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東京電力福島第1原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣2人の上告審で、最高裁第2小法廷(岡村和美裁判長)は、無罪を言い渡した1、2審判決を支持し、検察官役の指定弁護士による上告を棄却する決定を出した。「巨大津波を予見できなかった」とした1、2審の判断について、小法廷は「不合理な点はない」と指摘した。
世界最悪レベルの原発事故を巡り、安全対策を指揮してきた旧経営陣の刑事責任が問われないことが確定する。裁判官3人全員一致の意見で、5日付。検察官出身の三浦守裁判官は審理から外れた。
強制起訴されたのは、東電の勝俣恒久元会長と、いずれも元副社長の武黒一郎(78)、武藤栄(74)両被告。勝俣元会長は2024年10月に84歳で死去し、裁判が打ち切られていた。
3人は、原発に津波が押し寄せて事故が起きることを予見できたのに漫然と運転を続け、福島県大熊町にあった双葉病院と介護老人保健施設から避難を余儀なくされた入院患者ら44人を死亡させたとして、16年2月に強制起訴された。
公判では、旧経営陣が巨大津波の襲来を予見し、事故を回避できたかが争われた。
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東電は08年3月、政府の地震調査研究推進本部(地震本部)が公表した地震予測「長期評価」に基づく「最大15・7メートルの津波が原発に襲来する可能性がある」との試算を把握した。ただ、長期評価の信頼性を精査する必要があるとして外部の専門家に検討を依頼し、すぐに巨大津波への対策を取らなかった。
指定弁護士は長期評価には信頼性があり、これに基づけば巨大津波を予見できたとして、禁錮5年を求刑した。
1審・東京地裁は19年9月の判決で、長期評価は専門家から信頼性に疑問の声が上がっており、原発を止めると判断するほどの信頼性があったとは言えないと指摘。巨大津波を予見できなかったとして無罪を言い渡し、2審・東京高裁判決も23年1月に支持していた。
小法廷は決定で、長期評価は積極的な裏付けが示されておらず、行政機関や地方自治体が全面的には取り入れていなかった点に言及。予見可能性を否定した1、2審の判断が「合理性を欠くと考えるのは困難」と結論付けた。【巽賢司】
強制起訴制度 検察の不起訴処分の妥当性を非公開で審査する検察審査会で、無作為に選ばれた審査員11人のうち、8人以上が起訴すべきだと判断すると「起訴相当」議決になり、検察が再捜査する。検察が改めて不起訴にした場合、検察審の再審査で8人以上が起訴すべきだとすれば、今度は「起訴議決」となり、裁判所が指定する検察官役の弁護士が強制起訴する。
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