インタビューに応じるジャーナリストの小西一禎氏=2月3日、東京都中央区 共同通信の政治記者を休職して「駐在員夫(駐夫)」になった経験を持つジャーナリストの小西一禎さん(52)が時事通信のインタビューに応じた。家庭内のジェンダー不平等が女性の政治参入を阻害し、それが是正を遅らせる悪循環につながっていると指摘。課題解決には男性の当事者意識を醸成する必要があると訴えた。
「片方の性別の人間が優先する政策しか実現されない傾向にあり、豊かな国造りを阻んでいる」。日本の議会の女性比率の低さがもたらす問題点を、小西氏はこう断じる。女性活躍や子育てに関する当事者意識が低い男性ばかりでは、そうした政策の優先度が下がるという論理だ。
小西氏は女性議員数が伸び悩む原因として、家事・育児の負担が女性に偏っていること、長時間の政治活動が求められることを問題視する。
家事・育児に加え、地元の選挙対策でも家族の全面支援を受けられる男性政治家(候補者)に対し、女性は同じレベルで活動に注力できない。政界以外の管理職登用に関しても同様で、この差が参入障壁を高くしている。打開には「制度と意識の両方を同時に変えることが必要」と主張した。
制度面では、議員や候補者の一定比率を女性に割り振る「クオータ制」の導入を提唱。期限や罰則を付けて「急進的な制度」とすることがポイントだ。男性が家事に参加できるよう、長時間労働が求められる現状を是正する必要もあると語る。
一方、女性側のこれまでの取り組みが「男性に響いていない」として、意識改革の難しさも指摘する。女性活躍担当相、内閣府の男女共同参画局長はほとんど女性が務めるが、小西氏は「男には関係ない、という遠心力を呼んでいる」と分析。自身も休職前は「男女共同参画問題は女性だけが言っている話だ」と思っていた、と振り返る。
どうすれば訴えが男性に響くのか。「同じ男性が言えば少しは聞く耳を持つんじゃないか」。女性だけが主体となるのではなく、関連政策に男性の視点も取り込み、メディアの情報発信にも男性を関与させる。「男女共同参画」に対し、文字通り男女が共同参画することを提案する。
選択的夫婦別姓に関しては「待ったなしだ」と導入を要求。自民党の保守派らが主張する旧姓使用の拡大は「折衷案ではなく悪手だ。いずれまた改正せざるを得なくなる」と批判した。
選択的別姓を巡っては4月以降、国会での本格議論が始まる見通し。自民幹部は採決で所属議員の賛否を縛る考えを示しているが、小西氏は「国家の根幹に関わる問題だからこそ党議拘束を外すべきだ」と話し、各議員の意思を尊重する自由投票が望ましいと訴えた。
小西一禎氏(こにし・かずよし)慶大卒、法政大院修了。1996年共同通信社入社。政治部で首相官邸、外務省、与野党担当を経て2017年に妻の米国赴任同行のため休職、駐夫に転身。20年に退社し、男女共同参画専門のジャーナリストとして主に男性をターゲットに情報発信している。
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インタビューに応じるジャーナリストの小西一禎氏=2月3日、東京都中央区