『ケナは韓国が嫌いで』© 2024 NK CONTENTS AND MOCUSHURA INC. ALL RIGHTS RESERVED.現代の韓国社会で生きづらさを感じる女性が人生を模索する姿を描いた『ケナは韓国が嫌いで』。公開を来週に控え、韓国にいるチャン・ゴンジェ監督とオンラインをつないでのトーク付き試写会が行われた。
本作は、“ヘルコリア”と呼ばれた地獄のような長時間通勤や、恋人との不透明な未来、仲は良いけれど息が詰まるような家族との日々のなかで、“ここでは幸せになれない”と感じた28歳の主人公ケナ(コ・アソン)が、新しい人生を始めるため、全てを手放し、ニュージーランドへ旅立つ物語。
2015年に原作小説を読んだチャン・ゴンジェ監督自らが映画化を熱望し、9年の歳月をかけて本作を完成させた。
映画上映終了後、スクリーンに映し出された監督は「今日はお越しくださりありがとうございます。映画の成り立ちを話したいと思います」と挨拶。
聞き手のライター・月永理絵から「小説のどういうところに惹かれて映画化を決めたのでしょうか?」と尋ねられると、「自分はケナとは年齢、世代など置かれた状況は異なるが、韓国社会での生きづらさを同じように思っている人がいると感じたのが第一印象でした」と監督。
「韓国では小学校から大学卒業、就職、結婚、子どもを持つか持たないか。すべて激しく競争させられる。それらは簡単にみえますが違います。自分はもっと違う夢物語を描きたかった」と思いを吐露した。
原作小説ではケナはオーストラリアに向かうが、映画ではニュージーランドに変更した違いに関しては「プロデューサーに勧められてニュージーランドを訪れたのですが、韓国の反対の位置にあり物理的にとても遠い分、より事情を抱えている(韓国)人が多かった印象を持ちました。ケナが求めた南の国でもありますし(笑)」と語った。
続いて「監督の過去作品を拝見しても俳優たちがとてもリアルで自然な会話を交わすことにいつも感動していてドキッとするセリフが出てくるのが監督らしさだと思っています。会話場面はどのように作られ、俳優にはどのように演出しているのでしょう」という質問に対しては、「会話のシーンにある程度時間をかけることで、その人物の心情が描けると考えています」と応じる監督。
「この映画は食事をしながら話すシーンが多いですが、そこにもキャラクターの心情がわかるように心がけて撮影しました」と話し、「また役者への演出では、カット後に“演技しながらどのような気持ち、気分でいたか”をよく聞きます。その時に自分が感じた気持ちと一致している時にOKを出すようにしています」と明かした。
さらに、ケナがニュージーランドでかけがえのない友人となるジェイン(チュ・ジョンヒョク)に「幸せ?」と聞いて笑い合うシーンについては、「大抵の作品では海外で出会った男女は恋人同士になりますが、私はそうしたくなかった」と意図を明かす。
「ふたりをよき友達として支え合う存在にしたかった。そんなふたりのなにげないニュアンスを表したシーンです。一見なんでもないシーンに注目してくださって、ありがとうございます」と感激していた。
また、小説とは異なるラストについては、「僕は基本的に決めずに動く人が好きなので、ケナにもいつも新しい可能性を求める人にしたかった」と語った。
また、本作の公開にあわせて、劇場初公開作を含む過去4作の特集上映「映画監督チャン・ゴンジェ 時の記憶と物語の狭間で」も決まり、来日も決定しているチャン・ゴンジェ監督。
最後に「よい機会がありまして、『ケナは韓国が嫌いで』だけでなく僕の過去の作品も日本のみなさんに観ていただけることになりました。ご興味お持ちいただけましたらぜひチェックしてみてください。お気をつけてお帰りください」と感謝を述べていた。
『ケナは韓国が嫌いで』は3月7日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネ・リーブル池袋ほか全国にて公開。
(シネマカフェ編集部)