宇野昌磨が見出した「飛躍的成長」の条件 「やりたいからやっているだけ」の気持ちで新アイスショーへ

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2025年03月21日 07:31  webスポルティーバ

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宇野昌磨『Ice Brave』会見&インタビュー 中編(全3回)

 3月19日、名古屋。ビルの25階からは、市内を見渡すことができた。冬の終わりを告げる晴朗で、屋内には優しい日差しが入っていた。

 宇野昌磨(27歳)は、アイスショー『Ice Brave(アイス・ブレイブ)』の記者会見で1時間半以上メディアに対応したあと、さらにマスコミ各社の個別インタビューを受けていた。6本目のインタビューで、すでに日は落ちかけ、2時間近く、彼は話し続けていた計算になる。

「疲れました......」

 嘘がつけない宇野は、開口一番に言った。そう本心を明かし、笑いになるところが、人をひきつける所以だろう。かわいげがあるというのか。

 それでいて、宇野はインタビューで正対すると、言葉を丁寧に用い、品のよさを見せた。感情も含めて伝えるために、ずっと視線を合わせる。少しもぞんざいな物言いはしない。こちらの問いに自然に笑みをもらしながら、一つひとつの問いに真摯に答えた。氷の上に立った時と同じく、スイッチが入った彼はその場の集中力を、引力を感じさせた。

 その生き方こそ、『Ice Brave』の根底にもあるはずだ。

【ルフィ役の経験で得た表現の広がり】

ーー『Ice Brave』の記者会見では、「仲間」という言葉を繰り返し使い、ひとつのテーマであると感じました。仲間と言えば、『ワンピース・オン・アイス』の主役モンキー・D・ルフィは、まさに仲間の象徴。宇野さんはルフィを演じましたが、その経験は今回のショーにも生きていますか?

宇野昌磨(以下同) 生きていますね、かなり。『ワンピース・オン・アイス』は初めての経験だったんですよ。あんなに長い時間をリハーサルにかけて、みんなでひとつのことをするって。まさに団体競技って感じで。自分はフィギュアスケートという個人競技で、"自分と向き合い続ける"というのをずっとしてきました。それが、全員で同じ方向へ向かって進むことができて。はじめはあまり会話もしなかった者同士が、終わった頃には友人というか、ひとつの目標に向かって進む仲間でした。今回、仲間という言葉を使わせてもらっているのは、それが自分にとって一番理想的な関係だからです。『ワンピース・オン・アイス』で得た"全員で頑張る楽しさ"は大きいですし、競技じゃなくてアイスショーでもこれだけの熱量でつくり上げられる楽しさを知ることができました。そこは、『Ice Brave』にも生きています。

ーー『ワンピース・オン・アイス』が終わったあと、表情が豊かになり、「ファンとの距離感も近くなった」と言われました。喜怒哀楽を表現する点で、ひとつ高みに上がったなと......。

『ワンピース・オン・アイス』では、自分ではないものになりきるということができたので......こうしたインタビューでも、スケートでも、自分は素のままでやらせてもらっていて、発言も好きなようにしてきました(笑)。それがワンピースでは、自分ではなくルフィになりきることをやって、表現は広がったのかもしれません。『Ice Brave』でも、曲の雰囲気や世界観を出すため、役に入り込めるようになったと感じるので、そこは出していきたいですね。

【自己分析で見出した"飛躍的に成長できる条件"】

ーー個人的に宇野さんに強く惹かれたのは、2018年の全日本選手権のショートプログラム『天国の階段』ですでにケガを負っていたのにリタイアせず、フリー『月光』を滑りきって、"運命に負けない"という強い気概を見た時です。当時、「これが僕の生き方」と話していましたが、まさに今回の『Ice Brave』の勇敢さに通じるのではないでしょうか?

 当時はケガをして、歩くのもしんどいくらいだったので、棄権も考えられたと思います。でも自分のなかに棄権という選択肢がなかったんですよ(苦笑)。自分のスケートへの熱量はすごくて、フィギュアスケートがなかったら、自分のなかには何も残らないっていう感じだったので......。最近になって、フィギュアスケートに自分が自信を持っている部分をようやく気づいて。それは、スケートへの向き合い方。たとえば、ジャンプも表現も、自分はトップレベルだったと思いますけど、一番ではなかった。それぞれのジャンルでトップの人はいるのに、なぜ自分が世界でトップに立てたのか。こうした活動ができるのか。それは、スケートへの熱量が人よりもすごかったんだと思います。

ーーありあまる熱量で、宇野さんの演技は引力がありました。鬼気迫るものがあるのに、楽しそうにも映るというか......。

 年月も経って、自分で考えるようになって。練習内容とかもいろいろと試すようになり、どんな時に成長できたかって考えました。それは、目標とやるべきことがマッチしている、両方が重なった時だったんですよ。ふたつが合わさると、飛躍的に成長できました。それが"やりたいこと"だからですよね。"やるべき"だったら努力になっちゃうんですけど、"やりたい"って感情が入ると、それは努力じゃなくなって、"やりたいからやっているだけ"ってなる。今はそういう気持ちで『Ice Brave』に向き合えています。

後編につづく

【プロフィール】
宇野昌磨 うの・しょうま 
プロフィギュアスケーター。1997年12月17日、愛知県生まれ。現役時代には、全日本選手権優勝6度、世界選手権連覇、2018年平昌五輪銀メダル、2022年北京五輪銅メダルなど華々しい成績を残す。2024年に現役引退し、現在はアイスショー出演などプロスケーターとして活躍している。2025年6月〜7月に自身が初めて企画プロデュースしたアイスショー『Ice Brave』を名古屋、新潟、福岡の3都市で開催予定。

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