2025年F1プレシーズンテスト ニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー) バーレーンでのF1プレシーズンテストが終わり、2025年シーズンが3月14〜16日のオーストラリアGPで幕を開ける。10チーム、そして20人のドライバーたちは、今シーズンどのような活躍が期待され、どのような課題に直面するのか。長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏の見解を、チーム別にお届けする。今回は2024年コンストラクターズ選手権最下位10位だったキック・ザウバーに焦点を当てる。
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■キック・ザウバー:上層部の体制一新も、再び困難なシーズンになるか
非常に苦戦していた2024年の初めと比べると、今のキック・ザウバーはほぼ全く違うチームだ。アウディが2024年7月にCEOアンドレアス・ザイドルを解雇して以来、COOおよびCTOにマッティア・ビノット、チーム代表にジョナサン・ウィートリーを起用するなど、重要なポジションにたくさんの新しい顔ぶれが並んだ。
一方で、ザイドルが下した選択もいくつか残された。ジェームズ・キーはテクニカルディレクターとしてとどまり、早い段階で契約を結んだニコ・ヒュルケンベルグが今年のドライバーラインナップをリードする。
デザインチームに関しては、2024年後半までほとんどが変更されなかったことから考えて、2025年型マシンが明確な進歩を遂げる可能性は低い。したがって、2026年にアウディF1ワークスチームになる前の、ザウバーとして戦う最後のシーズンも、再び困難な一年になるかもしれない。
■ニコ・ヒュルケンベルグ:期待の新人相手の戦いが将来を決める
昨年4月にアウディと3年契約を結んだヒュルケンベルグは、自分と交渉を行ったザイドルが、実際にアウディ体制に移る前にチームを去るのを目の当たりにした。それによってヒュルケンベルグの目標の基準が変わったといっていいだろう。
それでも、10年前にザウバーに在籍していた経験のあるヒュルケンベルグは、状況を把握し、2026年に向けて可能な限り強固な基盤を築くことを目指すだろう。ただ、チームメイトのガブリエル・ボルトレートは、今のトップであるビノット自身が選んだドライバーで、非常に評価が高い。ヒュルケンベルグは複数年契約を結んでいるが、今年ボルトレートとの比較でどの位置に来るかが、将来を決定づけることになるかもしれない。
■ガブリエル・ボルトレート:才能は明らかだが、実力発揮には数戦の経験が必要
ボルトレートは、FIA F3とFIA F2で2年連続してタイトルを獲得するという、シャルル・ルクレール、ジョージ・ラッセル、オスカー・ピアストリという限られた者しか成し遂げていない成果を挙げて、F1デビューのチャンスをつかんだ。
新チームリーダーであるビノットが直々に選んだボルトレートが、平均をはるかに上回る才能の持ち主であることは間違いない。しかし彼は今年、キャリアで初めて、グリッドの後方を走るとはどういうことかを知ることになる。それは彼にとって衝撃的な経験になるかもしれない。
ボルトレートは、年齢のわりに非常に成熟しているように見えるし、ベテランのヒュルケンベルグを悩ませるだけの速さがある。だが彼の大きなポテンシャルが本物であることを証明するのに、数戦はかかるだろう。
[オートスポーツweb 2025年03月05日]