企業の未公表の株式の公開買い付け(TOB)情報を基にインサイダー取引をしたとして、金融商品取引法違反に問われた裁判官出身の元金融庁職員、佐藤壮一郎被告(32)=懲戒免職=は19日に開かれた東京地裁(野村賢裁判官)の初公判で起訴内容を認めた。「将来に備えてという目的意識に駆られた」と述べた。
検察側は「法律に従う裁判官から金融庁に出向中の立場での犯罪で、投資家の信頼を低下させた」として、懲役2年、罰金100万円、追徴金約1020万円を求刑した。弁護側は執行猶予付きの判決を求め、即日結審した。判決は26日。
2024年4月から金融庁に出向した佐藤被告は企業開示課の課長補佐としてTOBの審査を担当した。
検察側は冒頭陳述で、佐藤被告が出向して間もなく「有名ではない銘柄で少額ならインサイダー取引が発覚しない」と考え、TOB情報を基に企業の株を自身の証券口座で買い始めたと明らかにした。
結果として、24年9月までに計10銘柄1万1800株を約952万円で買い付けたと指摘。売却して計約550万円を得て、売却益を別の株の購入やクレジットカードの支払いに充てたとした。
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佐藤被告は被告人質問で取引を始めたきっかけについて「TOBに関する知識がなく、株主の立場で市場の仕組みを知るために株を買った。少しなら許容されると思った」と説明した。
違法性の認識はあったものの、老いていく両親や子どもの将来に備えて、資金を増やすという目的意識に駆られ、取引額が膨らむようになったとし、「間違った甘い考えと、規範意識が低かったことに尽きる」と述べた。
弁護側は、佐藤被告が起訴内容を認めていることや、家族が監督の意思を示していることを挙げ、寛大な判決を求めた。佐藤被告は最終意見陳述で「金融庁や裁判官への信頼を失わせる行為で、強く反省している。人生を懸けて償っていく」と述べた。【北村秀徳】
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