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2024年7月に千葉県長生村の自宅で、重度の知的障害がある次男(当時44歳)の首をコードで締め付けて殺したとして殺人罪に問われた平之内俊夫被告(78)に対し、千葉地裁は12日、懲役3年、執行猶予5年(求刑・懲役5年)の判決を言い渡した。浅香竜太裁判長は「殺害という選択は非難されるべきだ」とする一方、「長年愛情を注いで(次男を)献身的に支え、その苦労は言葉にはできない。十分な福祉的支援を受けられず、被告だけを責めるのは酷だ」と判決理由を述べた。息子をあやめた平之内被告だが、公判では後悔の念を口にした。一方で、「(事件当時)自分か妻が倒れたら、面倒を見る人がいないと思った」とも話していた。公判を通じて明らかになった事実とは――。【林帆南】
平之内被告には重度の知的障害を持つ子どもが2人いた。うち次男・清泰さんは自力で歩けるが、話すことは難しく、排せつや食事に介助が必要だった。清泰さんは当時住んでいた神奈川県の養護学校(現特別支援学校)に小学部から通った。両親である夫妻は息子たちを各地に旅行に連れていくなど可愛がった。
しかし、高等部の頃から、清泰さんはコンビニエンスストアで商品の新聞を破るなどするようになった。この頃は平之内被告が勤めていたため、食事や排せつなどの介助は主に妻がしていたという。
04年7月から清泰さんは同県内の施設に長期入所したが、食事量が減って体重も減少。妻が心配し、翌年退所した。その後は短期入所できる施設を利用したが、家や施設で着ていた服などをトイレに詰め込んだり壁に頭を打ち付けたり、裸で外出することもあった。
20年の新型コロナ禍で、短期入所することは大幅に減り、両親の負担は大きくなった。しかし、自宅を抜け出して薬局でトラブルを起こしたり施設から長期入所を断られたりしたことから、「周囲に迷惑はかけたくない」と24年5月、同県内から長生村の一軒家に転居。「障害を持つ息子は家族で面倒を見るべきだ」と考えていた平之内被告は、妻と自宅での介護を続けた。
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同7月、事件が起きた。清泰さんが障子を剥がしたりテレビを投げたりし、裸で自宅を抜け出そうとした。平之内被告が押さえ付けたが「今後も暴れることが続く」と殺害を決意。妻は2階におり、1階での事件に気付かなかった。
「明日から寝られる、という安心感と、殺した罪悪感で頭の中がぐちゃぐちゃになった。全てが終わるという言葉に表せない感情があった」
次男の将来も心配だったが、妻のことが「大事だった」という。「妻ならほんの少しは(殺害してしまった)気持ちを分かってくれる」と思ったが、事件を知った妻は「おきよ(清泰さん)がいたから頑張れたんだから」と泣き叫び、平之内被告はショックを受けた。
公判で証人として出廷した妻は被告の犯行に「決して許されない行為」と語る一方「もし刑務所に入るなら一緒に入って罪を償いたい」と語った。
一方、弁護人に「間違ったことをしたか」と聞かれた平之内被告は、過ちを認め「人の命が大切ですから」と答えた。
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