ピアノ・トリオバンド、Omoinotakeが躍進を遂げている。昨年発売の「幾億光年」が大ヒットし、同曲も収録されたメジャーセカンドアルバム「Pieces」をこのほど発売。島根県の中学からの同級生、藤井怜央(ボーカル&キーボード)福島智朗(ベース)冨田洋之進(ドラム)がさらなる前進を目指し、3人だからこそ生み出せる「踊れて泣ける」唯一無二のサウンドを奏で続ける。【玉利朱音】
★センバツ入場行進曲
<歌詞>どんなスピードで追いかけたら また君と巡り逢えるだろう
ここ1年で多くの人が耳にしたフレーズだろう。昨年のTBS系ドラマ「Eye Love You」の主題歌「幾億光年」がストリーミング累計4億回再生を突破する大ヒットを記録。藤井は「もちろんヒットを目指して作ってはいましたが、ここまでの広がりはイメージできていなかったです」と率直に話した。
同曲は第66回日本レコード大賞の優秀作品賞に選ばれ、24年を代表する1曲に。18日開幕の第97回選抜高校野球大会の開会式の入場行進曲にも決定した。
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福島 開会式は球児の皆さんの心を鼓舞するようなシーン。そういう意味でも「幾億光年」が僕らの手から離れた場所に行ってくれたなって思いましたね。
長い雌伏の時を経てヒットをつかんだ。メンバーは島根・松江市出身で、中学からの同級生。中学、高校とそれぞれバンド活動に励み、上京後の12年に3人で結成した。
福島 僕とドラゲ(冨田)が同時期に上京して「バンドやろう」となった時にいいメンバーとなかなか出会えなかった。レオ(藤井)がピアノを弾けてすごく歌えることを知ってたので、「ピアノボーカルにして3人でやってみよう」って。
冨田 当初は(展望が)フワフワしてましたね。
藤井 もともとドラムだったので、ボーカルをちゃんとやり始めたのはこのバンドが初めて。それまではただ好きで歌ってました。
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ブラックミュージックを吸収した独自の音楽性を徐々に確立するも、ライブハウスの集客に苦戦。17年ごろから始めた渋谷でのストリートライブがきっかけで、メジャーへの道が開けた。
福島 路上も最初は人が集まりませんでしたが、回数を重ねるうちに手応えを感じ始めました。メジャーの方も路上で見つけてくれたみたいな形でしたね。
冨田 度胸もついたね。
藤井 音を止めないことを意識して、間奏中も熱い思いを話したりしました。
★「バンドとしての今」
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結成から9年後の21年にメジャーデビュー。そして24年。「幾億光年」のヒットを経て、大みそかにはNHK紅白歌合戦のステージに立った。結成初期から目指し続けてきた夢の舞台で、当時を振り返る3人の声も熱を帯びた。
藤井 出場を聞いたときはみんなで抱き合っちゃいましたね。特にドラゲが大歓喜してました。
冨田 あれは高校球児のようでしたね!
藤井 胴上げでも始まるかと思ったよ(笑い)。
福島 出場者発表後は、LINEの通知も見たことないくらい来ましたね。
藤井 本番もお話しさせてもらいましたが、やっぱり渋谷のストリートライブから同じ渋谷のNHKホールでっていう流れはすごく感じるものがありました。
そして年が明け、1月にメジャーで2枚目のアルバム「Pieces」を発売。タイトルには、前年の活動を経てより実感したという熱い思いを込めた。
福島 僕たち3人は役割分担がすごくはっきりしていて、その分誰か1人でも欠けた時にバンドとして成立もしないし、ライブもできない。1人では大きなことはできないけど、集まり合えばOmoinotakeという1つのバンドになれて自分を表現できるんだという思いを込めました。
アルバムのための新録曲も複数加え、バリエーション豊かな1枚に。タイトル曲「Pieces」には「バンドとしての今」を詰め込んだ。SEVENTEENのJEONGHANとのコラボ楽曲「Better Half(feat.JEONGHAN of SEVENTEEN)−Japanese ver.−」は「遠距離恋愛」がモチーフだ。
福島 JEONGHANさんにオファーをいただき、兵役に行かれるタイミングだったこともあってこのテーマで書きました。より思い入れがありますね。
同アルバムを引っさげた全国ツアーも開催。22日の地元島根公演を皮切りに、初の東阪ホール公演を含めた全国8カ所をめぐる。
冨田 ホールとライブハウスで、会場の照明や演奏などを変える部分もあるかもしれません。そういう案も出ているので、どうなるか非常に楽しみです。
福島 以前からですが、僕らは曲の振り幅がいろいろな場所にあるので、既存の曲に今回のアルバム曲が加わってそれがさらに深くなったのではと思います。
藤井 僕たちは「踊れて泣ける」を掲げて曲を作っています。実際にライブの現場で「本当に踊れるし泣ける」っていうのを体感してもらえるのが一番。エモーショナルなライブにしたいですね。
バンド人生を大きく変えるヒット曲と出会い、渋谷の路上から夢に見たステージに立った24年から、今後も勢いを止めるつもりはない。
福島 「紅白に出続ける」というのを目標にしていてよかったです。その分以前よりもプレッシャーがかかってはきますが、本当に「これまで続けてきてよかったな」と日に日に思わせてくれる毎日です。
冨田 紅白に出られて、ヒット曲も1曲出せて。でもライブのキャパがめちゃくちゃ増えたかといわれたらそういうわけでもなくて。もっと広い会場でもやりたいですし全然まだまだって感じです。1つの夢として武道館やりたいですね。
藤井 「幾億光年」のおかげで紅白歌合戦に初出場できましたが、他の曲はあまり聞いたことがない方もまだたくさんいると思っています。ここで終わらずに、これから出す曲も、今までの他の曲ももっとたくさんの人に聞いてもらえるようにしていきたいです。
「幾億光年」と紅白初出場がゴールではない。3人で肩を組んで、その先の1歩を求め続ける。
▼「幾億光年」MVに出演した高石あかり(22)
「いつか僕ら巡り逢えたなら 輝きの中待ち合わせよう」。寂しい世界の中で、ずっとその人のことだけ想い、想っている間は世界が輝いている。そんな切なくもチャーミングな、とても好きな歌詞です。パフォーマンスを近くで見せていただく撮影もあり、真っすぐで透き通った声に切なさや寂しさ、この楽曲の“君”に向けた想いがじかに心に伝わってきました。ポップな曲調にストレートに想いを届ける歌詞と藤井さんの歌声が、私含め多くの方に響いていて、改めてMVに出演させていただけたことをとてもうれしく思います。
◆Omoinotake(オモイノタケ)
島根・松江市出身のピアノ・トリオバンド。メンバーはボーカル&キーボード藤井怜央(ふじい・れお、愛称レオ)ベース福島智朗(ふくしま・ともあき、愛称エモアキ)ドラム冨田洋之進(とみた・ひろのしん、愛称ドラゲ)。12年に結成し、21年11月にEP「EVERBLUE」でメジャーデビュー。バンド名は福島が一番好きな日本語「思いの丈」に由来し「気持ちのありったけを全部込められるようなバンドになれたら」。バンドのほとんどの楽曲の作詞を福島が、作曲を藤井が担う。
◆「Pieces」
進化を遂げたOmoinotakeの「踊れて泣ける」を詰め込んだ渾身(こんしん)の1枚。「幾億光年」やブルボン アルフォートのCM曲「アイオライト」などを収録。冨田は「『フラジャイル』がバンド史上ズバぬけて好きな曲です」。
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