セブリングのパドックに姿を見せたメイヤー・シャンク・レーシングのアキュラARX-06 3月13〜15日、アメリカのフロリダ州に位置するセブリング・インターナショナル・レースウェイでは、『第73回モービル1セブリング12時間レース』が行われる。デイトナ24時間に続く、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の2025シーズン第2戦として開催される伝統の一戦では、最高峰GTPクラスに初のル・マン・ハイパーカー規定マシン『アストンマーティン・ヴァルキリー』がデビューを果たすほか、日本の太田格之進がEraモータースポーツの18号車オレカ07・ギブソンでLMP2クラスに参戦するなど、話題の多い一戦となる。
12時間の決勝レースは土曜日に開催、走行初日は木曜日となる。走行前日、水曜のセブリングのパドックから、各種トピックスをお届けする。
■レース前に『表彰式』?
今週末のセブリング12時間レースには、合計56台の車両がエントリーしている。ナイトプラクティスを含む3回のセッションが予定されている木曜日の走行開始に先立ち、チームは水曜日にマシンをアンロードして設営を行った。
その水曜日の午後、IMSAは1月のデイトナ24時間レースのLMP2表彰式を改めて行い、クラス優勝したポール・ディ・レスタ、ダニエル・ゴールドバーグ、ラスムス・リンド、ジェームス ・アレン(ユナイテッド・オートスポーツ)にロレックスの時計が正式に引き渡された。
これは、レース終了から3日後に発表されたタワー・モータースポーツのテクニカル違反によって順位が繰り上がったためだ。チームは今週末はレースに出場しないアレンを飛行機で呼び寄せ、表彰式に参加させたものと理解されている。
■アキュラARX-06含む多くのマシンがリバリー変更
グレッグ・ピケットとトミー・リギンズが1987年のセブリングでクラス優勝を飾った際のマシン、モービル1がスポンサーについていたコルベットGTOのデザインをベースとしたプラット・ミラー・モータースポーツのシボレー・コルベットZ06 GT3.Rの2台、GTDプロのバッサー・サリバン14号車レクサスRC F GT3、アクション・エクスプレス・レーシング31号車キャデラックVシリーズ.Rなど、いくつかのクルマに特別リバリーが施されている。これらはすべて、レースのタイトルスポンサーであるモービル1に関連するものだ。
BMW Mチーム RLLの25号車BMW MハイブリッドV8は、1975年3月15日に発売されたBMWノースアメリカの50周年を祝うためにデザインが改訂され、PR1/マティアセン・モータースポーツの52号車オレカ07ギブソンは、ベン・キーティングのシグネチャーモデルを走らせた後、フルシーズンデザインとして、新しいアクアカラーをまとっている。
また、メイヤー・シャンク・レーシングのアキュラARX-06もデイトナからカラーリングをアップデートしている。
恐竜カラーの『レキシー』でお馴染みのAOレーシングの77号車ポルシェ911 GT3 Rは、デイトナ24時間レース終盤の事故により恐竜の歯を描いたフロントボディが剥がれたことを受け、歯列矯正器具をつけたカラーリングが施されている。
チームがこのセブリング向けカラーリングを公開したことは、最終的にSNS上で騒動を引き起こしたが、これは『レキシー』のデザインに対する著作権侵害の申し立てに基づくものであると、チームは後にファンやサポーターに対して明らかにした。
■大クラッシュの40号車キャデラックは修復完了
ジョーダン・テイラーによると、デイトナでのルイ・デレトラズのクラッシュ以来、ウェイン・テイラー・レーシングの40号車キャデラックはシャシー交換されずに、修復がなされたとのこと。
テイラーは先月、デレトラズと10号車のフルシーズン・コ・ドライバーのリッキー・テイラーとフィリペ・アルバカーキとともにセブリングでテストを行った。このテストは、デイトナでも使用された元チップ・ガナッシ・レーシングのキャデラックシャシーである10号車1台で行われたものだ。
キャデラックの広報担当者は、40号車のモノコックがフルスキャンのためにインディアナポリスのダラーラに輸送され、レース後に表面的な修理が行われたことを確認した。一方WTRは今週末、10号車用にダラーラのシャシーナンバー『023』を初投入する。
■超絶アスリート兄弟
テイラー兄弟の弟である33歳のジョーダンは、今週初め、ニューヨーク州ワトキンス・グレンにある国際モーターレーシング研究センターの2025年度会員委員長に指名され、ブライアン・レッドマン、エリオ・カストロネベス、マリオ・アンドレッティ、リン・セント・ジェームス、フィル・ヒル、ダン・ガーニー、サー・スターリング・モスら歴代の会員委員長に加わった。
そのジョーダンは先月、3日間で6.2マイル(約9.97km)の水泳、223.4マイル(約360km)の自転車、52.4マイル(約84.3km)のダブルマラソンを競う『ウルトラマン・フロリダ』にも出場したばかりだ。
「(兄の)リッキーが昨年アイアンマンに出場したとき、またクレイジーなことをしたいと思い、その場で申し込んだんだ」と彼は語った。
■最後のシート争いはミューラーvsウェーレイン?
マシュー・ジャミネやローレンス・ファントールを含むポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのドライバー数名は、来月のWEC世界耐久選手権に向けたイモラでの事前テストを終えた後に、直接フロリダに到着する。
ポルシェ・ペンスキーのマネージングディレクター、ジョナサン・ディウグイドは、ル・マン24時間レースに出場する同チームの3台目のファクトリーポルシェ963の3人目のドライバーは「今後数週間」内に公式に発表される予定であると示唆した。
チームとドイツのメーカーは最近、フルタイムのウェザーテック選手権ドライバーであるフェリペ・ナッセとニック・タンディとともに4号車を操縦するドライバーの候補を絞り込んでいるとしていた。
今週末、JDCミラー・モータースポーツの85号車でポルシェ963デビューを果たすニコ・ミューラーは、同じくポルシェ・フォーミュラEのドライバーであるパスカル・ウェーレインとともに、ル・マンでの最後のシートを争うことになるものと思われている。
またディウグイドは、今年のデイトナ24時間レースで3台目のクルマを走らせることについて話し合いがあったが、実現しなかったと明かした。
「機会があれば検討する」とディウグイド。
「もちろん、プログラムの他の部分を犠牲にするつもりはないし、ル・マンは依然として大きな焦点だ。だから、表彰台のトップに立つことができるまでは、それがPPMプログラムの主な焦点になる。もちろん、RSスパイダーのプログラムでは、チャンピオンシップで有利になったときにそれを実行したし、常に検討対象にはなっている」
■“ご褒美ドライブ”だったふたりのテスト
ポルシェのファクトリーLMDhディレクターのウルス・クラトルは、先月のIMSA公式セブリングテストでジョセフ・ニューガーデンとスコット・マクラフランがペンスキーのポルシェで周回走行した目的を明らかにした。
「チーム・ペンスキーには多くのドライバーがいる」と彼は語った。
「時々、何人かをクルマに乗せる。フェリペは(ペンスキーの)インディカーにいた。これはドライバーのために定期的にやろうとしていることで、大きな計画はない。(ル・マン出場は)議論されていない。ドライバーに対するご褒美として与えようとしているだけだ」
クラトルはまた、今週末の第3ドライバーを務めるケビン・エストーレとファントールが、IMSAのシーズン最終戦プチ・ル・マンで再びマシンに乗る計画は変わらないと再確認した。
「プチ・ル・マンが計画されているが、我々はオープンにしておくようにしている。我々には8人の(コア)ドライバーがいて、ふたりの耐久ドライバーは他のシリーズの耐久ドライバー、つまりWECでやっているようにふたりの追加ドライバーになるはずだ。何かが起こらない限り、いずれにせよ、これらが選手はプチ(・ル・マン)でもこのクルマに乗るだろうというのは、理にかなっている」
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IMSAは今週、2026年のウェザーテック選手権とミシュラン・パイロット・チャレンジのスケジュールを発表する予定。同団体は昨年の今ごろ、主要モータースポーツシリーズとしては2025年のカレンダーを最初に発表したが、今回もその“記録”を保持することになりそうだ。
[オートスポーツweb 2025年03月13日]