【重版】仏像本、ビジュアルも図解も充実ーーわかりやすい決定版の話題書『超図解 仏像大事典』

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2025年03月16日 14:50  リアルサウンド

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『超図解 仏像大事典』(村松哲文/監修、長谷法寿/仏画、地人館/編者、朝日新聞出版/刊)
■寺院めぐりが楽しくなる仏像本

  かつてほどの勢いは収まったかもしれないが、依然として京都や奈良の寺院を参拝する人は多い。御朱印ブームも続いており、休日ともなれば納経所に長蛇の列ができていることもある。そんな御朱印は寺院によって様々であるが、その寺院の本尊にあたる仏さまの名前が中央に記されることが多い。例えば、「阿弥陀如来」「十一面観音」「薬師如来」といった塩梅である。


  御朱印はともすればコレクションに走りがちであるが、その仏さま、すなわち本尊である仏像の意味がわかればさらに寺院めぐりが楽しくなる。そんな人に必携の一冊が『超図解 仏像大事典』(村松哲文/監修、長谷法寿/仏画、地人館/編者、朝日新聞出版/刊)である。仏像の歴史や観賞のいろは、そして見所をビジュアル的に解説した仏像解説本の決定版と言うにふさわしい本だ。


  仏像には様々な種類があるが、もっともポピュラーな「阿弥陀如来」を例に見てみよう。仏像は大きく、如来像、菩薩像、明王像、天部像の4つに分類できる。そのうち如来とは、真理、すなわち悟りに到達した存在であり、仏像では悟りを開いたブッダの姿で表現される。その特徴はシンプルな袈裟のみを身にまとうことが多く、宝冠や首飾りといったゴージャスな装飾品を身に付けることはない。


  阿弥陀如来の役割を簡単に説明すれば、人々を極楽浄土へと導いてくれる仏である。阿弥陀如来像が盛んに造られたのは平安時代末期である。ブッダの入滅後、仏の教えと修行の効力がなくなり、悟りが得られなく世の中、すなわち末法の世の到来を恐れた貴族の間で、極楽浄土への憧れが強まったことが背景にある。10円玉でおなじみの平等院鳳凰堂はそんな阿弥陀堂の典型で、もちろん本尊として安置されているのは阿弥陀如来像である。鳳凰堂は極楽浄土の世界を視覚的に表現しようと試みた建築なのだ。


■特徴がわかればより深い仏像観賞が可能になる

  さて、阿弥陀如来像の外見的な特徴を見てみよう。時代によって細かく造りは変化しているが、もっとも特徴的なのは両手で示している“印”にある。飛鳥・天平時代の像は右手で施無畏印、左手で与願印を結んでいるものが多い。そして、もっとも阿弥陀如来像が多く造られた平安時代になると、坐禅のように足の上に両手を置き、親指と人差し指の指先を触れる阿弥陀定印を結ぶ像が多く見られるようになる。平等院鳳凰堂の阿弥陀如来像はこのタイプだ。


  平安時代後期になると、前に差し出した左手の親指と人差し指の指先をつけ、来迎印を示す像が多くなる。また、右手が胸のあたりにあり、親指と人差し指の指先をつけてやはり来迎印を示す。そして、平安時代以降の阿弥陀如来像は全身が金色で塗られていることが多く、背後には光背と言って、阿弥陀如来の輝きをイメージした装飾がつくことが多い。


  こういった仏像の時代ごとの変遷やその役割、仏像の作り方や素材、さらには興福寺阿修羅像や薬師寺薬師三尊像など、国宝・重要文化財に指定されている歴史的な仏像の写真が豊富に収録されている。寺院めぐり、仏像観賞のお供としてだけでなく、純粋に仏像の写真集としても楽しめる一冊だ。さらに、近年話題になることが多い円空仏や、神仏習合の風潮の中で生まれた神像についても解説されている。仏像の入門書として最適なのはもちろんだが、熱心な愛好家にもおすすめできる充実した内容の一冊である。



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