
【写真】佐野勇斗、魅力あふれる撮り下ろしソロカット
■高校時代、翔也と同じように“夢ノート”を書いていた
「翔也は本当にピュアでまっすぐな男で。僕も比較的純粋と言われることが多いんですけど、翔也の真面目さ、まっすぐさは僕以上。子どものままの汚れていない心の持ち主で、見ていて気持ちがいい男だなと思います」。
テンポ良くハキハキと語る佐野は、制作陣からもしばしば「翔也っぽい」と言われてきたそうだ。
「翔也はメジャーリーガーを目指して“夢ノート”を書いていましたが、実は僕も高校時代にノートを書いていたんですよ。大学受験をする際、志望校を決めて、日々のタスクや『1ヵ月後までに模試でこの判定をとりたい』といった目標を書いていたので、翔也と同じだな、と。受験に合格していったん辞めていましたが、20歳になってから再開し、『グループ(M!LK)でいつかドームツアーをやりたい』『まずアリーナツアーをやりたい』『(お芝居で)アカデミー賞をとりたい』とか、細かいところでいくと『車を買いたい』といった目標なども全部書いて、日々どうすればそうした目標を達成できるかを考えているんです」。
ちなみに、実現できたものはその都度消し、ここまで「順調に消せている」と言う。
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■「僕は中華料理屋ではプロポーズしないです(笑)!」
「確かに、言われてみればそうですね。今気づきました(笑)。結婚までいろいろ障害あるなぁと思っていたんですけど、僕が原因だったんですね(笑)……翔也と僕は似ているところが多いですが、違うところもあります。僕は中華料理屋ではプロポーズしないです!(笑) 僕はそういうサプライズとかは計画的にやるタイプなので、そこはちょっと『マジか!』って思いながら演じていました(笑)」。
そうした翔也のピュアな天然ぶりが視聴者の癒しになっているところもあったわけだが、他にも「マジか!」と思ったところについて、こう語る。
「翔也は親バカで、花をめちゃくちゃ心配しますが、僕だったらそこまでできないなと思うこともありました。子育ての考え方の違いから結の両親に怒る場面では、義父母に対してこんなふうに怒ることってあるものなのか、スタッフさんに聞いたんです。すると『子どものことになると、周りが見えなくなってしまうことは、翔也ならあると思うよ』と言われたんですね。思えば、結との出会いのシーンも、結が溺れていると思って海に飛び込むのは、まっすぐに行動する翔也ならではですよね」。
その一方で、翔也が結婚により、妻の「米田」姓になることを選ぶのは、朝ドラでは異例のこと。さらに、栄養士・管理栄養士の道を突き進む結に代わり、子育てを担うシーンは翔也の方が多い印象がある。こうした夫婦関係や役割分担について、佐野は「素敵だと思った」と語る。
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■橋本環奈は体力がすごい!
結を演じた橋本環奈とは映画『かぐや様は告らせたい』(2019年)以来の再共演だったが、今回夫婦役を演じたことで発見したこととは?
「環奈と最初に共演したときは、嘘のない、気持ちの良い性格の子だな、周りのことをめちゃくちゃよく見ているなという印象だったんですけど、年齢を重ねてその印象がますます強くなりました。僕自身、人とこうして話すのが好きなんですけど、忙しい期間は眠れなくなっちゃったり、疲れて話すことも嫌になっちゃったりするときがあるんですが、環奈にはそれが全くないんですね。本人は気にしていないように見せて、周りの人のことも細かいところまでよく見て、気を遣っているし、失敗しちゃうキャストの方がいても『大丈夫大丈夫』と言って。セリフの量も当然一番多いのに、完璧に覚えてくるし、その後にお酒飲みに行ったりもするし、体力がすごいですよ。いつ覚えているんだろうと思うくらいですが、本人に聞いたら『才能だよ』と言っていました(笑)」。
付き合いが長く、互いのクセもよく知っている橋本とだから、準備もしやすかったとして、こんな例を挙げる。
「翔也は結構ポンコツですけど、そのポンコツぶりを引き出してくれたのが環奈で。もし全然笑わない相手だと、どうしたものかと困惑するし、現場も冷えると思うんですよ(笑)。その点、環奈が大きな声で笑ってくれるから、安心してポンコツになれたところはあります」。
■自身にも重なる“親の夢を子が継ぐ”というテーマ
もう一つ興味深いのは、ヒロインの夫と義父母・義姉の距離の近さだ。先述のように、翔也が義父母に遠慮なく怒るシーンもあれば、義父母や義姉が「翔也」と呼び捨てする関係でもある。
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さらに、“親の夢を子が継ぐ”というテーマは、翔也から長女・花(宮崎莉里沙)にも受け継がれていく。ただし、プロ野球選手になるという、翔也の叶わなかった夢を花が幼少期から背負わされてきたわけではなく、花が好きでサッカーをやってきたことが、自然と翔也の夢と結びついた形だった。また、本人がパパを喜ばせたいと言うと、翔也も結もその気持ちを否定せず、応援のスタンスを示す。実はこのエピソードには佐野自身の思いが重なる部分もあったと言う。
「僕自身も母の夢を継いでいるところがあるんですね。母は昔、芸能界に憧れを抱いていて、履歴書だけ送ったことがあったそうで、僕も母から『芸能界に入ってほしい』と言われていたので、そのあたりも似ていて、すごい縁だなと思いました。僕も母を喜ばせたいという気持ちが強いので、パパのノートを見て夢を継ぎたいと思う花の気持ちはわかるんです」。
■ 1年間“翔也”として過ごし「よりピュアでまっすぐな思いを持つことができた」
では、自分の夢を継いで活躍している様子を、お母さんはすごく喜んでいるのでは?と問うと。
「めちゃくちゃ喜んでいますよ!(笑) ただ、この世界に入ったきっかけは親でしたけど、そこからこの世界が面白いなと思ったのは僕自身で、きっかけをくれたこと、それを自分の意志でやっている点でも、花と翔也の関係に似ていますよね」。
佐野自身の夢ノートの1項目には、朝ドラに出ることがあった。また1つ夢を叶えたわけだが、『おむすび』で得た経験を聞くと、力強くこう振り返った。
「自分の役者人生の中でも大きな転機になる作品でしたし、一番大きいのは、佐野勇斗にとって一番大事な家族を喜ばせることができたということ。僕の中には、国民の心の支えになる何かをしたいという思いがずっとあって、それを具体化した目標が、アーティストとしてドームツアーをやることだったんですね。でも、国民を幸せにする前に自分の家族を幸せにできなかったら意味がない。その目標を叶えられて良かったと思いますし、翔也として(撮影期間を含め)約1年間過ごしてきた中で、自分自身も翔也の影響を受け、よりピュアでまっすぐな思いを持つことができたんじゃないかと思います」。(取材・文:田幸和歌子 写真:松林満美)
連続テレビ小説『おむすび』はNHK総合にて毎週月曜〜土曜8時ほか放送。