日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが『Playground/校庭』をレビュー!

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2025年03月22日 17:30  週プレNEWS

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日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』。少女の悪夢のような日常を描く、学校サスペンス!

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『Playground/校庭』

評点:★2.5点(5点満点)

ビビッドで真摯でクリシェまみれ

小学校に入学したばかりの女の子の目を通して、狭く小さい「世界」(原題)の中で起きる不愉快なことがいろいろと描かれる。

中心となるのは自分のお兄ちゃんへの「いじめ」とその再生産だが、他にもでまかせばかりを言うクラスメートや、肝心なときに役に立たない「校内監視員」、あるいは「寄り添って」いるつもりが見当外れの先生などが、幼い主人公の心を蝕んでいく。

監督が言う「小学校を残酷な社会の縮図として描く」「学校という〈世界〉に足を踏み入れたことで新たな人間関係が生まれ、そのことが本人の認識に変化をもたらす」という意図はよく分かるし、信じ難いほど自然に見える子役の演出もあり説得力は高い。

しかし、その意図がどれほど真摯なものであれ、本作はクリシェの集合以上のものを提示できていない。意外性にまったく乏しいのだ。

『エレファント』(2003年)や『サウルの息子』(2015年)で有効に使われた、異常に浅い被写界深度の映像が本作でも全編にわたって用いられているが、意味合いが異なるため効果を発揮しているとは言い難い。映画の最初から最後まで、主人公が新たな〈世界〉に対して目をふさぎ続けているわけではないのだから。

STORY:7歳の内気な少女ノラは3歳上の兄アベルが通う小学校に入学するが、なかなか友達ができず校内に居場所がない。ようやく同じクラスの女の子2人と仲良くなったある日、兄が大柄な少年にいじめられている現場を目撃してしまう

監督・脚本:ローラ・ワンデル
出演:マヤ・ヴァンダービーク、ガンター・デュレ、カリム・ルクルー、ローラ・ファーリンデンほか
上映時間:72分

全国公開中

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