【MLB】投手・大谷翔平はどう進化しているのか? 五十嵐亮太が語る新スタイルの全貌

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2025年03月15日 07:20  webスポルティーバ

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五十嵐亮太が語るMLB開幕戦の見どころ(前編)

 MLB開幕戦、ドジャース対カブス戦が3月18日に開幕する。なんといっても注目はドジャースの大谷翔平だろう。昨シーズンは打者に専念し、54本塁打、59盗塁の活躍で自身3度目のMVPを獲得。悲願のワールドシリーズも制した。そして今年は「二刀流」復活もあり、期待はさらに高まる。はたして今シーズン、大谷はどんな活躍を見せてくれるのか。アリゾナキャンプを取材に行った五十嵐亮太氏に話をうかがった。

【手術した左肩は順調に回復】

── さて、いよいよ3月18日のMLB開幕戦・ドジャース対カブス戦が間近に迫ってきました。五十嵐さんは2月末から3月初めにかけてアメリカ・アリゾナにキャンプ取材に行かれました。ドジャースもカブスも取材したとのことですが、まずは大谷翔平選手の現状について教えてください。

五十嵐 昨年オフに左肩の手術をしたので、このキャンプは「リハビリもやりながら調整をする」というところもあって、チームの全体練習メニューに名前が入ってないこともありました。チームとしても、「極力休ませながら」という感じで、基本的に調整に関しては、「ある程度は本人にまかせる」というスタンスでしたね。これは本人の意思なのか、チームの方針なのかはわからないですけれど、今年はシーズンを通してこのスタンスでやっていくのだと思います。

── まずはバッティングについて伺います。実戦初戦となるエンゼルスとのオープン戦初回の初打席、いきなり花巻東高校の先輩である菊池雄星投手から先頭打者ホームランを放つ、幸先のいいスタートを切りました。

五十嵐 バッティングに関しては、「左肩を手術したので、スイングの際の外旋のときに違和感がある」という話をしていました。でも、いきなりホームランも出たし、スイングについても、「しっかり空振りできて大丈夫だった」と言っていたので、心配はないと思いますね。ただ、そうは言っても「まだ違和感はある」ということなので、自分本来の理想的なスイングとの間には若干の誤差が生まれている可能性はあります。それがなくなってくると、さらに本来のバッティングができるようになる。そう思いますね。

── 大谷選手の左肩の故障は盗塁によるものでしたが、走塁についても気づいたことがあるそうですね。

五十嵐 走塁に関して言うと、「左手をつかない」という意識は徹底していました。ワールドシリーズでの盗塁の際に左手をついてケガをしてしまった。だからこそ、そのリスクを減らすという意識。その点はやっぱりプロ意識ですよね。決して「リスクがあるから走らない」とか「滑らない」というわけではない。

 ただ、盗塁に関しては、今年は投手起用の機会も増えるはずだから、「去年よりも数は減るだろう」と言われていますよね。それでも行けるときはしっかりトライする。ケガを防ぐための工夫もする。自分ができる範囲内で何ができるかっていう、このスタンスが大谷選手らしいなっていうのはすごく感じましたね。

【ツーシーム&カットボールを多投する理由】

── 一方、気になる投手としての調整はいかがでしたか?

五十嵐 ブルペンでのピッチングを見ていると、ツーシーム、カットボールが目立ちましたね。投手として試合に出ていた2023年のデータを見ると、これらの変化球は割合としては非常に少ないボールでした。でも、キャンプの段階でこれらのボールを最初に投げた理由はどこにあるのか? ツーシームもカットボールも、いずれも小さい変化球です。つまり、ピッチングフォームをそこまで変えなくても、ストレートと近い投げ方ができるんです。

── スライダーやスイーパーの場合はピッチングフォームも異なってくる?

五十嵐 そうです。たとえばスライダーとかスイーパーとか、スプリットとなるとやっぱりピッチングフォームについて、ストレートとの違いが生まれてきます。でも、カットとかツーシームだとストレートのフォームに近い状態で投げ込んでいくことができる。それは、フォームを固めていく上でも最適なんです。でも、ツーシームやカットボールを多投していたのは、もう一つ考えられる理由があります。

── それはどんな理由でしょうか?

五十嵐 当然、投手としてのブランクがあるわけだから、やっぱり「負担を減らさなきゃいけない」という狙いもあるはず。さらに、以前と同じようなピッチングをしていたら、また同じようにケガをする可能性がある。その負担を減らす場合、どこに重きを置くかというと、まずはピッチングフォームを見直す必要がある。例えば21年、22年と比べたら、23年はスイーパーを多投したことで、明らかに肘が下がってきた。もしも負担を感じているのなら、まずは肘を上げる必要がある。それは本人にしかわからない感覚です。

── そのあたりの感覚を丁寧に確かめながら、ピッチングフォームを固めていく必要があるわけですね。

五十嵐 もうひとつは、変化球を投げる時に負担のかかるボールがあるのならば、それも改善しなければいけない。それがスイーパーなのか、ほかの変化球なのかは本人にしかわからないけど、もしも本人がそれを感じるのなら、今まで投げてきたボールを見直さなければいけない。それもこの時期にしっかりと確かめておくべきことの一つだと思いますね。

【配球スタイルが変わる】

── ケガからの復活を経て、「2025年版大谷翔平」はどのようなスタイルになりそうでしょうか?

五十嵐 考えられるのは「配球バランスが大きく変わるのではないか?」ということです。大谷選手は比較的出力を出して、力で抑えていくピッチャーなんです。基本的にはストレートやスイーパーをメインに三振を狙って取りにいく。ランナーがいて、「ここぞ」という場面では出力を上げて抑えにいく。でも、身体への負担を減らすために、これからは「どれだけ力をセーブできるか?」ということも大事になってくる。つまり、「打たせて取る」とか、「球数を抑える」ということです。

── そうなると当然、配球も変わってきますね。

五十嵐 そこで重要になってくるのがツーシーム、カットボールという変化球です。そうなると、普段はなるべく出力を抑える。でも、ピンチの場面では出力を上げる。そんな切り替えが必要になってくるかもしれない。そこで、直接本人に質問したんです。「今年のピッチングスタイルについてですが、これから新しいピッチングスタイルを模索していくのか、それとも今までのピッチング内容に近づける取り組みをしていくのか?」って。

── 大谷選手はどのように答えたんですか?

五十嵐 僕の質問に対して、「手術前はストレートの球速が93マイル(約154.5キロ)ぐらいだった。でも手術をしたのは、やっぱり強いボールが投げたいから」ということでした。だから、やっぱり大谷選手は今でも「速いボールを投げたい」「自分の持っている最大出力を出したい」という気持ちは強いのだと思いますね。だけど、そのスタイルのままではやっぱりケガにつながる可能性が高くなる。だから、先ほど話した「ツーシーム、カットボールをどう使っていくかっていうのが、今年のポイントになるのかな」と感じました。

── まだ具体的なスケジュールは決定していませんが、ピッチャーとしての復活、復帰のタイミングはいつ頃になりそうな感じでしょうか?

五十嵐 デーブ・ロバーツ監督の話では、「5月をめどにしている」とか、最近では「5月の復帰は難しいかも?」という話もありますが、順調にいけば4月下旬、遅くても5月中なのかなと。いずれにしてもそんなに焦る必要もないので、じっくりと万全の状態でマウンドに戻ってきてほしいと思いますね。

つづく


五十嵐亮太(いがらし・りょうた)/1979年5月28日、北海道生まれ。千葉・敬愛学園から97年ドラフト2位でヤクルトに入団。プロ2年目の99年にリリーフとして頭角を現し、一軍に定着。04年はクローザーとして37セーブを挙げ、最優秀救援投手賞のタイトルを獲得。09年オフにメジャー挑戦を表明し、メッツと契約。12年はブルージェイズ、ヤンキースでプレーし、13年にソフトバンクと契約し日本球界復帰。18年オフに戦力外となるも、ヤクルトと契約。19年は45試合に登板したが、20年10月に現役引退を表明。現在は解説者として活躍している。

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