エイドリアン・ブロディ(C)Getty Images 現地時間2日に開催された「第97回アカデミー賞」にて、『戦場のピアニスト』以来22年ぶり2度目の主演男優賞を獲得したエイドリアン・ブロディ。アカデミー賞主演男優賞において、2度のノミネーションで2回ともに受賞、通称「2-for-2」を果たしたことで、同映画賞史上初の快挙を成し遂げた。さらに、その受賞スピーチの長さでギネス記録を更新した。
【画像】映画『ブルータリスト』フォトギャラリー ジョルジオ アルマーニのミッドナイトブルーの1つボタンのピークドラペルのテーラードスーツに、ホワイトのイブニングシャツとボウタイをあわせて授賞式に出席したエイドリアン・ブロディ。
これまでは1943年に開催された第15回アカデミー賞、『ミニヴァー夫人』で主演女優賞時のグリア・ガースンが行った5分30秒間のスピーチが最長記録だったが、今回ブロディはスピーチの終了を告げるBGMも制止して、トータル5分40秒に及ぶスピーチを披露したことで、見事(?)82年ぶりにギネス最長記録を更新した。
なお、「2-for-2」には、過去にルイーゼ・ライナー、ヴィヴィアン・リー、ヘレン・ヘイズ、ケヴィン・スペイシー、ヒラリー・スワンク、マハーシャラ・アリら7人が名を連ねるが、主演男優賞部門においてはエイドリアン・ブロディが史上初となる。
映画『ブルータリスト』(公開中)でエイドリアン・ブロディは、第二次世界大戦下にホロコーストを生き延び、アメリカへと渡った、ハンガリー系ユダヤ人建築家ラースロー・トートの30年にわたる数奇な半生を熱演した。
同映画は、主演男優賞のほか、作曲賞(ダニエル・ブルンバーグ)、撮影賞(ロル・クロウリー)の計3部門で受賞を果たした。
■エイドリアン・ブロディの受賞スピーチ(全文)
神様、この恵まれた人生に感謝しています。
まずは、この世界から感じた途方もない愛の数々と、私に敬意と感謝の気持ちを持って接してくれたすべての人々に感謝したいと思います。私はとても幸運です。
ご存じのとおり、俳優という職業はとても儚く、とても華やかに見える職業です。しかし、このステージに戻ってくる特権を与えられて得たことは、ある程度の見通しを持つことです。キャリアのどの段階にいようと、何を成し遂げようと、すべてを失うこともあるのです。今夜のこの舞台を最も特別なものにしているのは、そのことを認識し、大好きなこの仕事を続けて、賞を獲得できることへの感謝の気持ちです。これは「目的地」を意味します。これは、『ブルータリスト』のなかで私が演じたキャラクターが言及していることですが、私にとってはキャリアの頂点を越えて、再出発のチャンスでもあります。そして出来れば、今後の人生20年の間に、このような意義深く重要な役割にふさわしいことを証明できる、重要な機会でもあります。
私は、この仕事を通じて、優雅さと善良さと輝きを放つ素晴らしい人間である他の候補者たちとこの賞を共有したいと思います。
感謝したい人がたくさんいます。できるだけ簡潔に述べたいと思います。もちろん私たちを信じてくれた製作チーム、多くの友人、この映画に携わった多くの会社(A24、シャープ、フォーカス、ユニバーサルetc)が映画のために美しい精神で尽力してくれたこと、そしてこの素晴らしい作品のなかで私が存在する余地を与えてくれたブラディ(監督)とモナ(共同脚本)。そして、共演者であるガイとフェリシティはとても素晴らしい人です。
私はこの賞を、自分の自尊心だけでなく、私の価値観をも再活性化してくれたパートナーのジョージナとその子供たちと共有したいと思います。この賞に至るまで、ジェットコースターのような日々でしたが、私をあなたの人生に受け入れてくれてありがとう。
そして、ジュディ・ベッカー(美術監督)は、本物のラ―スロー・トート(映画の主人公で建築家)です。あなたこそがこの舞台に上がるにふさわしい。
(ここで終了の音楽が鳴るが)もうスピーチを終わりにしますが、お願いします、どうか音楽を消してください。私はこのスピーチを以前にもやったことがあります(会場大爆笑)。ありがとう、この経験は初めてのことではありません。スピーチは短くします。ひどい結末にはしません。私はここにいる父と母にも感謝しなければなりません。彼らは私に、尊敬と優しさという素晴らしい精神の基盤を築き上げてくれました。父と母はこの夢を追いかける強さを与えてくれました。
私は再びここに立ち、今世界が求める長引く夢を代表しています。反ユダヤ主義の居場所はありません。人種差別にも居場所はありません。より健全で、より幸福で、より包括的な世界を祈ります。過去が私たちに何かを教えてくれるとしたら、それは憎しみを野放しにしないようにという戒めだと思います。
あなたたちを愛しています。あなたたち全員に感謝しています。正しいことのために戦いましょう。笑顔を絶やさず、お互いを愛し続けましょう。一緒に世界を再建しましょう。ありがとう。