最高裁=東京都千代田区 東京電力福島第1原発事故の民事訴訟では、東電旧経営陣の責任を認めた判決も出ている。株主代表訴訟では東京地裁が2022年7月、勝俣恒久元会長ら4人に計13兆円余りを支払うよう命令。史上最高額とみられ、事故の影響の大きさが改めて示された。
判決で、東京地裁は「原発で過酷な事故が発生する恐れがあることを認識しながら、必要な措置を指示しなかったときは、取締役としての善管注意義務に違反する」と指摘。津波地震を予測した政府機関の「長期評価」には相応の信頼性があり、取締役に津波対策の実施を義務付けるものだったとして事故の予見可能性を認めた。
その上で、原子力部門の責任者だった武藤栄元副社長が津波対策を先送りしたとし、「著しく不合理で許されるものではない」と非難。武黒一郎元副社長については武藤氏の対応を是認し、本来の任務を怠ったと判断した。
勝俣元会長と清水正孝元社長に関しても、「速やかな対策を講じない原子力部門の判断に著しく不合理な点がないか確認していれば、(津波の)試算結果を認識し得た」と義務を怠ったことに触れ、4人の不作為と事故の因果関係を認定した。
旧経営陣は判決を不服として控訴。株主側も控訴し、6月に東京高裁で判決が予定されている。
一方、事故の避難者が国に賠償を求めた訴訟では、最高裁第2小法廷が22年6月、「東電に安全対策を命じても事故は防げなかった可能性が高い」と責任を否定。長期評価の信頼性や津波を予測できたかについては触れないまま、原告敗訴とした。