写真 1954年の自衛隊発足から70年余りで女性自衛官の数は着実に増え、陸海空3自衛隊ともに職域・配置制限もほぼ撤廃された。近年は女性用区画の整備など勤務環境の改善が急速に進む。ただ、女性自衛官の採用は頭打ち。ハラスメント対策、幹部への登用も課題となっている。
2024年3月末時点の自衛官の数は22万3511人。このうち女性は8.9%に当たる1万9961人で、10年前と比べ約1.6倍に増えた。政府は30年度に12%へ引き上げる目標を掲げる。
女性の採用は当初看護職域に限られていたが、67年に陸自の一般職域に開放され、空自や海自も続いた。戦闘機のパイロットや潜水艦の乗組員など活躍の場は広がっている。
ただ、勤務環境の整備は十分とは言えない。自衛隊で女性初の「将」となった近藤奈津枝・大湊地方総監(海将)は、ハード面の整備は進んだとしつつ「女性はどんどん増えていて、トイレや更衣室が足りないこともある。制度面や意識改革にも課題は残る」と指摘する。
防衛省は、トイレや浴場の整備、艦艇へのサニタリーボックス設置など、女性活躍推進に向けた予算を倍増させ、取り組みを強化している。
23年度の自衛官採用者数に占める女性の割合は18%となり、目標の17%を上回った。だが、ここ数年は伸び悩む。同省担当者は「ロールモデル(手本)となる人物が少なく、働く姿がイメージしにくいことも要因ではないか」と分析する。
陸自では元自衛官の五ノ井里奈さんが在職中の性被害を22年に実名で告発。組織風土の改革など、ハラスメント根絶も急務だ。
制服組だけでなく、背広組幹部にも女性は少ない。同省審議官級以上の「指定職」ポストに就く女性はわずか2人にとどまっている。
◇トランプ氏「多様性」批判
一方、米軍の23年の女性比率は17.7%で自衛隊の約2倍に上る。ただ、トランプ大統領は、バイデン前政権が進めた、少数派に配慮する「多様性、公平性、包括性(DEI)」の取り組みが軍を弱体化させたと批判。前政権下で女性として初めて海軍制服組トップに就いたフランケティ海軍作戦部長が解任された。トランプ政権下で女性比率が低下する可能性もある。