和倉温泉駅=12日、石川県七尾市 北陸新幹線の延伸開業から1年を迎えた北陸の観光地では、関西や中京圏からの集客を懸念する声が広がっている。いずれも直通の特急がなくなり、敦賀で新幹線への乗り換えが必要になったためだ。能登半島地震で被災した和倉温泉(石川県七尾市)関係者も苦慮している。
延伸前は、大阪と金沢を結ぶ特急「サンダーバード」が1日1往復、和倉温泉まで直通運転していた。しかし、新幹線延伸に伴って大阪・名古屋からの特急は全て敦賀止まりとなり、金沢まで新幹線に乗り、再び在来線へと2度乗り換えが必要に。大阪―金沢間で最速22分短縮される一方、料金は約2割増しとなった。
和倉温泉で旅館「花ごよみ」を経営する北村金次社長は昨春の営業再開後、関西の客に「不便になった」と言われた。「乗り換えを経験したら、また来たいと思わないのではないか」と懸念する。
「関西の奥座敷」と呼ばれ、新幹線駅が開業した加賀温泉(同県加賀市)も同じ悩みを抱える。市によると、2024年の宿泊・日帰り客数は延伸前の23年と比べ、関東からは7.5%増えた一方、中京圏は4.2%減、関西からは13.0%減となった。
北陸新幹線は最終的に大阪までつながる計画だが、敦賀以西の詳細なルートは決まっておらず、25年度を目標としていた着工も見送られた。七尾市は「臨時便でも復活すれば復興の弾みになる」として、直通列車の再開を要望している。