氷上で鍛えたドライビング感覚。MOTUL AUTECH Zの千代、ブリヂストン2年目の手応えと高星との再タッグ

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2025年02月28日 16:20  AUTOSPORT web

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2025スーパーGT富士メーカーテスト 千代勝正(MOTUL AUTECH Z)
 2014年から長らくニッサン陣営を率いてきたロニー・クインタレッリが昨年スーパーGTの引退を選択したことで、2025年の23号車MOTUL AUTECH Zは千代勝正と新加入の高星明誠という新しいラインアップで迎えることになった。2023年に3号車Niterra MOTUL Zで組んだコンビの復活でもあるが、新たにニッサン陣営を率いることになる千代にこのオフの感触を聞いた。

●「結果が出るまで答えはない」コンディションへの合わせこみを重視したシーズンオフに

 悲願の初戴冠を狙う千代に富士スピードウェイで行われたメーカーテストの現場にて、まずはロニーが去った23号車での今季の抱負を聞く。

「気持ちはこれまでと変わらないし、チャンピオンになるための努力を続ける」と切り出した千代。高星とのコンビ復活に希望を語る。

「彼の運転はもちろん上手ですし、ミスもしない。安定感があって(チームメイトとして)安心できるドライバーですね。去年も隣同士のピットガレージで見ていて、レースの強さもさらに増しているように見えたので、そこがすごく楽しみですね。お互いが違うところでやってきたことを活かして、今年のチームにプラスの力を持たせたらいいなと思っています」

 クインタレッリと組んだ昨年の千代は、2度の2位表彰台獲得を含むランキング8位となった。2024年シーズンはそれまでのミシュランからブリヂストンにタイヤメーカーを変えて臨んだ初年度であったが、開幕前テストでは雨が多く、タイヤの走行データやノウハウが得られないままシーズンを迎え、パッケージのポテンシャルを安定して引き出しきれないまま不本意な形でシーズンを終えてしまった。

 ブリヂストン2年目を迎えようとしている千代は、現段階のタイヤへの理解度について聞くと、まだまだ慎重な様子が伺えた。

「今年はブリヂストンさんとのコンビネーションも2年目になるので、よりタイヤを理解していきたいですし、さらに上手に使ってシーズン戦っていきたいです。もちろん毎回が勉強なのですが、今はまだ、より良いタイヤとその使い方を見つけていくステップだと思います。結果が出るまで答えはないので常に試行錯誤しながら、という感じですね」

 それでも、GT500クラスはシーズンが始まるとテストの時間も制限されるため開幕までの時間は残り少ない。今年のGT500の車両開発はエアロが開発凍結されるなど昨年からの変更点は少なく、クルマのセットアップとタイヤのマッチング、タイヤ選択がシーズンの大きな鍵を握ることは間違いない。

「このレースは本当に、2度と同じコンディションで走るシチュエーションがない」とその難しさを口にする。

 タイヤの状況が天候や路面状況で大きく変わり、ドライビングにもさまざまな引き出しが求められる中、千代自身も自分のドライビングの感覚を広げる意味で、このオフもさまざまなトライを続けている。そのひとつが、北海道へ足を運んだ雪上での走行トレーニングだ。

「オフは北海道で氷上のトレーニングを行って、1週間ほど、凍ったところをひたすら走りました」

「GTは冷えた路面から雨まで、いろいろなコンディションでのコントロール力が必要になってきます。ですので、(凍結路面で)自分の感覚と神経に集中してドライビングをして、あとは楽しみながらドリフトとかもしています(笑)。僕は定期的に行っていますが、最近は積極的に取り入れるドライバーも増えてきたと思います」

 こうして準備が進められているオフシーズン。今年はレースフォーマットにおいて予選方式に変更があり、昨年の合算方式から2023年まで行われていたノックアウト方式へと戻ることが決まっている。

 タイム合算方式で行われた2024年はどのセッションで千代の速さが際立っていた印象も強いため、ノックアウト方式への回帰が追い風になるのでは? と問うと、「そうだといいのですが(苦笑)」と、微笑みながらも首を横に振る。

「去年の自分と今年の自分は違うので、一戦一戦、その瞬間で自分のパフォーマンスを最大限出し切れるように準備しなきゃいけない。やっぱり『去年良かったから今年も良い』と決まっているわけではないですからね」

「このレースで大事なのは、いかにその瞬間のコンディションに合わせ込むかだと思うので、今年もそこにドライバーとして集中していきたいなと思います」

 どれだけ速さを持っていても、その日の天候や風向き、路面などを含めたすべての状況を味方にしないと勝てないのが今のスーパーGT。そのことを念頭に置いて気を引き締める千代は、ふたたび組む高星とともにクインタレッリから継いだNISMOの23号車を2015年以来の王座に導くことができるだろうか。

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