2025スーパーフォーミュラ鈴鹿公式テスト 大湯都史樹(SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING) 3月7〜9日に、三重県の鈴鹿サーキットで開幕を迎える全日本スーパーフォーミュラ選手権の2025シーズン。昨年、タイトルを獲得した坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)がカーナンバー『1』を付け連覇に挑む年となるが、注目の海外ドライバーやルーキー、新チームもひしめく、見どころの多いシーズンとなりそうだ。
2025年は一部レースフォーマットも変更され、1ウイーク2レースのイベントも増加。また、タイヤのスペックが変更されるなか、2月に行われた公式テストは雪のため日程短縮と、どの陣営も充分に走り込めていない状況で開幕からいきなりの土日連戦を迎えるため、その勢力図も気になるところ。
ここでは公式テスト前日の『メディアデー』でのドライバー・監督らの発言を中心に、今季体制の変更点や注目ポイントなどをチームごとにまとめ、連載していく。
今回はSANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGINGだ。
■SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING 2025年スーパーフォーミュラ参戦体制
・ドライバー:阪口晴南(No.38)/大湯都史樹(No.39)
・チームオーナー:卜部治久
・監督:立川祐路
・エンジニア:渡邊信太郎(No.38)/岡島慎太郎(No.39)
・エンジン:トヨタ/TRD 01F
■初優勝へ向け「強い気持ち」で挑む阪口
2023年限りでスーパーGTのGT500クラスを引退した立川祐路監督が率いるセルモ・インギング。今季は新たにチームの地元・山口県で事業展開する総合商社の株式会社三基商会をメインパートナーに加え、SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGINGというチーム名で参戦する。
ドライバーふたりは昨年から継続となるが、大湯車担当エンジニアには岡島慎太郎氏が就任。岡島エンジニアは昨年38号車のパフォーマンスエンジニアを務めていたほか、スーパーGTではトラックエンジニアとして大湯とともに仕事をしており、スムーズな移行となりそうだ。
なお、大湯と岡島エンジニアは2020年のスーパーGT・GT300クラスでもタッグを組んでいた。「自分自身としてはすごくコミュニケーションが取りやすいですし、去年とは違うクルマ作り、進め方をできると思っているので、非常に楽しみ」と大湯。
メーカーとチームを移籍して2年目を迎える大湯はさらに、今季タイヤのスペックが変更になった点と、開幕ラウンドの舞台・鈴鹿サーキットの路面改修について、「チームがそこをどう判断するかが難しいし、その分析や、それを先々のレースにむけてどう考えていくかが、エンジニアの腕の見せどころ」と新たな状況への対応ポイントを語っている。
移籍初年度の昨年は表彰台1回、ドライバーランキングは9位と、事前に期待されていたリザルトとは離れたものになってしまった大湯は、「なんとか上位でフィニッシュできるレースを続けていきたい」と2025年の復活を誓う。
一方、昨年は開幕戦の予選でポールポジションを手にし、一躍トップグループへ加わることを予感させた阪口だったが、その後は度重なるマシントラブルにも見舞われ、ランキング12位でシーズンを終えた。
「去年は悔しいレースが多かったので、今年は結果に結びつくレースをしたいと思います。僕自身、セルモに入って5年目となりますが、なかなか初優勝が獲れずにここまで来てしまって……周りのドライバーがみんな勝っていくなかで自分がまだ取り残されているので、今年はかなり強い気持ちを持って、開幕戦から勝ちを狙って戦っていこうと思っています」
その38号車のトラブルについて立川監督は、「SUGOで大きなクラッシュがあり、そこでモノコックにダメージが出てしまいました」と説明。そのクラッシュが起因かどうかは分からないものの、シーズン後半には電気系と思われるトラブルが相次ぎ、ハーネスをはじめとしたパーツ類を交換しても、走行中に急にシャットダウンしてしまう症状が出てしまっていたという。
電気系が突然シャットダウンしてしまうとデータ上にも確かな記録が残らず、「最後までなかなか原因がはっきりしなかった」。他車を巻き込むクラッシュにも発展したことから、昨年最終戦には開発車両を借りる形で臨んだことを立川監督は明らかにしたが、その後オフのテストでは症状は出ていないようで、「100%直った、とは言える状況ではない」ものの、不安要素はだいぶ取り除くことができたようだ。
立川監督は「38号車に関しては、今年はまずはきちんと走って、結果を残すというところに行きたい。39号車の方も大湯選手のことをよく知っている岡島エンジニアがやってくれるので、コミュニケーションを深める方向でチームとしても行きたいと思っています」と2025年シーズンのチームとしてのビジョンを語る。
昨年開幕戦で見せた速さを再現できるか、そしてそれを安定して決勝のリザルトにつなげられるかどうかが、当面の焦点となりそうだ。