【プロ野球】ソフトバンク和田毅が引退に際し危惧する昨今のプロ野球界 「100%データに頼るのは少し違うかなと...」

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2025年03月15日 07:50  webスポルティーバ

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和田毅インタビュー(後編)

 昨シーズン限りで現役を引退し、今年からホークスOBとしてプロ野球を見守ることになる和田毅氏に、2025年シーズンのホークスの展望について聞いた。また、昨今の変わりゆくプロ野球についても語ってもらった。

【ホークスの厳しい競争環境】

── 今年からはホークスのOBとしてプロ野球を見ていくことになります。さっそくですが、今年のホークスはどうでしょうか?

和田 攻撃力の部分は昨年と大きく顔ぶれが変わっていないので、ある程度計算が立つと思いますが、投手のところでしょうね。先発では石川柊太投手(FA権を行使してロッテへ)が移籍しました。だけど、それでも今いるメンバーが自分たちの力を発揮できれば、パ・リーグの連覇に向けてダントツの優勝候補であるのは間違いないと思います。とはいえ自分の力をシーズンで発揮するというのが、一番難しいところではありますけどね。

── ホークスのエースは早稲田大学の後輩でもある有原航平投手。その意味では彼は自分の力を発揮して昨季まで2年連続2ケタ勝利。昨季は最多勝にも輝き、今年も開幕投手を務めます。

和田 彼はやるべきことをしっかりやる。ルーティンも確立しているし、無理をしても無茶をしない。本当に自分自身を知り尽くしていると感じます。だから抑え方を知っている。そしてデータの研究などもすごいです。勝つべくして勝っている投手。だから彼を見ていて、ラッキーで勝てていると思ったことなど一度もない。実力どおりのことを1年間やり続けていますね。ホークスにはリバン・モイネロ投手というものすごいピッチャーがもうひとりいますけど、やっぱりエースは有原。小久保監督が開幕投手に指名するのも頷けます。

── 先発枠の競争は今年も激しそうですね。

和田 有原がいてモイネロが続く。次に名前が挙がるのがカーター(スチュワートJr.)。キャンプ中に故障で離脱してしまいましたが、戻ってくれば大きな戦力になるのは間違いありません。そこに大関(友久)投手や大津(亮介)投手という去年頑張ったふたりがいて、実績ある東浜(巨)投手が続きます。若手は左腕も多いですよね。前田純投手、前田悠伍投手、松本晴投手。そして新戦力で上沢直之らも獲得しました。

── チーム内競争は激しいですね。

和田 ホークスは毎年そうです。そのスタイルは昔から変わりません。実績や経験が考慮されるのはスタート時点、いわゆるキャンプの序盤まで。プロ野球なので完全に横一線はありません。はじめは評価の差も多少あります。けれども、実戦が始まれば結果の世界。それを勝ち抜いたピッチャーがチームを代表してマウンドに上がるのです。忖度なども一切ありません。それは野手も同じことが言えますし、ホークスのよき伝統になっていると思います。

── ホークスは他球団からの移籍選手が活躍しています。そのようなチーム環境も理由のひとつでしょうか?

和田 そこはわかりませんが、少なくとも移籍に際してはそれ相応の覚悟を持ってやって来ますし、ホークスの競争の厳しさも承知のうえのはずです。僕自身もFAでアメリカに行った経験があるので、新しい環境に飛び込む時の気持ちはわかります。やはり、もっと成長したい、自分を高めたい。環境を変えることで新しい自分が見つかるかもしれない。

 石川投手や甲斐拓也選手(FA権行使して巨人へ)もたぶん同じような理由と覚悟をもって移籍をしたのだと思います。一方で、そうやって大きな覚悟を持った選手が入ってくるのはチームのプラスになります。元からいた選手にとっては競争がさらに激しくなりますが、それを勝ち抜かないと試合に出られないわけで、自分自身の成長を促すことになります。

【テクノロジーと古きよきものの融合】

── 甲斐選手の名前も出ましたが、キャッチャー争いも注目です。

和田 今いる選手たちは間違いなくチャンス。でも逆に球団にこのままではダメだと判断されれば、別のチームからいい捕手を獲ってくるかもしれません。それがフロントの仕事です。メジャーではそれが当たり前ですし。実際、(甲斐)拓也が正捕手でいた時はキャッチャーの大きな補強は少なかったじゃないですか。それだけ彼が球団フロントや首脳陣の信頼を得ていたわけです。ある意味チャンスとピンチの表裏一体のところにいる感じじゃないですかね。

── これからはネット裏からプロ野球を見ることになります。どんな心境ですか?

和田 新鮮な気持ちです。すべてが初めての経験。成長していくための勉強だと思って頑張ります。

── 22年間もプレーすると、その間に野球自体も大きく変わったのでは?

和田 一番はデータですね。その量が増えましたし、投球にしても打撃にしてもデータを収集しながら練習をするのは、僕の若かった頃はありませんでした。自分が今、どんな状態なのか把握できる点はすごくいいと思います。その反面、データだけに100%頼って鵜呑みにするのは少し違うのかなとも思います。やっぱりその選手がもっている感覚と擦り合わせる必要はあるでしょう。今の野球界、情報量は膨大です。それをどう活用するかが、この先は大事になっていくと思います。

── 和田さんは2011年には鹿屋体育大学を訪れて、周りよりも早く動作解析など科学的アプローチを行ないつつ、引退する最後の最後まで「走る」ことを大切にされていました。

和田 打者ならば160m飛ばすとか、投手は160キロを出すために野球をやるわけじゃない。あくまでも点を取る、ピッチャーならばバッターを抑えるのが目的です。科学を活用すること自体を僕は否定しているのではなく、プロ野球の先輩たちが築き上げてきたものも活用していかないといけない部分はたくさんあると思うんです。

 小久保監督もよく言いますが、古きよきものと古臭いものをしっかり選別すること。ホークスならば王会長が築き上げた大切なものをしっかり残していきながら、そこにデータやテクノロジーを用いた野球を組み合わせて、新しく強いホークスをつくり上げていくのだと思います。

── 最後に、和田さんはなぜ、松坂世代の最後のひとりとなるまで22年間も現役生活を続けられたと思いますか?

和田 今までの出会いですかね。たくさんの方に出会ったことが今の自分を作り上げたと思っています。いい方々に出会えたから22年も続けることができました。感謝しかありません。

── たくさんの感謝を込めて、3月15日に引退試合に臨まれます。どんな心境で迎えると想像しますか? 涙はありますかね?

和田 どうなんでしょう。泣かないと思いますけど、「ついにこの日が来てしまいました!」って、青木(宣親=昨季ヤクルトで引退。早稲田大学の1学年後輩)の真似をしようかな(笑)。でも、応援してくださった皆様への感謝の思いを胸に臨みたいと思います。

おわり


和田毅(わだ・つよし)/1981年2月21日生まれ。浜田高から早稲田大に進み、2002年  にドラフト自由枠で福岡ダイエーホークス(現・ソフトバンクホークス)に入団。1年目から14勝をマークして新人王を獲得。以降、5年連続2ケタ勝利を達成。10年に17勝を挙げ、最多勝を獲得し、7年ぶりのリーグ制覇に貢献。11年オフに海外FA権を行使し、ボルチモア・オリオールズへ移籍するも、開幕直前に左ヒジを手術。14年にシカゴ・カブスに移籍し、メジャー初登板を果たす。15年オフに日本球界復帰を決断し、16年より再びホークスに所属。復帰1年目から最多勝、最高勝率のタイトルを獲得した。24年のシーズン終了後、現役引退を発表した

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