15号車BMW Mハイブリッド V8(BMW Mチーム WRT)をドライブするケビン・マグヌッセン BMW Mハイブリッド V8をドライブして2025年のWEC世界耐久選手権でハイパーカークラスにデビューを飾るケビン・マグヌッセンは、開幕戦の舞台であるルサイル・インターナショナル・サーキットをF1時代に走行した経験がある。しかし、ハイパーカーへの適応を進めていくなかでは、その経験が「邪魔になった」と認めている。
このデンマーク人は、ハースF1チームでの2度目の在籍期間を終えてF1を離れ、BMW Mチーム WRTのファクトリーハイパーカープログラムに参加している。
1月のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権開幕戦デイトナ24時間レースでBMWから初参戦したマグヌッセンは、今週末の『カタール1812km』レースでWECでの初陣を迎えている。彼は、15号車BMW MハイブリッドV8を、ドリス・ファントール、ラファエル・マルチェッロとともにドライブする。27日に行われた第1戦の予選では、ファントールのアタックにより2番手を獲得した。
マグヌッセンは、ルサイルでのレース経験があり、過去2回、F1のカタール・グランプリに出場している。
2度目の出場は昨年12月で、彼にとってはハースチームでの最後から2番目の出走となったが、9位でフィニッシュを果たした。
だがマグヌッセンは、それらのレースで得たコースに関する知識は、F1マシンと現在のトップクラスの耐久プロトタイプカーの間に大きな違いがあるため、逆効果になったと指摘している。
「その経験は、持たないほうがいいものだろう。まったく違うからだ」とマグヌッセンは語った。
「すでに体内にある種のリズムができあがっているわけだけど、コーナーに入るたびに、それを捨てなければいけない」
「F1では、ターン12、13、14は全開だ。だが、このクルマ(ハイパーカー)では、F1マシンよりもパワーが少ないため、ゆっくりと到達することになる。ブレーキをかけたり、シフトダウンしたりすると、まったく違うんだ」
「だから、すべての経験は、ある意味では実際には少し混乱を招くけど、今ではもう大丈夫だ」
マグヌッセン自身が認めているように、先週末の公式テスト『プロローグ』では、新しいマシンとコースの組み合わせに適応するために、「数回のセッション」が必要だったという。
「自分の身体の中にある基準のようなものだから、時間がかかったのだと思う」と彼は語った。
「コーナーによっては、何の問題もないと思って走っていっても、いざそこに差し掛かると滑ってしまう」
「だから、F1マシンの基準がなかったら、もっと限界に近い感じがすると思うけど、まぁ大丈夫だ。僕はなんとかやっていると思う」
「今でも、たとえば右トリプル・コーナーのようなコーナーでは、限界に近い感じがすることがある。なぜなら、僕の基準は全開にできるかどうかだからね」
■「オペレーションの観点では、一歩上」のWRT
マグルヌッセンはまた、最近離脱したハースF1チームと比較した際に、チームWRTのレベルは「F1とそれほど変わらない」と明かした。
「正直、自分が何を予期していたのか分からない」とマグヌッセン。
「F1から来たので、物事はかなり違うだろうと想定していたと思う。ここに来ると、さらに構造化されたものがいくつかある」
「WRTは豊富な経験を持つ、オペレーション組織だ。長年(耐久レース界に)存在している。僕がF1から来た頃は、僕は実際に経験が少なかった」
「だから、ある意味では非常に優れた構造があり、そのレベルはF1とそれほど変わらないことが分かる」
「いくつかのことについてはレベルが低いと言えるが、それは単に規則によってそうなっているからだ。データの側面など、(WECでは)アクセスできないものがいくつかある」
「(F1では)テレメトリーですべてが非常にオープンで、ここにはない、クルマに関する多くの情報にアクセスできる。F1には、ここにはないシミュレーションツールがあるんだ」
「したがっていくつかの点では一歩下がるが、オペレーションの観点からは一歩上だと言える。ここの人たちはとても優秀だし、とても楽しいよ」