「過去だけの問題でない」=空襲被害者、補償求める―戦後80年で脱「受忍論」へ

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2025年03月07日 07:31  時事通信社

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法整備を求めてチラシ配りをする全国空襲被害者連絡協議会の河合節子さん=6日午後、東京都千代田区
 一晩で約10万人の命を奪ったとされる東京大空襲から10日で80年。戦時中は各地で空襲による犠牲者が出たが、民間人に対する国家補償は現在までなされていない。遺族らでつくる全国空襲被害者連絡協議会(全国空襲連)は「過去だけの問題ではない。次世代に同じ思いをさせてはならない」と救済法の整備を求めている。

 「将来、皆さんの身に降りかかるかもしれません」。大空襲で母親と2人の弟を亡くした河合節子さん(85)=千葉市=ら全国空襲連メンバーは国会会期中の毎週木曜日、国会前で法整備を求めるチラシを配っている。2019年に始めた活動は6日で150回を数えた。河合さんは「国が空襲被害に対して責任を取った形ができれば、将来の戦争を踏みとどまらせる力にもなる。今につながる問題だ」と語る。

 全国空襲連が国会内で4日開いた集会では、参加者が「戦後処理は何も終わっていない」などと訴えた。両親と姉を亡くした永田郁子さん(89)=埼玉県蕨市=は「このまま自分もあの世に行くと思うとがっかりする」と吐露した。

 連携する超党派の議員連盟がまとめた救済法案は、空襲により障害者となった人に対する1人50万円の一時金に加え、被害の実態調査と追悼事業が主な柱。河合さんや永田さんのような遺族は対象外だが、全国空襲連運営委員長の黒岩哲彦弁護士によると、金銭的な補償よりも民間の被害に対し国が責任を認めることに主眼が置かれている。

 民間人に対する補償を求めて起こされた訴訟などでは、戦争の被害は国民が等しく我慢しなければならないとする「戦争被害受忍論」を盾に請求が退けられてきた。一方で、国と雇用関係にあった軍人や軍属とその遺族に支払われた恩給や年金の総額は60兆円に上る。

 13年に最高裁で敗訴が確定した東京大空襲訴訟では「立法を通じて解決すべきだ」と補償に含みを持たせる指摘があった。15年からは超党派議連が救済法成立に向けて協議を重ねるが、国会提出には至っていない。

 背景について、全国空襲連は「戦後補償問題は解決済み」とする政府見解があると指摘。空襲被害に対する補償を認めると、他にも波及するのではとの懸念から、自民党内で調整が進んでいないとみている。

 4日の集会に参加した超党派議連会長で自民党の平沢勝栄衆院議員は「戦後80年。何としてでもこの問題をやらなければならないが、一番のネックは自民党だ」と述べ、党総裁の石破茂首相を説得していく考えを示した。 

このニュースに関するつぶやき

  • でもこれ「日本」に賠償求めるって事はその賠償を現役世代がしろつってんのと同じじゃないのか?だって結局巡り巡ってその原資は税金になるんやろ。
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