札幌遺体切断「計画認識していたといえない」 父に執行猶予付き判決

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2025年03月12日 20:34  毎日新聞

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裁判長を真っすぐに見つめて判決を聞く田村修被告=イラストと構成・後藤佳怜

 札幌市の繁華街・ススキノのホテルで2023年7月、会社員男性(当時62歳)を殺害し頭部を切断したなどとして田村瑠奈被告(31)ら親子3人が殺人などの罪に問われた事件で、殺人ほう助罪などで起訴された父、修被告(61)の裁判員裁判が12日、札幌地裁で開かれ、渡辺史朗裁判長は懲役1年4月、執行猶予4年(求刑・懲役10年)の判決を言い渡した。


 修被告は、瑠奈被告に凶器などを買い与えて現場に送迎し、自宅に隠した頭部を損壊することを手助けしたなどとして殺人、死体遺棄、死体領得、死体損壊の各ほう助罪で起訴された。弁護側は無罪を主張し、修被告が瑠奈被告の殺害計画を事前に知っていたかが争点となっていた。


 渡辺裁判長は判決で「瑠奈被告が殺人に及ぶことを修被告が事前に認識していたとまではいえない」と指摘。殺人、死体領得のほう助罪の成立は認めなかった。


 直接的な証拠がない中、ナイフの購入記録などから瑠奈被告が事前に殺害計画を修被告に伝えていたとした検察側の主張は、「瑠奈被告が目的を明かさず犯行用具の購入や送迎をさせた可能性を否定できない」と退けた。


 一方、死体遺棄と死体損壊のほう助罪は成立すると判断。渡辺裁判長は「頭部を隠匿する場所として自宅浴室を提供したのは重要な行為で、損壊行為をビデオ撮影したことで瑠奈被告の犯意を増強させた」と述べた。


 判決には執行猶予が付けられた。渡辺裁判長は「修被告は本件に関するやりとりを大量に削除する証拠隠滅をした上、自己に都合のいい供述をしている点も少なくなく、反省しているとは言い難い」と批判しつつ、「積極的な行為には出ておらず再犯の恐れもない」と量刑理由を述べた。


 修被告は、約1時間にわたった判決文の読み上げ中、硬い表情で渡辺裁判長をじっと見つめていた。


 裁判員6人中3人が参加した判決後の記者会見で、40代女性は「直接的な証拠がない中で考えるのは難しかった。懲役1年4カ月という私たちの判断をしっかり受け止めてほしい」と述べた。


 修被告の弁護人は判決後の記者会見で「殺人・死体領得ほう助が実質的に無罪となったのは適切な判決だが、全面無罪とならなかったのは残念」と話し、控訴するかどうかを検討している。


 札幌地検の森田昌稔次席検事は「主張が受け入れられなかったことは残念。判決文の内容を精査し、上級庁と協議の上、適切に対応したい」とのコメントを出した。


 親子3人の公判で最初の判決で、母・浩子被告(62)の公判は17日に結審する見込み。瑠奈被告の公判のめどはたっていない。【後藤佳怜、伊藤遥】



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