マイナンバーカードに、健康保険証の利用登録をした“マイナ保険証”。
「顔認証でエラーが出る」など、さまざまな不具合が相次いでいる。
しかし政府は、昨年12月2日をもって、今まで使用していた、いわゆる“紙の保険証”の新規発行を終了。これを受け、今年1月のマイナ保険証の利用登録者数は、前月比で約87万件増加して、約8,153万件に。
ところが一方で、マイナンバーカードから保険証の機能を外す“解除申請”も急増している。
厚生労働省の発表によれば、今年の1月分だけで13,212件もの解除申請があり、累計で約58,000件にも達しているのだ。
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「解除するには、申請用紙に必要事項を記入して提出しなければなりません。手間がかかるにもかかわらず、これだけ多数の解除が出ているのです」(全国紙記者)
■紛失が怖いのでマイナ保険証は持ち歩きたくない
解除した人の声を聞くと……。
「2年ほど前に、政府がマイナ保険証の利用登録をしたら20,000円分のマイナポイントを付与するというキャンペーンをしていましたよね。
あのときに思わず登録したんです。でも、使わずに引き出しにしまったままでした。
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現行の保険証が廃止されたら、マイナ保険証を財布に入れて持ち歩くことになるわけですが、紛失のリスクを考えると、持ち歩きたくない。
登録解除すれば、資格確認書が送られてくると聞いて解除したんです」(60代女性・兵庫県在住)
「母が入所している介護施設では、『マイナ保険証は預かれない』と言われ、それなら資格確認書が必要だと思って解除しました」(50代・千葉県在住)
“資格確認書”とは、マイナ保険証の利用登録をしていない人に対し、加入している保険組合から送付されるものだ。
現行の保険証は、有効期限が切れるまでは窓口で使用できるが(最長で2025年12月1日)、それ以降は、マイナ保険証か、資格確認書が必要になる。
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ただし、前出の60代女性が言うように、原則として資格確認書は、マイナ保険証の利用登録をしていない人にしか送付されないため、利用登録したものの「資格確認書がほしい」という人が、一定数、登録を解除しているとみられる。
保険組合に問い合わせてみると、次のような解除理由も浮かび上がってきた。
「マイナ保険証を持っていても、高齢者や障害者、施設入居者などマイナ保険証での受診が難しい方は、お住まいの市区町村で申請すれば交付されます。それを知らない方も多いので、解除が増えているのでは」(都内の保険証を取り扱う自治体担当者)
「『(紛失が怖いので)マイナ保険証を持ち歩きたくない』とか、『システムが信用できない』などと話す方が多い印象です」(全国健康保険協会・広報企画室担当者)
マイナ保険証(またはマイナンバーカード)と暗証番号があれば、口座を開設したり、ローンを組んだりすることもできるため、「持ち歩きたくない」という方も少なくない。
それだけ大切な個人情報に結びついたカードにもかかわらず、「窓口での操作も煩雑で、なおかつトラブルも頻発している」となれば、「解除が増えても仕方ないのでは」と警鐘を鳴らすのは、マイナ保険証のトラブル調査を続けている全国保険医団体連合会(以下、保団連)事務局の上所聡子さんだ。
「当団体が昨年10月に公表した調査では、回答した約7割の医療機関が、マイナ保険証に関するトラブルがあった、と答えています。
多いものでは、〈資格情報が無効と表示された〉〈該当の被保険者番号がない〉〈名前や住所の登録ミス〉〈負担割合が違う〉などに加え、そもそも〈カードリーダーの不具合で顔認証ができない〉〈通信回線の不具合でオンライン資格確認ができない〉など機器の不具合によるトラブルも頻発しています」
とくに、認知症や障害がある人にとっては、利用が困難だ。
「認知症や障害のある方からは、カードリーダーで顔認証したり、暗証番号を入力することも難しいとの声も上がっています。
厚生労働省は、そうした方々への対応策として、医療機関の職員が、目でマイナ保険証を確認する“目視確認モード”という設定や、暗証番号が不要なマイナンバーカードを導入するなど対応をとっていますが、『それなら資格確認書で十分』ということになり、多くの人がマイナ保険証を持ちたがらないのでしょう」(前出・上所さん)
紛失することの「怯え」と現場での「困惑」がマイナ保険証の解除申請を促しているのだ。
■今年7月にはさらなる混乱が待ち構えている
こうした状況のなか、保険組合や医療機関がとくに危惧しているのが、後期高齢者の“紙の保険証(後期高齢者医療保険証)”の有効期限が一斉に切れる今年7月末だ。
「過去にマイナ保険証の登録はしたものの、『ずっと紙の保険証を使っていた』という方の場合、マイナ保険証に登録したことを忘れている可能性もあります。
資格確認書が届くと思っていたのに送られてこない、ということになりかねません。
今年7月から8月にかけては、そういう方が続出するのでは、と危惧しています」(前出・上所さん)
マイナ保険証に登録している場合、加入している保険組合によっては、「資格情報のお知らせ」という紙が送られるが、これは保険証としては使用できない。不安な方は、現行の保険証の有効期限が切れる前に、加入している保険組合に確認しておこう。
一方で、登録解除が増加している現状を、厚生労働省はどう見ているのか。本誌記者が問い合わせると、木で鼻をくくったような答えが……。
「カードリーダーが使えない場合は、マイナポータルにログインしていただけたら資格情報が確認できます。
また、高齢者や障害者の方でマイナ保険証の利用が困難な場合は、お住まいの自治体に申請していただければ資格確認書の交付が受けられます」
マイナ保険証が国民の信頼を得るには、まだまだ時間がかかりそうだ。
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