優勝した7号車ポルシェ963のドライバーたち。左からローレンス・ファントール、ニック・タンディ、フェリペ・ナッセ 2025年IMSA第2戦セブリング12時間 アメリカ・フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイで3月15日、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第2戦『第73回モービル1・セブリング12時間レース』の決勝が行われ、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの7号車ポルシェ963(フェリペ・ナッセ/ニック・タンディ/ローレンス・ファントール組)が総合優勝を飾った。
1月末に行われたデイトナ24時間やこのセブリング12時間など計5つの耐久レースから成るIMSAミシュラン・エンデュランス・カップの第2ラウンドは晴天の下、定刻10時10分にスタートが切られた。
直後、太田格之進のチームメイトであるトビアス・ルトケ駆る18号車オレカ07・ギブソンとAFコルセの88号車オレカが5番手を争うバトルの中で接触。双方がフロントカウルに大きなダメージを負い、グラベルに停まった18号車は早くもラップダウンに。このアクシデントにより最初のフルコースコーション(=セーフティカー)が出ている。
前日の予選でポールポジションを獲得したドリス・ファントールは24号車BMW MハイブリッドV8(BMW MチームRLL)でホールショットを奪ったが、スタートの手順に違反があったとしてドライブスルーペナルティを受け、リスタート後にペナルティを消化したため首位からクラス最後尾に落ちた。またGTDクラスでもポールスタートだった21号車フェラーリ296 GT3(AFコルセ)が、名手アレッサンドロ・ピエール・グイディの単独スピンによってクラス2番手から大きく順位を下げている。
BMW離脱後のレースリーダーは7号車ポルシェ963で、2番手にもポルシェ・ペンスキーの6号車が続く。しかし2時間目の序盤に迎えた2度目のリスタートでは、ストレートで加速できずに一瞬で首位から最後尾に落ちたロマン・グロージャンの63号車ランボルギーニSC63を労せずパスした31号車キャデラックVシリーズ.Rがトップに立ち、18号車オレカの2度目のクラッシュなど断続的にコーションが介入するレースの序盤戦をリードしていった。
その後、一転して長いアンダーグリーンの時間帯に入ったレースの大部分をリードした31号車だったが、スタートから6時間を迎える直前に7号車ポルシェ963に首位の座を奪われる。ナッセが乗り込んだチャンピオンカーは、直近のピットストップで作業違反があった93号車アキュラARX-06がドライブスルーペナルティを受けたことで2番手に順位を上げていた。
レースの後半戦が始まると総合トップに立った7号車が、キャデラック・ウェーレンの31号車とポルシェ・ペンスキーの姉妹車6号車ポルシェを引き連れて走行する展開に。そんななか6回目のコーション時の一斉ピット作業で首位が入れ替わる。
また後方では60号車アキュラARX-06と24号車BMWがピットレーンで接触する事故が発生し、両車が痛手を負うこととなった。さらに63号車ランボルギーニは、このコーションの間にピット裏へと運ばれフロアの損傷を理由にリタイアとなった。
タンディが乗り込んだ7号車ポルシェは、チェッカーまで残り2時間となる直前にコース上で31号車キャデラックを攻略し、ふたたびトップに返り咲く。1時間後には姉妹車6号車もフレデリック・ベスティの31号車をかわし、ポルシェ・ペンスキーがワン・ツー体制を築いた。
最後の1時間。GTカーのタイヤがバーストし、ラバーがコース上に残ったためコーションが導入される。これで各クラスのトップ車両とリードラップに残る車両のギャップはリセットされることに。GTPクラスでは上位6台に優勝のチャンスが訪れることとなったが、残り32分でのリスタート後も7号車ポルシェのスピードは衰えることなく、最後は僚友6号車を引き離してフィニッシュ。デイトナ24時間に続く開幕2連勝を飾った。
この結果、タンディはル・マン、デイトナ、スパ・フランコルシャン、ニュルブルクリンクの各24時間レースとプチ・ル・マン(ロード・アトランタ10時間)での成功にセブリング12時間の総合優勝を加え、前人未到の“耐久ビッグ6”完全制覇を成し遂げている。
ワン・ツー・フィニッシュを飾ったポルシェから2.7秒遅れの3位に入った93号車アキュラARX-06が最後の表彰台を獲得した。多くのリーダーラップを記録した31号車キャデラックは最後のピットストップ直後に5番手となったが、そこからひとつ順位を上げて4位に。5位は25号車BMW、6位に5号車ポルシェ(プロトン・コンペティション)が入り、ここまでがトップと同一周回となった。このセブリング・ラウンドがIMSAデビュー戦となった23号車アストンマーティン・ヴァルキリー(アストンマーティンTHORチーム)は2周遅れの9位で初陣を終えている。
■最終盤のセーフティカーがドラマを生む
6時間目以降、04号車オレカ07・ギブソン(クラウドストライク・レーシング・バイ・APR)が支配的なレース運びを見せていたLMP2クラスでは最後にドラマが待っていた。
プジョーのワークスドライバーであるマルテ・ヤコブセンが乗り込んだ04号車は、最後のリスタート後もライバルの追撃を退けていた。しかしタイミングが合わなかったか、最終コーナーで13号車シボレー・コルベットZ06 GT3.Rを後ろからプッシュしてしまう。これによりシボレーはスピン。一瞬スピードが鈍った04号車はターン1までに2台のマシンに抜かれ、さらに即時ドライブスルーペナルティを受け万事休す。チェッカーまで残り12分までトップを守りながら最終的にクラス6位に終わった。
一方、優勝はインターユーロポル・コンペティション43号車の手にわたった。トム・ディルマンが最終スティントを担当したこのクルマは、最終盤のデッドヒートを経て、セバスチャン・ブルデー駆る8号車オレカ(タワー・モータースポーツ)を1.111秒差で下し今季初優勝を飾った。クラス3位にはポールからスタートし序盤戦をリードしていた11号車オレカ(TDSレーシング)が入っている。
なお序盤に2回のクラッシュがあったEraモータースポーツの18号車は太田が乗り込むことなく、わずか37周でリタイアとなった。
激戦区のGTDプロクラスは、序盤から目まぐるしく順位が変わっていくなかでつねに上位のポジションにつけ、終盤にトップに踊り出たAOレーシングの“レキシー”77号車ポルシェ911 GT3 Rが逃げ切りに成功。最後は現王者ラウリン・ハインリッヒが48号車BMW M4 GT3エボ(ポール・ミラー・レーシング)を4.3秒突き放した。
3位にはポール・ミラーの1号車が入りBMWはツー・スリー・フィニッシュに。金曜の予選でGTDプロクラス初ポールを記録していたドラゴンスピードの81号車フェラーリ296 GT3はクラス4位でのフィニッシュとなった。5位は64号車フォード・マスタングGT3(フォード・マルチマチック・モータースポーツ)、デイトナ24時間を制した姉妹車65号車がこれに続いた。
同じくFIA GT3カーで争われるプロ・アマクラスのGTDは、21号車フェラーリが序盤の遅れを取り戻し首位に返り咲くタイミングもあったが、レース終盤に優勢に立ったのは12号車レクサスRC F GT3(バッサー・サリバン・レーシング)だった。しかし、最後のフルコースコーションを経て他クラス同様にスプリントレースとなったこのカテゴリーでは57号車メルセデスAMG GT3エボ(ウインワード・レーシング)が、ラスト15分を切ったタイミングでの優勝争いを制して逆転勝利を掴んだ。
フィリップ・エリス駆る57号車は再三にわたって12号車レクサスに仕掛けた後、スローダウンしたマシンに詰まったライバルに並びかけると、軽く接触しながら一気に前に出てリードを奪うことに成功。その後は後続を3秒以上引き離してみせた。敗れたレクサスは2位。クラス3位には27号車アストンマーティン・バンテージAMR GT3エボ(ハート・オブ・レーシング・チーム)が入っている。
開幕2戦の長距離レースを終えたIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の次戦は『アキュラ・グランプリ・オブ・ロングビーチ』だ。一転して100分のスプリントレースとなる第3戦は、西海岸のカリフォルニア州ロングビーチ・ストリート・サーキットで4月11〜12日に開催される。
[オートスポーツweb 2025年03月16日]