WRCチャレンジプログラム2期生の小暮ひかる/トピ・ルフティネン組(トヨタGRヤリス・ラリー2) TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムの2期生である小暮ひかると山本雄紀、3期生の後藤正太郎と松下拓未、そしてコドライバーの前川富哉が、3月8日にフィンランド南東部で開催されたフィンランド・ラリー選手権第3戦『SMサヴォリンナ・ラリーに』出場した。
2025年のウインターシーズンを締めくくるスノーラリーに出場した5名のうち山本がSM1クラス3位を獲得し、小暮は5位でフィニッシュ。SM2クラスでは松下が3位、後藤が10位で完走。前川はドライバーのヤルッコ・ニカラとともにSM3クラスで初優勝を飾った。
■2位ラトバラとの差はわずか1.4秒
フィンランド南東部のサヴォリンナを拠点とするこのラリーは、今季2025からフィンランド・ラリー選手権のカレンダーに第3戦として加えられた一戦。そのため、TGR WRCチャレンジプログラムの全選手にとって、未知なるステージでの戦いとなった。
摂氏0度以上というこの時期のフィンランドとしては比較的高い気温により、路面の雪や氷は一部が溶けてシャーベット状に。また、雪の下のグラベル(未舗装路)が露出している区間もあるなど、グリップレベルが頻繁に変化する非常に難しいコンディションのなかで競技が行われた。予定されていたステージは全7本だったが、コンディションの悪化により、唯一2回走行する予定だったSS6はキャンセルとなっている。
育成プログラムの2期生である山本と小暮にとって、フィンランド選手権のラリーへの出場は約1年ぶり。彼らは最初のステージを手堅く走り終えると、ライバルたちが滑りやすいコンディションでコースオフするなど、タイムを失うなかで徐々にペースを上げていった。
山本はSS4で3番手タイムを記録し総合3番手に浮上すると、続くSS5ではフィンランド選手権で4度のチャンピオンに輝いているテーム・アスンマーに1.1秒差まで迫る。迎えた最終ステージでは、アスンマーよりも6.3秒速い2番手タイムを記録し、ポジションの逆転に成功した山本は、序盤の遅れから挽回したヤリ-マティ・ラトバラ(TGR-WRT代表)に次ぐ総合3位を獲得した。また、コドライバーのトピ・ルフティネンとともに出場した小暮は総合5位でラリーを走り切っている。
3期生ドライバーである松下と後藤にとっては2025年初めてのウインターラリーにして、ルノー・クリオ・ラリー3で臨む4回目のスノーイベントとなった。松下は最初のステージを終えた時点でSM2クラス6番手につけると、その後さらにスピードを増し、SS4ではクラス最速タイムを記録。首位と5.4秒差の4番手に順位を上げ、続くSS5で3番手に浮上し、そのままポディウムフィニッシュを果たした。
一方の後藤はは順調な走りでクラス5番手につけていたが、最終ステージで雪壁に突っ込んでしまった。脱出に25分以上を要したもののクラス10位で完走を果たすことに成功した。
コドライバーである前川にとって、今回はWRCチャレンジプログラム参加後2回目のラリー参戦となった。フィンランド人ベテランドライバーのニカラと前川はルノー・クリオ・ラリー4に乗り込み、午前中にトップを争う力強い走りを披露。その後、最終ステージでライバルがコースアウトしたことにより逆転勝利を収めている。
インストラクターを務めるミッコ・ヒルボネンは、育成選手たちのラリーを次のように振り返った。
「非常に難しいコンディションでのラリーだったが、我々のドライバーたちは全体的に良い仕事をしてくれたし、素晴らしい結果も残すことができた」
「柔らかいシャーベット状の路面、グラベルが露出した路面、凍結した路面など、グリップを判断し自信を持ってプッシュすることが難しいコンディションだった。そのような状況で山本が経験豊富なドライバーたちを相手に総合3位でフィニッシュしたことは素晴らしいし、今回の結果は彼の自信にもつながるだろう」
「小暮もまた何度か速い区間タイムを記録し、グリップを予測しにくく、難しい状況下でもクリーンなドライビングを続けていた。松下も非常に良い走りでトップに肉薄し、後藤を含む多くのドライバーがコースオフした非常にトリッキーな最終ステージもクリーンに走り切った」
「全体的には、彼らにとって非常にポジティブな最初のウインターシーズンとなり、さまざまなコンディションで多くの経験を積むことができた。さらに前川もヤルッコとともに初勝利を飾り、コドライバーとして素晴らしいスタートを切ったね」
また、今シーズン最後のウインターラリーを終えたドライバーたちも次のように今回のラリーについてコメントを残した。
●山本雄紀(総合3位/GRヤリス・ラリー2)
「表彰台に立つことができて本当に嬉しいですし、自分にとっては特別なリザルトです。序盤はトリッキーなコンディションに驚いて慎重になりすぎましたが、その後はドライビングと考え方を調整することができました」
「ヤリ-マティ(・ラトバラ)とユホ(・ハンニネン)とのバトルは本当に楽しかったですし、彼らはステージの合間にもいろいろアドバイスをくれました。今回はヤリ-マティの方が速かったですが、彼から学び今後のレベルアップに繋げたいと思います」
●小暮ひかる(総合5位/GRヤリス・ラリー2)
「コンディションに苦しみました。グリップレベルは数メートルごとに変化していたため予想が難しく、自信を持って走ることができなかったので、少しペースを落として慎重に走り、フィニッシュすることができました」
「このようなコンディションで学ぶことができたのは良かったですし、スピードには満足していませんが、走行距離を稼ぐこともできました。今後のために今回の経験を分析し、次のラリーではより良い結果を出せるようにしたいと思います」
●松下拓未(SM2クラス3位/ルノー・クリオ・ラリー3)
「厳しいラリーを走り切り、表彰台に立つことができて本当に嬉しいです。ラリー本番のコンディションは予想以上に酷い状態でした。グリップを感じることができるコーナーもありましたが、次のコーナーではまったくグリップがなかったりするなど、本当に難しかったです」
「ウインターラリーの初戦で優勝し、その後は苦戦が続きましたが、このようなリザルトで冬を終えることができて嬉しいですし、あらゆるコンディションを経験できたことは、学習プロセスにおいて非常に有益でした」
●後藤正太郎(SM2クラス10位/ルノー・クリオ・ラリー3)
「同じステージでもグリップの良い場所と悪い場所があり、その判断が難しかったため、速く走れるはずのコーナーでも自信を持って攻めることができませんでした。最後のステージではペースノートの指示を少し聞き間違えて、コーナーに正しくないスピードで進入してしまい、柔らかい雪壁に突っ込みスタックしてしまいました」
「初めてのスノーラリーだったここ数戦は、良いステージもあれば、そうでないステージもあったので、自分のドライビングを改善するために、どの部分に集中するべきか理解することができたと思います」
●前川富哉(SM3クラス優勝/ルノー・クリオ・ラリー4)
「ヤルッコと私自身にとって、この勝利はとても嬉しいものです。コンディションが非常に厳しかったので、コース上に留まるのは容易ではありませんでしたが、ヤルッコの非常にクレバーなドライビングのおかげで、このような素晴らしい結果を残すことができました」
「もちろん、改善すべき点はまだたくさんあるので、これからもコドライビングの向上に集中して取り組まなければなりません」
ウインターラリーを終えた小暮、山本、後藤、松下の4人にとっての次戦は、4月24〜27日に行われるWRC世界ラリー選手権初開催の『ラリー・イスラ・カナリアス』だ。スペインのリゾートアイランド、グラン・カナリアで開催されるこのラリーはターマック(舗装路)イベントであり、ザラザラとした舗装路面が特徴となる。小暮と山本は引き続きラリー2マシンのGRヤリス・ラリー2で、後藤と松下はラリー3マシンでの出場となる。前川も経験を積むために、このラリーのレッキに参加する予定だ。
[オートスポーツweb 2025年03月11日]