐことはできるが、バランスは悪くなく、自分のドライビングも悪くなかった」とアンドラウアーはアタックを振り返っている。
「ハイパーポール進出のための100分2秒を削り出すことは、間違いなく可能だった。だが、もし進出していたとしても、それほど上のポジションを獲得することはできなかったと思う」
エストーレは、ポルシェの競争力の欠如は、963プログラムの最初の年よりも受け入れがたいと付け加えている。
「2023年には、クルマのバランスが取れていないレースが多かったが、いまはこのクルマに関する知識があり、エンジニアもそれほど変わっていない。1年目よりも3年目の方が苦しんでいるなんて、受け入れがたい」とエストーレは語っている。