こっちのけんと「はいよろこんで」がヒット TuneCore Japan、楽曲を無制限で配信できる新サービス

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2025年03月05日 11:00  ORICON NEWS

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2月18日に正式運用が始まった「Unlimtedプラン」
 「TuneCore Japan」は、誰でも自分の楽曲をApple MusicやSpotify、TikTok、Instagramなど55以上の音楽ストリーミングサービスやSNSへ配信し、収益化できる音楽デジタルディストリビューションサービス。その料金プランに、固定利用料金で“リリースし放題”となる「Unlimitedプラン」が登場した。

【グラフ】リリース数と1曲あたりの収益の例

■こっちのけんと「はいよろこんで」がヒット「TuneCore Japan」の新サービス

 インディペンデント・アーティストが楽曲を配信しようとすると、曲を作るだけでなく、さまざまな手続きや必要データの作成が必要となるが、個人での契約手続きや楽曲の管理、収益化は現実的に非常に困難だ。そうした部分をしっかりとサポートしてくれるサービスが「TuneCore Japan」であり、楽曲とジャケットのデータさえ用意すれば、世界185ヶ国/55以上のプラットフォームでの配信が可能となり、収益は100%アーティストに還元。原盤権もアーティスト自身で保有できるという大きな特徴を持っている。2024年、こっちのけんとが「TuneCore Japan」で6thシングル「はいよろこんで」をリリースし、SNSを含む総再生回数が140億回を突破。昨年の『第75回NHK紅白歌合戦』への出場、そして『第66回輝く!日本レコード大賞』で最優秀新人賞を受賞したことは記憶に新しいだろう。

 このように長年に渡りインディペンデント・アーティストの活動を支え続けてきた「TuneCore Japan」を運営するチューンコアジャパンが2月18日、同サービスの使用料にあたる音楽配信プランに、固定利用料金で音楽プラットフォームへ“リリースし放題”となる「Unlimitedプラン」の提供をスタートした。

 これまで、音楽配信プランはシングル、アルバムの1リリースごとの従量料金制「Pay Per Releaseプラン」のみであったが、そこに新たに加わったのが「Unlimitedプラン」だ。「Pay Per Releaseプラン」は、1曲単位のシングルで年間1551円(税込)、2曲以上のアルバムで年間5225円(税込)であるのに対し、最も手軽な「Unlimitedスタータープラン」は年間4400円(税込)で何曲でもリリースが可能となる(プランにより条件あり)。単純計算で、1年にシングルを3曲リリースするならば、「Unlimitedスタータープラン」のほうがお得に利用できるというわけだ。

 この「Unlimitedプラン」は、今年に入りベータ版の運用を開始。早期アクセス希望者が殺到し、SNSでも「配信曲数がたくさんあるとありがたい」「インディペンデントで継続的に作品をリリースしたい人にオススメ」「ドンドン曲作ってリリースしよう」とポジティブなコメントがあふれ、2月18日に正式運用を開始した。

■環境の変化に対応 ユーザーからのフィードバックでサービス改善

 チューンコアジャパンの山本祐哉ゼネラルマネージャーは「サービスをローンチした12年前と今とを比較したとき、3つの大きな時代の変化が『Unlimitedプラン』導入の背景となりました。1つは、サービスローンチ当初は『配信がこんな安価で可能』と評価を受けていたのですが、昨今楽曲を配信することが当たり前になり、配信する人も増えた反面、初心者の方の数も増え『Pay Per Releaseプラン』が経済的なハードルとなってしまった。また、音楽制作をする人が10代、20代前半でも増えており、費用を気にせずリリースできる環境の必要性を感じていました。2つめは、海外のアーティスト環境との対比で見た時にリリースし放題サービスが当たり前のものとなっていること。そして3つめは、利用アーティストが配信した累計楽曲数と累計収益の関係性を見た際に、多くの楽曲をリリースしているアカウントほどアカウントの収益は多く、また1曲あたりの収益も増加する傾向が見られたことです。新プラン導入は数年前から検討しており、コロナ禍が落ち着いた今、ようやく世界のインディペンデント・アーティストと同じような環境を提供できる体制を整えられました」と説明。

 同社プロダクトマネジメントチーム プロジェクトマネージャー 宿本真吾氏は「従来のプランだとリリースする都度に料金がかかってしまうので、利用料を抑えるために、例えば10曲を作ったとしても1年目は半分だけのリリースにしたり、アルバムの曲数ができるまでリリースを控えたりする、というアーティストさんの声もありました。でも『Unlimitedプラン』で、そういうことは気にせず、どんどんリリースしていただける環境を提供できるようになりました」と話す。

 注目の新「Unlimitedプラン」には、4つのプランを用意。音楽配信ビギナー個人向けにオススメの「スタータープラン(年額4400円税込)」、継続的に音楽を作っている個人向けの「スタンダードプラン(年額9900円税込)」、本格的なサービスの手厚い「プロプラン(年額2万3100円税込〜)、法人向けの「エンタープライズプラン(年額11万円税込〜)」と、アーティストの活動スタイルや規模感によって選べるようになっている。もちろん、これまで通りApple MusicやSpotifyなどの音楽ストリーミングサービスでの収益、iTunes Storeなどのダウンロード収益は100%が還元される。

 「今は価値観も多様化し、音楽で食べていこうという人だけでなく、ボカロ界隈に代表されるように、ライフワークとして音楽をクリエーションしながら楽しくコミュニティに属すといったスタイルや、副業、兼業で音楽を作っている方がたくさんいらっしゃいます。そういう方にとって、経済的、心理的にリリースのハードルを下げられるよう、より活動しやすい環境を作っていくための、我々の大きな節目、ファーストステップだと捉えています。」(山本氏)

 「新プランの公開にあたり、ダッシュボードのデザインも一新しました。ベータ版の早期アクセスユーザーさんからいただいたフィードバックでも、『きれいになった』『使いやすくなった』という声をたくさんいただき、ありがたく思っています。使い勝手全般に関しても、いろいろな意見を開発エンジニアと共有しながら、正式公開まで、随時、改善を繰り返してきました」(宿本氏)

■定期的なリリースが最大のプロモーション

 ではここで、各プランの詳細を見てみよう。まず大前提として「スターター」「スタンダード」はメインアーティストが1人のみの個人向けプランである点は要チェックだ。つまり、複数の名義を使い分けるなどメインアーティストが複数いる場合は、「プロ」もしくは「エンタープライズ」の選択が必須となる。

 また、個人アーティストであっても、例えばアルバムの全曲を他アーティストと共作/コラボレーションという形でリリースしたい場合も同様だ(ただし、アルバム中1曲のみを“フィーチャリング”として他アーティストに参加してもらう場合は「スターター」「スタンダード」でも配信可能。なお「スタンダード」以上であれば、作詞・作曲者に収益分配が行えるスプリット機能を利用できる)。

 そのうえで、「スターター」と「スタンダード」の間には、1つのアルバムに含められる最大アルバム楽曲数(前者が5曲、後者が15曲)や、毎日の再生数を把握できる速報レポートの有無、配信開始までにかかる日数などの違いがある。また「スタンダード」と「プロ」に関しては、メインアーティストの人数の違いに加え、各音楽ストリーミングサービスにリリース情報をサブミットし、各サービスのバナーやピックアップ欄、公式プレイリストなどで自身の楽曲が展開・紹介がされやすくなるサブミット機能の有無が大きな相違点となっている。これらの差異を押さえつつ、自身の活動スタイルや音楽制作ペースを踏まえて、4つの「Unlimitedプラン」、あるいは「Pay Per Releaseプラン」のどれが最適かを検討すると良いだろう。

 「高校生など、本当にこれから音楽を配信していきたいという人は、月額に換算すると約360円程度で始められる『スターター』がオススメです。既に音楽配信をある程度は経験していて、コライトもやっているような方なら、スプリット機能が使える『スタンダード』、本格的に音楽配信で収益を上げようと考えている方はサブミット機能がある『プロ』や『エンタープライズ』を選んでいただくのが良いかと思います。昨今、TikTokなどショート動画で曲がバイラルする際、オリジナル以外にもスピードアップVer.やスピードダウンVer.が出てきますが、ああいったリミックスだったり、コミュニケーションとしての音楽を何パターンか作る際も、『Unlimitedプラン』ならリリースしやすいでしょう。インディペンデント・アーティストにとって、定期的なリリースは、それ自体が最大のプロモーションになりますので、みなさんの使い方次第で、いろんなことが実現できるのではと期待しています」(山本氏)

 事実、山本氏によれば、過去の事例で主要チャートにランクインするようなヒットを記録したアーティストは、ショート動画等のプロモーション以上に、やはり活動の根幹となる楽曲リリースを継続的に行っている傾向が強いと言う。作品を出し続け、リスナーがアクセスしやすい状況を作っておくことで、何かのきっかけで楽曲がバイラルした際、過去のリリース作品も聴かれるようになり、それらの相乗効果によって再生数や収益がアップしていく。分かりやすく例えるなら、サブスクリプションサービスの時代に1億円稼ごうとしたとき、1曲で達成しようとするのか、100曲で考えるのか。前者はとても難しく、しかも自分ではコントロールできない側面が多いものの、定期的にリリースしていけば、各曲の再生数や収益は絶対的にプラスされていくものであるから、こうした「自分でコントロールできることからやっていくのが大切」だと山本氏は語る。

 「昨年のデータを見てみると、ストリーミング再生数の13%程度は海外からのものです。こうした、ある意味で狙っていなかったリスナーの好反応も、リリースしないことにはわかりません。そういう意味でも、継続的なリリースで多くの人にリーチする可能性を高めていくことは重要で、そのためにもぜひ『Unlimitedプラン』を活用いただければと思っています」(山本氏)

 「我々にとって、アーティストのみなさんがたくさん曲を作り、リリースしていただくことが何よりうれしいことですので、サービスのクオリティを維持しながら、さらに拡張していかねばと考えています」(宿本氏)

 なお、既に「Pay Per Releaseプラン」で楽曲を配信している場合、「Unlimitedプラン」に切り替えると、配信中の楽曲も定額料金プランに内包される。例えば、現状でアルバムを10枚リリースしているアーティストなら、今まで年間5万2250円かかっていた料金が、「スタータープラン」に切り替えると10アルバムの配信が年間4400円で行えるということにある。もちろん、とりあえず「Pay Per Releaseプラン」で1曲をリリースし、反応を見つつ、時間をかけて複数曲ができたら「Unlimitedプラン」に切り替えるという選択も“アリ”だ。

 このように、音楽配信プランの選択肢の追加や機能性の向上といったインディペンデント・アーティストに対するサービスの拡充だけでなく、TuneCore Japanは今年、世界で4社、日本国内では唯一となるApple Musicプリファードディストリビューター(Apple Musicの推奨配信パートナー)に認定された。さらにYouTubeからも、日本国内で2社のうちの1社となるYouTubeプリファードパートナーに認定され、世界的にも高い信頼を得る存在となっている。一方では、現代の音楽活動の基礎が学べる「ARTIST GUIDE」というメディアを立ち上げるなど、若い世代のクリエイターを支援する活動にも積極的だ。

 音楽をクリエイトするだけでなく、それをどう広めていくか、そして自分の人生においてどのようなスタンスで音楽活動を続けていくのかなど、多角的な視点からクリエイターをサポートしてくれる「TuneCore Japan」。その中に新しく生まれた「Unlimitedプラン」は、多くのインディペンデント・アーティストにとって、使い方次第で自身の可能性を大きく飛躍させられるひとつのスタートラインと言うべきものとなり得るだろう。

文・布施雄一郎

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