始動日は室内調整で汗を流した伊藤 [写真]=JFA 日本代表は17日、FIFAワールドカップ26アジア最終予選の第7節バーレーン代表戦、第8節サウジアラビア代表戦に向けて、千葉県内で始動。その面々の中には、ケガによる長期離脱の日々を乗り越え、昨年6月以来の日本代表復帰を果たしたDF伊藤洋輝(バイエルン/ドイツ)の姿もあった。
昨年6月のことだった。昨シーズン、シュトゥットガルトの最終ラインで獅子奮迅のパフォーマンスを見せていた伊藤は、現地メディアによっておよそ3000万ユーロ(約49億円)と報じられた移籍金で、バイエルンへ完全移籍加入。“即戦力”と認められての加入なだけに、周囲の期待も大きかった。
だが、ここから伊藤にとって苦しい日々の幕が上がる。合流直後の昨年7月に行われたデューレン(ドイツ4部相当)との練習試合で中足骨を骨折し、2024−25シーズン開幕前に無念の負傷離脱を強いられると、一時は復帰に近づいていると報じられたが、昨年11月には再手術が実施。最終的には半年以上もの期間、戦線を離脱した。
長く、苦しかった日々を、伊藤は「1度目のオペをしたあと、うまくいかなかった部分があったのですが、過去を振り返らずと言いますか、前だけを向いてやってきました」との言葉で振り返る。そして2月12日、「小さいころから目指していたし、ずっと見ていた舞台」だというチャンピオンズリーグ(CL)のセルティック戦で、待望のバイエルンデビューを飾った。
ケガによって長らく公式戦のピッチから離れてはいたもののの、バイエルンの選手として日々を過ごす中で、多くの刺激も受けてきた。復帰後には練習のなかで世界屈指のチームメイトとマッチアップし、「自分の成長につながっている」との手応えも掴んでいるが、特に伊藤が感じたのは「勝つだけでなくて、常に勝ち方まで求められている。勝つことが当たり前のクラブ」だという周囲からの見られ方。バイエルンはドイツの“絶対王者”であるがゆえ、簡単に負けることは許されず、さまざまなプレッシャーがかかるのだろう。“勝って当たり前”だというメンタリティを、日々の練習の中で植え付けられた。
クラブと代表、戦うカテゴリーなど、さまざまな違いはあるにせよ、今や日本代表もアジアでは“勝って当たり前”の立場と言っていいかもしれない。ここまでの最終予選では5勝1分と無敗で駆け抜けているだけでなく、22得点2失点と圧倒的な強さを見せ、日本代表史上最速でのワールドカップ出場に王手をかけた。
伊藤がバイエルンの選手となってから、日本代表に合流するのは今回が初めて。バイエルンで確立した“勝者のメンタリティ”を日本代表にも持ち込むべく、伊藤は「最後に1勝して、圧倒して勝つことによって、自分たちの目指している部分は明確になる。まずはアジアの舞台で圧倒して勝てるように準備していきたい」と力強く言葉を紡ぐ。
また、2022年6月に日本代表デビューを飾った伊藤にとって、自身初の最終予選ともなる。前述のケガによって、今回の最終予選が開幕した頃には戦線離脱を強いられていたため、早ければ20日に控えたバーレーン代表戦が、「これまでの最終予選はテレビ越しで見ていた」という伊藤個人としての、“最終予選デビュー戦”だ。
「(ここまでの結果は)みんなが積み上げてきてくれたもの。しっかり勝って、ワールドカップ(出場)を決めたいと思います」。デビュー戦でワールドカップ行きの切符を掴むべく、伊藤が新たな一歩を踏み出す。
【ハイライト動画】日本代表、最終予選でのここまでの道のり