画像:中村蒼オフィシャルInstagramより助演として作品を支える名演が目立つ俳優・中村蒼(34)が、この冬大活躍! ドラマ10『東京サラダボウル』と、2025年大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』。それぞれ全く違う役柄で、作品に華を添えています。
◆まったく違う“愛されキャラ”を同期間に演じ分け
最終回を迎えた『東京サラダボウル』で中村が演じたのは、陽気で心優しい警察官・織田。主人公・鴻田(奈緒)とバディを組む、警視庁の通訳人・有木野(松田龍平)にとって大切な存在です。心を閉ざしがちな有木野を想い、寄り添う中村の姿には、恋する乙女のような愛らしさと、母のような慈悲深さを覚えました。元不良という経歴で、ピンク頭で登場した回想はギャップ萌え!
一方『べらぼう』では、主人公・蔦重(横浜流星)の義兄・次郎兵衛を演じています。次郎兵衛は、いわゆる“放蕩息子”。家業の茶屋の経営を任されるも、実質の切り盛りは蔦重が行っています。第1話では「役立たずの兄を中村蒼が演じるなんて、贅沢だけど見せ場はあるのか?」と思っていましたが、さすが中村。回を追うごとに、働かないけど憎めない次郎兵衛に惹かれてしまうのです。流行りもの好きでおしゃれに敏感、自由気ままな性格の義兄という設定から、見事に愛される“ダメ兄”のキャラクターを創り上げています。
◆NHKに愛される誠実さと、“忘れられない演技”
この冬もですが、中村蒼について「NHK作品によく出ている」印象をもっているのは筆者だけではないはずです。
朝ドラには、主人公の幼馴染であり親友という役柄で2度出演しています。窪田正孝主演の『エール』(2020年)では新聞記者を経て作詞家となった村野鉄男を、神木隆之介主演の『らんまん』(2023年)では土木工学を学ぶエンジニアとなった広瀬佑一郎を演じました。どちらも漢気ある誠実さを持ち合わせた人物で、朝ドラ主人公たちに影響を与える存在。中村の名演に魅せられた人も多いでしょう。昨年の『宙わたる教室』でも、再び窪田演じる主人公の友人役として、作品に深みを持たせていました。
NHK×中村蒼といえば、何より『大奥』Season2「医療編」での演技が忘れられません。中村が演じたのは、一橋治済(仲間由紀恵)の長男で11代将軍の家斉。登場時、実権を母に握られまるで操り人形のような家斉の、気弱で覇気がない顔つきはインパクトがありました。しかし回を重ねるごとに自分の意志を持ち、精悍(せいかん)な将軍へと変貌を遂げていきます。家斉の成長や変化を見事に表現し、話題を呼びました。
◆“闇”を色濃く映し出し、“光”を纏う天才
中村の魅力はポジティブな好青年ぶりだけではありません。筆者が初めて彼を認識したのは、ドラマ『リーガル・ハイ』の第1話。ガソリンスタンド店長殺害事件の被告人・坪倉裕一を演じています。気性の荒い部分はあるものの、無罪の真面目な少年なのでは……? と思わせておきながら、実は殺人犯なのかも? と含みを持たせる表現が秀逸でした。
また、ドラマ『無痛〜診える眼〜』で担った難役も印象的。先天性無痛症で無毛症の清掃員・イバラを演じています。髪だけでなく眉までをも剃り落としたビジュアルはもちろんですが、何より心情描写が凄まじかった。痛みという概念を理解できないことへの戸惑いと、薬の副作用による狂気の演技は忘れられません。人間のもつ心に傷や闇を深く理解し表現する力があるからこそ、中村の手にかかればどんな人物も表面的ではない深みのあるキャラクターになるのでしょう。
前述した『東京サラダボウル』における、国際捜査の場で相棒となった阿川(三上博史)の“誤訳”や警察官としての在り方に苦悩する姿にもそれは通じています。
◆めきめきと名バイプレイヤーの頭角を現す
芸歴20年にもなる彼の出演作を遡っていくと、実に多種多様な役柄を演じてきていることが分かります。今年1月に公開された『室町無頼』では、飢餓と疫病に苦しむ民を横目に贅の限りを尽くす将軍・足利義政。3月14日に公開された『早乙女カナコの場合は』主人公・カナコにアプローチする優しいハイスペ男子と、全く違う顔を見せています。
もっと色んな表情を見たくなる俳優であり、気づけばすでに色んな顔をして作品に溶け込んでいる中村。3月20日に放送される彼の地元・福岡を舞台にした主演ドラマ『山田全自動の福岡暮らし』も楽しみです。
今年も多くの作品に引っ張りだこの中村蒼。彼の活躍から、ますます目が離せそうにありません。
<文/鈴木まこと>
【鈴木まこと】
日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間でドラマ・映画を各100本以上鑑賞するアラフォーエンタメライター。雑誌・広告制作会社を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとしても活動。X:@makoto12130201