
2025年MLBの開幕シリーズを控え、決戦の舞台となる東京ドームをはじめ、渋谷、新宿、池袋など東京のあらゆる街に大谷翔平(ドジャース)の大看板が掲げられている。3月18・19日に行なわれるカブス対ドジャースの『東京シリーズ』は街の広告やテレビ、インターネット、SNSでも大きく取り上げられ、歴史的行事と言われるくらいの盛り上がりだ。
【主催ゲームなのに完全アウェー】
アメリカから遠路はるばるやってきたメジャーリーガーたちは、この大注目をどのように感じているのだろうか。3月16日、巨人とのプレシーズンマッチ前の会見に出席したカブスのクレイグ・カウンセル監督はこう答えた。
「タクシーやウーバーに乗ると、選手のことを知らない人たちさえも、このシリーズについて話している。それくらいみんなに注目されているということだ。アメリカにいる以上に、多くの人たちがこの試合に注目しているように感じる。選手たちは誰しも、ビッグイベントが好きだ。このように注目を浴びるシリーズをできるのは、非常にうれしいことだ」
今回の開幕シリーズはカブスの主催扱いだが、東京ドームはおそらくドジャーブルーで染まり、完全アウェーの戦いになるだろう。しかも先攻のドジャースは、1番に大谷を据えることが濃厚だ。ボルテージはいきなり最高潮に達し、2試合で大谷に巡ってくるであろう約10打席には世界中の注目が寄せられる。
対するカブスの先発マウンドに上がるのは、メジャー2年目で初の開幕投手を務める今永昇太だ。カブス入団1年目の昨季は29試合に登板し、日本人左腕歴代最多となるシーズン15勝(3敗)を飾り、防御率2.91。シーズン途中まで、サイ・ヤング賞候補に挙げられるほどの活躍だった。
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メジャー2年目は環境への適応も深まるなか、開幕投手に選んだカウンセル監督は今永にどんな上積みを期待しているのだろうか。
「30試合に登板してもらい、去年と同じピッチャーでいてほしいと思う。そうすれば、すばらしいシーズンになるだろう。すばらしい選手にはこちらも欲が出て、もっと、もっととと望んでしまうものだが......。でも昇太が去年見せた活躍は、簡単なものじゃない。だからもう一度同じような活躍をして、すばらしいシーズンを送ってほしいい」
メジャーで先発ローテーションを1年間守れば、登板数は30試合前後になる。もし今永がこの目標を達成できれば、勝ち星や防御率などの数字もついてくるだろう。
【指揮官が2年目の今永昇太に求めるもの】
メジャー1年目に破竹の活躍を見せた昨季終了後、カウンセル監督は今永にかけたという言葉を明かした。
「最も重要なこととして、どうやってもう一度30試合を投げ切るための準備をするかを、話し合った。それはつまり、いかに健康でい続けるかだ。もしわれわれのベストプレイヤーが多くフィールドに立つことができれば、チームとして成功を収められるだろう。
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だが、今の野球ではピッチャーのケガが非常に多く、深刻になっている。それを防ぐためにできることは、すべてしなければならない。だから昇太には、ルーティーンを大切にして健康を保ち、30試合に登板できるようにしてほしいと伝えた」
今永にとって東京ドームはDeNA時代によく登板した球場であり、ドジャース・山本由伸との開幕戦での投げ合いは初の日本人投手対決となる。それらはあくまで外的要素であり、カウンセル監督はベストプレイヤーを多くフィールドに立たせるため、今永を開幕投手に選んだわけだ。
今から1年2カ月前、今永は入団会見で「ヘイ、シカゴ!」と呼びかけて出席者の爆笑を誘うと、英語のスピーチを挟んだあと、「ゴー、カブス、ゴー!」と締めてカブスファンを虜にした。この入団会見を、カウンセル監督は前列で聞いていたという。
「私も会場の席に座っていたが、日本人、アメリカ人選手に関係なく、私が今までに見たなかでベストな入団会見だったと思う。難しいことだが、英語で多く話した。彼のキャラクターを示し、競争心を見せた。冗談が好きなことも見せてくれた。マウンドで見せるのと、同じことをしてみせた」
30歳で迎えたメジャー1年目はシーズン序盤からフル回転して29試合に登板、新人王投票で4位に入る活躍を見せた。そして迎える2年目、空前の盛り上がりを見せる東京シリーズで凱旋し、3月18日の開幕戦では1回表、まっさらなマウンドに上がる。開幕を迎える心境について、14日の会見では今永節で表現した。
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「日本の盛り上がりはすごく感じますし、それと同時に責任感とプレッシャーもあるので、そのプレッシャーに押しつぶされないように......いい睡眠をとって、頑張りたい」
いよいよ迎えるドジャースとの開幕戦。大谷の今季初打席も楽しみだが、真っ向勝負を挑む今永の投球も同じくらい楽しみだ。