キーボードはノートPCの生命線。わずかな不良も見逃せない 3月、新生活に向けてノートPCを新しく購入する人も多いだろう。「日本で販売されている製品は、おおむね品質は安定しており、めったなことで不良品に当たることはない」と思いたい。しかし実際は意外に初期不良が多い。実害の少ないちょっとしたヨゴレとか傷は、まあ目をつぶってもいいかもしれない。しかし絶対に見逃してはならない致命的な初期不良も存在する。手動の英文タイプライターからCopilot+ PCまで、数えきれないほどのキーボード付き機器を購入してきた経験から、妥協してはならない初期不良の中身と、その対応策について購入先ごとにまとめた。
その他の画像はこちら 結論から言えば、ノートPC購入にあたって絶対に見過ごしてはならないのは「キーボードの不良」だ。ほんのわずかでもキーボードの挙動がおかしい場合は即、交換・修理を求めることをお勧めする。理由は簡単。放置すると誤入力が山のように増え、信じられないほど生産性が低下するからだ。キーボード不良で、最も悲惨なのがパスワード。何度正しく入力してもはねられ続ける無間地獄を味わうことになる。ノートPCにとって、キーボードは「生命線」。特に中古品を購入する場合は念入りに確認したい。一方、新品といえども一切油断はできない。新品ノートPCでも、何度もキーボード不良に遭遇してきたからだ。デスクトップPCなら、キーボードを買い替えれば済む。だがノートPCのキーボードは、簡単には取り換えられない。外付けキーボードを使うという手もあるが、こいつは非常かつ最終手段。多少なりとも持ち歩くことを前提としてノートPCを購入するなら、暴力的なまでに可搬性が失われる外付けキーボードの常用は、まったくお勧めできない。
キーボードの不良はバリエーションがいくつもある。キーを押しても反応しないというのが典型的なものだ。言語道断な不良だがわかりやすい。1回押しただけなのに複数回入力されてしまう「チャタリング」現象という、なかなか気付きにくい不良もある。こうした現象に出くわしたら問答無用で即、交換・修理だ。微妙なのは打鍵のフィーリング。ほんのちょっとだが押したキーの戻りが遅いとか、特定のキーだけ、ほんの少し重いとか、いろんな不具合が存在する。正しい文字が正しく入力されているか。どのキーも均一の打鍵感を保持できているか、などを確かめつつ実際にキーボードを打って確認するのが一番だ。入力チェック中に、少しでも「ん?」と思うことがあったら、その直感は無視せず、理由を解明しておいたほうがいい。
最近はL社のノートPCをメインに使っている。ここ4年ほどで、ばらばらのタイミングでばらばらのグレードのPCを4台、日本で購入した。そのうち2台をキーボード不良で修理に出した。特に先月購入したPCに至っては購入直後、すぐ不良が発見され即日で修理に出した。スペースバーのキーストロークが他のキーと明らかに異なって重かったからだ。たった4台という限られたサンプル数での計算だが、キーボードの初期不良発生率は25%。非常に高い。保証期間内にキーボードが故障した製品も入れると不良発生率は実に50%にも上る。たまたまなのかもしれないが、こればっかりは買ってみなければわからない。
購入先によっても対応が異なる。家電量販店などの実店舗で購入した場合は「良品交換」で解決する場合が多い。不良が発生した商品を店舗に持ち込んで不良状況の再現ができれば、在庫次第でその場で交換してくれることも多いだろう。商品を持ち込むという手間はあるが、すぐに解決できるのでとても楽で速い。一方、例えばオンラインショップのアマゾン。初期不良に当たってしまった際ほとんどの場合、いったん「返品」して新たに購入しなおす、という流れになる。アマゾンは返品対応がスムーズで優れている。正当な理由があれば返品・返金に応じてくれ、返送料もかからない。ただ、返送と再購入の手間はかかってしまう。数量限定の特価品だと、同じ値段で再購入できない場合もあるだろう。
一番厄介なのが海外通販サイトでの購入だ。過去に何度も記事として紹介しているので、詳しくはそちらを参照いただきたい。簡単に流れを紹介すると、例えば、中国の通販サイトAliexpressの場合。まず「不良を示す動画を送れ」からスタートだ。不良が認められれば実機を国際便で送り返す。先方に届いて改めて不良が確認されると、代替機を送ってくるという流れだ。ただ、国際便のやり取りは、関税の処理もからんでかなり面倒。その面倒を避けたがるのはショップ側も同じだ。できるだけモノを動かさずに解決しようとする傾向が強い。PCのキーボード不良でAliexpressのショップと交渉した際は「代金の30%を返金するのでそのまま使ってくれないか」という話を持ち掛けられたこともある。しかしキーがおかしいままPCを使うことはできない。突っぱねて実機交換を求めたが、在庫がないとかなんとか言われ、交渉に2カ月弱を要した。海外通販を利用する際には、初期不良に出くわすととても面倒なことになる、ということは覚悟しておいたほうがいいだろう。
そういえば中国の家電量販店には、必ずと言っていいほど購入時に製品の動作状況が確認できる「動作チェックコーナー」が設けられている。それだけ初期不良に遭遇する確率が高い、というわけだ。消費者は、メーカーや販売店を信用していない。激しいコストダウン競争の渦中にあって、日本も中国と似たような状況になりつつある。10〜20年前に比べると、デジタル製品の初期不良率は全体に上がっているように感じる。ユーザーとしては購入直後に、隅々までしっかりとチェックして、しかるべき対応を取るしか防衛手段はないだろう。(BCN・道越一郎)