Googleは、3月20日にPixel 9シリーズの廉価版となる「Pixel 9a」を発表した。デザインテイストを上位モデルから受け継いでいたこれまでのPixel aシリーズとは異なり、Pixel 9aはPixelの特徴だった「カメラバー」を採用していない。センサーサイズも小型化して、より端末本体との一体感を高めている印象だ。
一方で、これまでとは異なり、現時点では日本版が発表されていない。Google Storeでは、「発売予定」とだけ記載されており、海外と同時発売なのかといった詳細は不明。FeliCa搭載などの仕様のみ、明かされている状況だ。Pixel aシリーズがヒットし、日本で一気にシェアを高めたGoogleだが、Pixel 9aもその人気をけん引できるのか。発表されている仕様などから、その行方を占った。
●上位モデルと同型チップを搭載しながらコストダウンを図ったPixel aシリーズ
Pixel aシリーズは、上位モデルから数カ月離して投入される廉価モデルだ。「Pixel 8a」や「Pixel 7a」は5月に発売されており、「Pixel 8」や「Pixel 7」とは7カ月近いタイムラグがあった。Pixel 9aの発表は例年と比べると1カ月半程度早いが、これは2024年、Pixel 9シリーズの発売が8月に巻き上がったことと関係している可能性がある。例年通りの5月だと、次のPixelのフラグシップモデルと時期が接近しすぎてしまう恐れもあった。
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発表タイミングは例年より早いものの、Pixel 9aもシリーズとしての特徴はしっかり受け継がれている。価格は499ドルに抑えられているが、プロセッサには上位モデルと同じ「Tensor G4」を採用しており、パフォーマンスに大きな差は出ないことが想定される。メモリ(RAM)も8GB搭載。Pixel 9シリーズより一段安いが、この価格帯でもオンデバイスAIモデルの「Gemini Nano」を利用できる。
プロセッサが上位モデルと同じとなると、どこでコストダウンを図るかが重要になるが、この手法も従来路線を踏襲しているように見える。分かりやすいのは、カメラだろう。Pixel 9aのカメラはPixel 9と同じデュアルカメラだが、メインの広角カメラはセンサーサイズが1/1.31型から1/2型へと小型化している。また、超広角カメラも1/3.1型の1300万画素で、1/2.55型、4800万画素だったPixel 9よりは抑えめなスペックだ。
メインカメラの画素数やセンサーサイズに関しては、1/1.73型、6400万画素だった先代のPixel 8aよりも機能が落ちているように見える。ただし、画素数を下げたことでピクセルピッチはPixel 8aと同程度の0.8μmになっているため、仕上がりは大きく変わることはないだろう。実機を触れたわけではないため何とも言えないところはあるが、Pixel 8aにはなかった光学式手ブレ補正も搭載されていることから、画質が向上している可能性もある。
センサーを小型化した結果として、背面のデザインが他のPixel 9シリーズとやや異なっているのも、Pixel 9aの特徴といえる。これまでのPixelにあったようなカメラバーはなくなり、広角カメラと超広角カメラをまとめた小さいカメラユニットが搭載されている。本体との段差も最小限に抑えられており、カメラの出っ張りが大きいハイエンドモデルとは一線を画すデザインに仕上げられていることが分かる。
Pixel 8aからの進化として、バッテリー容量が5100mAhへと大きく拡大した点も見逃せない。防水・防塵(じん)性能も、IP68にグレードが上がった。一方で、画面サイズも6.1インチから6.3型へと大型化している。これに伴い、横幅は72.7mmから73.7mmに拡大。手にフィットするコンパクト感を求めていた人にとって、この点はネガティブに見える要素といえる。
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●オンデバイスAIは上位モデルとの差も、日本での影響は軽微か
プロセッサの処理能力は他のPixel 9シリーズに近いPixel 9aだが、オンデバイスAIに関しては、仕様の差があるようだ。海外では、複数メディアが「通話メモ(Call Notes)」や「Pixel Screenshots」といった機能に非対応なことを報じている。
前者は通話内容をAIで要約するというもの。後者は、スクリーンショットの中身をAIで解析し、あとから検索しやすくするという機能だ。実際、Googleのプレスリリースを丁寧に読み込んでみると、AIを使った通話機能には言及がある一方で、通話メモには触れられていないことが分かる。同様に、Pixel Screenshotsについての記載もない。
3月にスペイン・バルセロナで開催されたMWC Barcelona 2025でインタビューしたGoogleのシーン・チャウ氏(Android Platform & Pixel Softwareでバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャー)は「Pixel 9ではメモリを4GB増量して、パラメーター数が4B(ビリオン)になる『Gemini Nano 2』を搭載できた」と語っていたが、裏を返すと、8GBのPixel 9aでは、その採用が難しかったことがうかがえる。
その意味では、従来よりも上位モデルとの差が大きくなっているとも捉えることができる。処理能力やスペックの違いが、具体的な機能の違いになっているというわけだ。ハイエンドやミッドレンジといった端末のグレードを決める要素は、プロセッサの処理能力やカメラ、ディスプレイなどのハードウェアが中心だったが、“AIスマホ”時代には、その上でどのような機能を実現できるかも重要になることを示唆している。
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Pixelシリーズは、コンピュテーショナルフォトグラフィーによって、カメラの仕上がりがある程度均一になっていた。その結果、Pixel aシリーズのコストパフォーマンスが高まっていた一方で、1つ上のモデルとの差別化が十分図れていなかった側面もある。Proモデルは望遠カメラなどで違いがあったものの、無印のPixel 8やPixel 9を選ぶ理由が薄くなっていた。AIによる差別化が進んでいけば、ラインアップの中での差別化を、これまで以上に図れる可能性がある。
ただし、通話メモやPixel Screenshotsといった機能は、現在、日本で提供されていない。そのため、Pixel 9aをそのままの形で導入した場合、日本では、上記のような図式が当てはまらないことになる。ユーザーにとってはお得感がある半面、より単価の高い上位モデルの訴求がしづらくなる。Googleに限らず、AI関連の機能は英語が優先され、日本語が後回しになるケースは多いが、そのタイムラグを縮めていく必要はありそうだ。
●日本での展開はどうなる? 価格次第の側面も
Google Japanから日本版の正式発表はないものの、既にモデル別の仕様はヘルプページにアップされており、FeliCaを搭載した「G3Y12」の存在も確認できる。Google Storeにも、「発売予定」と記載されていることから、遠くない時期に何らかのアナウンスはあると見ていいだろう。海外でも4月の発売を予定しているため、その間に何らかの動きがある可能性は高そうだ。
コストパフォーマンスに優れたPixel aシリーズは、Pixel全体の売れ行きをけん引してきただけに、Pixel 9aも注目すべき1台といえる。ただ、ドコモの取り扱いが再開し、Googleがシェアを大きく伸ばした2023年から一転、2024年は販売数やシェアが減少している。IDC Japanが3月7日に発表した調査によると、Googleのシェアは8.7%で3位につけているが、前年比で18.2%と出荷台数を大きく減らしている。
2位のシャープに0.2ポイント差まで肉薄していた2023年とは異なり、その差が広がっている格好だ。逆に、FCNTを傘下に収めたレノボが、モトローラとの合算でシェアを6.2%まで伸ばしており、Googleに近づきつつある。スマホ市場全体は前年よりも拡大しているため、Googleのシェアが他社に奪われたことになる。理由の1つとして大きいのは、円安ドル高の為替相場を反映し、Pixel aシリーズが値上げされたことだろう。
実際、Pixel 7aのときには6万2700円と手の届きやすい価格だったが、Pixel 8aでは7万2600円と1万円近く値上げされている。米国での価格は、2機種ともPixel 8aと同じ499ドルだったことを踏まえると、これは為替レートを反映した結果と見て間違いないだろう。Pixel 7aは1ドル約114円と、当時の為替レートより大幅に安く設定されていたが、Pixel 8aではそれが1ドル約132円まで上がってしまった格好だ。
それでも、現状の為替レートである1ドル=149円よりは安めに設定されているが、もともとコストパフォーマンスが非常に高かっただけに、“価格ブースト”が切れた形で売れ行きが鈍っている。2024年はガイドライン改定で、端末単体割引に規制が入った影響もあったはずだ。国内での販売にあたっては、Pixel 7aのときのようなお得感をどう出していけるかが課題になりそうだ。
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