「2026年にシリーズ再開に向けた取り組みを本格化させるためのフェイズに移行する」と発表した新生STCC スウェーデンのモータースポーツ連盟(Svensk Bilsport)は、昨年12月に運営団体の『SNBイベンツAB』がチャンピオンシップのプロモーターとしての活動を停止すると発表して以降、その解決策を調整する役割を担ってきたが、改めて2025年のSTCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権のシーズンは開催せず、代わって「2026年に新生STCCのシリーズ再開に向けた取り組みを本格化させるためのフェイズに移行する」と発表した。
■「正しい道」だと信じる参戦チーム
初年度タイトルを獲得したブリンク・モータースポーツが走らせるテスラ・モデル3を筆頭に、TCR時代から参画するエクシオン・レーシングのBMW i4とフォルクスワーゲンID.3、そしてシリーズの盟主たる強豪PWRレーシングのクプラ・ボーンなどが参戦。紆余曲折を経てフルBEVの選手権へと変貌を遂げていた新生STCCだが、昨年末より2025年に向けた新しいプロモーターを模索する必要に迫られていた。
すでに2025年シーズンのカレンダーも発表され、ヨーテボリ市街地特設トラックでの新規開催日程を含む5月から9月にかけての全5戦が予定されていたが、改めてスウェーデン・モータースポーツ連盟の事務局長を務めるアンナ・ノルドクヴィストは「2025年のSTCCシーズンの開催要件を精査したが、2025年に公式なスウェーデンの国内タイトルにふさわしいシーズンを実現するには、その準備期間が不足していることがわかった」と、危惧された事態が現実になったことを明かした。
「そのため、代わりに2026年にチャンピオンシップをより強力に復活させることを目指している。(運営を引き継いだ)スウェーデンの国内ラリー選手権で行ったのと同様に、今後の戦略と計画を立てる必要がある」
前述の参戦各モデルは、ヨコハマタイヤが供給する量産ロードカー用タイヤを装着し、最高出力550PS、0-100km/hが3秒以下、最高速300km/hをマークする後輪駆動EVとなっており、最大800Vの高電圧を利用する45kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、同バッテリーやモーターを筆頭にサスペンションなどもすべてワンメイク化されている。
そのフルBEVを走らせた参戦各チームは、こうした新規プロモーター模索の前段階から来季STCCでの活動を確約しており、新しいチャンピオンシップが計画どおりに進められるよう、解決策を見つける話し合いを続けてきていた。
「チームとしてSTCCが2026年に延期されることは残念だが、経済と世界の現状を念頭に置き、この決定と着地点は充分理解している」と語るのは、昨季は都合6台のクルマを走らせたエクシオン・レーシングのチームマネージャーを務めるケビン・エングマン。
「同時にチーム、プロモーター、開発者、トラック、スウェーデン・モータースポーツ連盟による過去数年の懸命な努力に刺激も受けている。これは前向きな姿勢を保ち、2026年のSTCC再開を楽しみにする理由があることを意味する」
同じくブリンク・モータースポーツのドライバー兼共同所有者であるトビアス・ブリンクは、「2024年に見たレースは、僕らが長い間見てきたなかで最高のレーシング・シリーズのひとつだった」と新生STCCの展望に期待を寄せる。
「残念ながら、2025年に新しいプロモーターを見つけるには時間が短すぎた。それでも、これが正しい道であると確信しており、2026年のSTCCシーズン再開を楽しみにしている」
本来なら2023年にTCR規定ツーリングカーから、完全オリジナルのBEV車両に転換を果たす予定だったSTCCは、パンデミックによる世界的なサプライチェーンの混乱などさまざまな遅延を経て、ようやく2024年に開始に漕ぎ着けた。
そんななか、ワンメイク電動パワートレインの“Kit”開発と製造を担当したEPWR社を運営するグループCEOのミッケ・ヤンソンは「PWRグループは、こうしてチャンピオンシップを電動化し、スウェーデンのレースのためにより強力なプラットフォームとビジネスモデルを作成するべく、長年にわたり多大なリソースを投資してきた」と、改めてその意義を強調した。
「チャンピオンシップを一時停止することは、持続可能で長期的な未来を確保するための難しい決断ではあるものの、必要な決定でもあった。我々は今後も仕事を続け、イノベーション、エンターテインメント、スポーツの質が主な焦点となる2026年に、さらに力強い復活を果たしたい。そのために持てるリソースを総動員してSTCCの未来に貢献していきたいと考えている」
[オートスポーツweb 2025年03月13日]