3位となった93号車アキュラARX-06(アキュラ・メイヤー・シャンク・レーシング) 2025年IMSA第2戦セブリング12時間 アメリカ・フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイで3月15日、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の2025年シーズン第2戦『第73回モービル1・セブリング12時間レース』が行われ、チャンピオンカーの7号車ポルシェ963が優勝した。
ここでは、デイトナでの開幕戦と同様にポルシェ・ペンスキー・モータースポーツが強さを見せた今季第2戦を振り返る、決勝後の各種トピックをお届けする。
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■22回目のワン・ツー・フィニッシュ
ポルシェは、ニック・タンディ/フェリペ・ナッセ/ローレンス・ファントールのトリオが7号車963で勝利を収めたことにより、セブリング12時間レースでの総合優勝回数を「19」とし、自らが持つ記録を更新した。
ヴァイザッハのブランドがセブリングで総合優勝を飾ったのは2008年以来、17年ぶりだ。2008年のレースでは、ティモ・ベルンハルト/ロマン・デュマ/エマニュエル・コラールが乗るペンスキーの7号車ポルシェRSスパイダーが優勝した。当時ドライバーだったベルンハルトは現在、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ(PPM)のパフォーマンス・ドライバー・コーチの任に就いており、ウェザーテック選手権の今季第2戦にも参加した。
PPMのマネージングディレクター、ジョナサン・ディウグイドは、その年に優勝したファクトリーRSスパイダー姉妹車のアシスタント・レースエンジニアを務めた。「私と他のチームメンバー数名は、2008年のセブリングでポルシェが最後に総合優勝したときのことを目撃したので、今ふたたび一緒に頂点に立つことができて本当にうれしく思っている」と語った。
2008年のレースでは、今年のレースと同じようにポルシェがワン・ツー・フィニッシュを飾ったが、2位はペンスキーではなくダイソン・レーシングのRSスパイダーだった。総合3位はLMP1クラスで優勝したアウディR10 TDIだ。
■“36時間レース”のうち4割以上のラップを支配
ディウグイドは、気温が下がると暗闇の中で963のペースが尻上がりに良くなったことを指摘した。その結果、ポルシェ・ペンスキーは2025年シーズン初めて、さらに昨年のロード・アメリカ以来初めてワン・ツーを決めた。これはペンスキーにとってIMSAトップシリーズでの22回目のワン・ツー・フィニッシュとなっている。
タンディ、ナッセ、ファントールの7号車クルーは、2017年にリッキーとジョーダンのテイラー兄弟がウェイン・テイラー・レーシング(WTR)の10号車キャデラックDPi-V.Rでロレックス24(デイトナ24時間)とセブリング12時間レースの両方で優勝して以来、このふたつを合わせた“フロリダ36時間レース”で連勝を収めた初のドライバーとなった。
驚くべきことに7号車ポルシェは、ふたつの耐久レースを合わせた1134周のうち473周をリードし、今シーズンこれまでにリードしたレース周回数の41%以上を占めている。
タンディは、ル・マン24時間とデイトナ24時間、セブリング12時間の“トリプルクラウン”に加えニュルブルクリンク24時間、スパ24時間、プチ・ル・マン(ロード・アトランタ10時間)を合わせた、いわゆる“耐久ビッグ6”を完全制覇した初のドライバーとなったが、チームメイトのナッセは2019年にアクション・エクスプレス・レーシング(AXR)で勝利して以来、セブリングで2度目の総合優勝を果たした。
ナッセは次のように語った。「チームとして、今日は最初から最後まで完璧なレースだった。僕がクルマに乗っていたとき、序盤に後方に沈んだことが1度だけあったと思う。でもその後、僕たちは前に進んだ。チームは完璧なレース運びをしたと思う。ニック(・タンディ)とローレンス(・ファントール)がスティントを担当しているとき、彼らの走りを見て『ああ、素晴らしい仕事をしている』と思ったものだ」
■スピードはあったが表彰台に届かず
メイヤー・シャンク・レーシング(MSR)は、レンガー・バン・デル・ザンデとニック・イェロリーが乗り込んだ93号車が今季初表彰台を獲得した。HRC USがエンジニアリングを担当するアキュラARX-06には、NTTインディカー・シリーズのスター、アレックス・パロウも助っ人としてメンバー加わった。
一方、開幕戦で2位となった姉妹車の60号車は、残り3時間でフィリップ・エング駆る24号車BMW MハイブリッドV8(BMW MチームRLL)とピットレーンで衝突しダメージを負った。当時トム・ブロンクビストがドライブしていたアキュラARX-06はピットレーンのプロトコル違反でドライブスルーペナルティを受けたため、上位争いから脱落することとなった。
ブロンクビストは次のように語った。「ピットレーンから出るときに問題があった。1台がファストレーンにきちんと入っておらず、別のクルマを避けなければならなかったのだけど、隙間が狭すぎて左フロント(サスペンション)を壊してしまった。もちろん、チームやチームメイトに申し訳なく思っている。あれがなければ両方のクルマが3位と4位を争うことができたと思う」
BMW側は、姉妹車である25号車がトップ5の成績を収めた。「しばらくは調子が良さそうだった。我々はトップに返り咲き、表彰台に上がれるところまで来ていた」と語るのは、シェルドン・ファン・デル・リンデとロビン・フラインスとともに24号車MハイブリッドV8をシェアするマルコ・ウィットマン。「しかし結局、25号車は『ただの』5位だった。スピードの点では良かったのだけど、最終的にはポルシェの方が強かったから少し残念だ」
■接触していないのにペナルティ
ウェイン・テイラーは、自身のチームの10号車キャデラックVシリーズ.Rが021号車フェラーリ296 GT3(トリアルシ・コンペティション)とのインシデントで不当なペナルティ受け、レース序盤にスロットル関連の問題が発生して最終的に3周遅れでレースを終えた後、これまで参加したセブリングの中で「もっとも失望した」レースだったと宣言した。ジョーダン・テイラー/フィリペ・アルバカーキ/ウィル・スティーブンス組の姉妹車40号車キャデラックは、トップのポルシェから1周遅れの7位でフィニッシュしている。
WTRのボスはこう語った。「映像を見たが、彼は(相手の)クルマに触れてはいなかったし、リッキー(・テイラー)も接触していないと言っていた。そしてレースディレクターの答えは、自身が『誤った判断』をしたというものだった。では、『誤った判断』をした場合の手順は? あの1周のせいで結局は優勝を狙うチャンスを失った。許しがたいことだ。私はこれらのブランドを代表して、誰かにこのような(間違った)行動を取らせるために、このような努力をするつもりはない」
ハート・オブ・レーシング・チーム(HoR)のドライバーであるロマン・デ・アンジェリスは、アストンマーティン・ヴァルキリーのシリーズデビュー戦を9位で終えた後、V12エンジンを搭載するこのマシンが今年のIMSAとWEC世界耐久選手権の両トップクラスでレースをするのは夢のようだと語った。「それは僕の夢だった」と彼はSportscar365に語った。「僕が競い合っている相手の名前をいくつか見ると、彼らは僕ずっと尊敬してきた人たちで、F1を戦ってきた選手たちもいる。だから、この瞬間は僕にとっては間違いなく感慨深い。ここにいられて本当に幸せだ」
インターユーロポール・コンペティションは、昨年PR1/マティアセン・モータースポーツと協力してLMP2タイトルを獲得した後、独自の組織として初めてウェザーテック選手権でクラス優勝を果たした。
今週末、トム・ディルマンとビジョイ・ガーグとともにチームに遅れて加わったジェレミー・クラークは、レース後にIMSAミシュラン・エンデュランス・カップの残りのレースで43号車オレカ07・ギブソンのメンバーに加わることが確認された。彼は、当初ジョン・フィールドが座る予定だったブロンズレーティングのシートを獲得している。
■GTPを喰うLMP2カー
TDSレーシングのハンター・マクレアは、レース中にセブリングのセクター1で総合5番手のタイムを記録した。彼が11号車オレカ07・ギブソンで記録した10.046秒は、GTPドライバーのコリン・ブラウン、ジャック・エイトケン、ニック・イェロリー、ジョーダン・テイラーに次ぐものだった。また、チームメイトのミケル・イェンセンは、セクター1で6人のGTPドライバーのベストタイムを上回り、全体で10番目に速いタイムをマークした。
このクルマの理想的なラップタイム(11号車の全ドライバーのベストセクタータイムの合計に基づくタイム)は1分50秒840で、アストンマーティンTHORチームの23号車ヴァルキリーの理想ラップタイムからわずか0.757秒しか遅れていない。参考までに、このフランスチームのLMP2ポールポジションタイムは、GTP予選で最下位だった車両のタイムから2.404秒遅れだった。
LMP2コンテンダーのマルテ・ヤコブセン(04号車オレカ)は、レース終盤のセバスチャン・ブルデー(タワー・モータースポーツ/8号車オレカ)とのバトルが「とても楽しかった」と語った。プジョーWECのドライバーは、残り1時間23分でクラウドストライク・レーシング・バイ・APRのマシンにふたたび乗り込むと、当時クラストップだったブルデーのペースに対抗してフィニッシュに向かった。21歳のデンマーク人ドライバーは、18周の間にブルデーとの差を1秒未満に縮め、コーション中のピットストップでブルデーを追い抜いてみせた。
ヤコブセンは次のように語った。「彼は明らかに非常に速く、素晴らしいレーサーだ。彼のクルマをコントロールする術やトラフィックの流れを管理する方法、そして経験を見れば、非常に才能のある人物であり、素晴らしいレーシングドライバーであることがわかる。そんな彼と競争するのはとても楽しかった! 彼のレースは激しいけれど、フェアなので不正行為などはない。接戦になって本当に楽しめたよ」
クラウドストライク・レーシング・バイ・APRはLMP2クラスで最多のラップをリードし、12台のフィールドの先頭で182周を走った。他の競合チームではレース序盤のリーダーであるTDSが、クラスリーダーとして100周以上を走った唯一のチームだった。
■小さな接触が大きな代償に
GTDプロクラスの優勝者であるラウリン・ハインリッヒは、クラウス・バッハラーとアレッシオ・ピカリエッロとともに恐竜リバリーの77号車ポルシェ911 GT3 R“レキシー”をドライブし、クラスをリードしながら2分00秒451のベンチマークを樹立。セブリングにおけるレース中のGTDプロ・ラップレコードを更新した。
コルベット・レーシング・バイ・プラット・ミラー・モータースポーツは、GTDプロクラスにエントリーした2台のシボレー・コルベットZ06 GT3.Rが揃って後退に直面し、忘れ去りたいレースとなった。4号車はIMSAが義務付けた車載ロガーの修理のために余計なストップを余儀なくされ、姉妹車の3号車は右リヤのサスペンション部品の破損によりレース終盤に2周遅れ、クラス7位でフィニッシュした。
3号車をドライブしたアレクサンダー・シムズは次のように語った。「夜に入ると、クルマが少し元気になってきたように感じた。ペースは良く、リヤサスペンションのトラブルが発生する前に3番手まで順位を上げることができた。でも正直に言うと、最後にはトップの選手たちのペースが僕たちより速かったように見えた。だから順調にいってもそれ以上の成績は残せなかったと思う」
バッサー・サリバン・レーシングもトラブルに見舞われた。14号車レクサスRC F GT3は、ベン・バーニコートの代役としてレースに参加したホセ-マリア・ロペスが運転していたときにステアリングラックが損傷した。
「ラインを越えた後のBMWの動きを予測できなかった」と彼は語った。「接触はごく小さなものだったが、僕たちにとっては非常に高い代償になった。残念ながらそこからは生き残るために必死だった。ペースは良くなかったけれど、接触がなければ良いレースができたと思う」
ウェザーテック選手権の次戦第3戦は、4月11〜12日に開催される『アキュラ・グランプリ・オブ・ロングビーチ』で、この100分のスプリントレースにはGTPとGTDチームのみが参加する。GTDプロのマシンは、5月9〜11日に同じく西海岸のウェザーテック・レースウェイ・ラグナ・セカで開催される第4戦でふたたび登場する予定だ。
[オートスポーツweb 2025年03月18日]