呉美保監督と高田亮の「子供のドラマ」夢かなう…「ふつうの子ども」9・5全国公開

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2025年03月07日 09:00  日刊スポーツ

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呉美保監督の新作映画「ふつうの子ども」(C)2025「ふつうの子ども」製作委員会

24年に9年ぶりの長編映画「ぼくが生きてる、ふたつの世界」を公開し、国内で高評価を得た、呉美保監督(47)の新作映画「ふつうの子ども」が、9月5日から全国公開することが7日、決定した。モントリオール映画祭(カナダ)最優秀監督賞はじめ国内外多数の映画賞に輝いた14年「そこのみにて光輝く」、モスクワ国際映画祭(ロシア)コンペティション部門に出品された15年「きみはいい子」でも組んだ、脚本家・高田亮氏(54)とのタッグで、今の日本の「ふつうの子どもたち」を描く。


「ふつうの子ども」は、生き物が好きな、いたって普通の小学4年生、10歳の男子・上田唯士(うえだ・ゆいし)が“環境問題・意識高い系女子”の三宅心愛(みやけ・ここあ)に恋する物語。近づこうと、心愛が夢中になっている“環境活動”をともにすると、クラスのちょっぴり問題児・橋本陽斗(はしもと・はると)も加わり、3人が始めた活動は思わぬ方向に向かう。


高田氏は、シリアスなサスペンスからラブコメディーまで幅広いジャンルを手がけるが「ずっと前から子ども同士の人間ドラマを書きたいと思って」小学校への取材を重ね、オリジナル脚本を書きあげた。


呉監督は「3年前の夏、菅野和佳奈プロデューサーから『子どもの映画を作りませんか?』とプロットを手渡されました」と、高田氏の物語との出会いを振り返った。「くしくも過去2作でご一緒した脚本家、高田亮さんによるオリジナルストーリーで、天馬行空でありながらも泰然自若、久しぶりに味わう高田節にほくそ笑みながらも読了後には、長年願い続けてきた私の夢『ありのままの子どもを思いっきり描きたい!』をかなえられるじゃない。と奇跡の巡り合わせに武者震いせずにはいられませんでした」と、子供を描きたい、という点で一致した。


主人公の唯士は22年「LOVE LIFE」(深田晃司監督)、23年の「ちひろさん」「アンダーカレント」(今泉力哉監督)、テレビ東京で放送中のドラマ「それでも俺は、妻としたい」(足立紳監督)など出演作が相次ぐ嶋田鉄太(しまだ・てった)が演じる。唯士が恋する、“環境問題・意識高い系女子”心愛は、瑠璃(るり)が演じ、初めての本格的な芝居ながら堂々とした演技を披露する。2人と“環境活動”をする陽斗は、映画出演作の公開が多数控えている味元耀大(みもと・ようた)が演じる。メインの3人に加え、クラスメートは全てオーディションで選ばれた。


コメント全文は、以下の通り。


呉美保監督 3年前の夏、菅野和佳奈プロデューサーから「子どもの映画を作りませんか?」とプロットを手渡されました。くしくも過去2作でご一緒した脚本家、高田亮さんによるオリジナルストーリーで、天馬行空でありながらも泰然自若、久しぶりに味わう高田節にほくそ笑みながらも読了後には、長年願い続けてきた私の夢「ありのままの子どもを思いっきり描きたい!」をかなえられるじゃない。と奇跡の巡り合わせに武者震いせずにはいられませんでした。


子どもって、目の前のことに夢中で周りなんか見られなくて、ゆえに大人の想像を悠々と裏切ってくれるんですよね。短絡的で狂熱的で、それこそが子どもである証し。今この瞬間だけ、を生きる子どもの姿にかつての自分を重ねてハッとさせられることもあります。そんなありとあらゆる子どもの喜怒哀楽をスクリーンに詰め込みたい。


実はこの10年、私には「映画館に映画を観に行けない」という悩みがありました。平日は仕事や家事に追われ、休日に映画館に行くのはわが子たちが観たい子ども向け映画、それはそれでうれしい時間ですがどこか物足りなさもあり。かといって自分が観たい映画を子どもたちが楽しんでくれるとも思えず、映画館での鑑賞を諦めていました。


ふと思ったんです。子どもも大人も、共に楽しめる映画を作ればいいんだと。子どもはワクワクドキドキできて、大人はいとしくも身につまされて、願わくばあれこれ語り合えるような、ありそうでなかった子ども映画を。


今回、何度ものオーディションを重ねて、嶋田鉄太、瑠璃、味元耀大をはじめとするたくさんの素晴らしい才能に出会えました。キラキラと光輝く宝物のような子どもたちを、早く観てもらいたい! これまでの映画作りで、最も自由に、何かを解き放つことができたかもしれません。


高田亮氏 ずっと前から、子ども同士の人間ドラマを書きたいと思っていました。見たいのは、日々ストレートな暴言を言い合い、大人からの小言に耐え、ほんの少しの時間でも楽しみを見つけようとする人間の強烈なパワー。子ども時代の恐怖。無邪気の危険性。感情乱高下の中で生きる彼らの濃密で貴重な時間だ。呉美保監督の映画には、それら全てがあり、全てが輝いているように見えました。本当は、子どもに見えるものは大人にも見える。と思える映画です。


菅野和佳奈氏(企画・プロデューサー)観た後に、思考が大きく広がり、社会のことまで延々と考えてしまう映画がある。私にとって、ショーン・ベイカー監督の「フロリダ・プロジェクト」がそうだった。主人公たちの生きる世界は厳しいが鮮やかで、映画が放つエネルギーのなんとまぶしいことか! ステレオタイプな価値観の押し付けをせず、子どもたちの目線から見える世界を描いているだけなのに、心がざわつき最後にはガシっとつかまれた。なんだろうこの心のざわつきは?と考えてしまうのだ。あぁこんな映画をいつか日本でできたら−−。が、実現してしまった。高田亮氏のオリジナルストーリーで呉美保監督が手がけた本作は、今の日本の子どもたちが持つエネルギーと危うさも含めた可能性を一切の偏見を入れず映し出した。このエネルギーをどう生かすのか? 彼らの未来はこのままちゃんと輝いているんだろうか。私には子どもがいないが、撮影でひと夏を子どもたちと過ごし、彼らの持つエネルギーに圧倒され、引かれてしまった。子どもがいるいないに関係なく、老若男女、今の日本の子どもたちから何か見えてくるものがあると思う。

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