エルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2025年WRC第3戦サファリ・ラリー・ケニア 3月20日(木)から23日(日)まで、アフリカのケニアで開催された2025年WRC世界ラリー選手権の第3戦『サファリ・ラリー・ケニア』は、TOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR-WRT)のエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)が総合優勝を飾った。
そして、チームメイトの勝田貴元/アーロン・ジョンストン組とカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組は最終日に技術的な問題によりリタイア、兄弟チームのTGR-WRT2から走ったサミ・パヤリ/マルコ・サルミネン組は総合4位入賞を果たした。
サファリ・ラリー・ケニアのデイ4は、木曜日の夕方にSS2として行なわれた『ムザビブ』の再走ステージとなるSS17に続き、『オセレンゴニ』と『ヘルズゲート』のステージを、ミッドデイサービスを挟んで各2回走行。5本のステージの合計距離は65.99kmだった。
最終日は早朝から青空が広がったが、路面は前日に強く降った雨の影響で湿っていたり、泥状になっている箇所も見られるコンディションとなった。
前日のデイ3で、総合2番手のオィット・タナック(ヒョンデi20 Nラリー1)に対し1分57秒という大きな差を築いた首位エバンスは、オープニングのSS17で4番手タイムを記録。すでに充分なギャップがあるため、大きなリスクを負って攻める必要はなく、安定性と速さのバランスをうまくとりながらステージを走行した。
一方、前日総合4番手の勝田は、総合3番手のティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)とのタイム差が33秒とそれほど大きくなかったこともあり、アタックを続行。SS17ではハーフスピンを喫しヌービルとの差は拡がったが、総合4番手をキープしていた。
しかし、前日総合5番手のロバンペラはSS17を3番手タイムで走り切るも、その後ロードセクションでクルマに電気系統のトラブルが発生しストップ。残念ながらリタイアとなってしまう。
続くSS18でもエバンスは確実性の高い走りを続け5番手タイムで首位を堅持。一方、勝田は果敢な走りでベストタイムを記録し、ヌービルとの差をわずかに縮めた。
そしてヘルズゲートの1本目となるSS19では勝田が3番手タイム、エバンスは5番手タイムで順位もキープ。ナイバシャでのミッドデイサービスを経て始まった再走ステージSS20では、勝田が今大会4目のベストタイムを記録し、ヌービルとの差を32.9秒まで縮めた。
そして迎えた最終のSS21、ボーナスポイントがかかるパワーステージでは大きなドラマが起きた。日曜日のみの合計タイムでポイントを争う『スーパーサンデー』で最速となる可能性を残していた勝田が、スタートしてすぐにロールオーバーしてしまった。
何とか走行を再開してタイムロスを喫しながらもフィニッシュラインを通過し、その時点では総合5位フィニッシュの可能性を残していた。しかし、タイムコントロールでクルマを前に進めることができなくなり、勝田とコドライバーのジョンストンはクルマを押して何とかポディウムを通過。その後、サービスパークに設定されているタイムコントロールまでクルマを戻すべく修理を試みたが、残念ながらリタイアとなってしまった。
一方、エバンスは最終ステージも安定した走りで駆け抜け、総合2位のタナックに1分9秒差をつけて優勝。サファリ・ラリー初優勝、そして前戦ラリー・スウェーデンに続く今シーズン2勝目を挙げ、ドライバー選手権におけるリードを36ポイントに拡大した。
TGR-WRTは今回の勝利によりサファリ・ラリーがWRCのカレンダーに復帰した2021年以降、負けなしの5連勝を達成。トヨタとしては通算13回目のサファリ・ラリー優勝となった。
パワーステージエンドで行なわれた表彰式では、今回チーム代表代行を務めたユハ・カンクネンが選手達とともに表彰台の最上段に登壇。カンクネンは1985年にセリカ・ツインカム・ターボを駆り、このラリーでWRC初優勝を果たしたが、それから40年後の今大会では、チームを率いる立場でサファリ・ラリー優勝を達成。なお、TGR-WRTにとって今回は100戦目のWRCイベントでもあった。
そんなメモリアルな大会を制したTGR-WRTのユハ・カンクネンチーム代表代行は、「涙が溢れた」と喜びをコメントしている。
「ここケニアで、チームにとって100回目のWRCイベントでの優勝を達成できたこと、そして、私が初めてここで優勝してから40年後に、トヨタの優勝をサファリ・ラリーで祝うことができたことをとても嬉しく思い、涙が溢れた」
「近年の走行距離が短くなったサファリ・ラリーのなかでも、今回は間違いなくもっとも過酷なラリーだった。つねに何かが起こっていたので、自分が運転していた時よりもずっと緊張した」
「とくに最終日に関しては、過去数年と比較すると少し運が悪かったかもしれないが、もっとも重要なのは、このラリーでふたたび優勝できたことだろう。エルフィンとスコットは本当に良くやってくれたし、彼らは非常に素晴らしいシーズンのスタートを切ったと思うよ」
2025年WRCの次戦は、スペインのカナリア諸島が舞台となる『ラリー・イスラス・カナリアス』。ERCヨーロッパ・ラリー選手権から昇格したイベントであり、滑らかで曲がりくねったターマック(舗装路)が特徴となる第4戦は、4月24日(木)から27日(日)にかけて開催される予定だ。
[オートスポーツweb 2025年03月24日]