米スタンフォード大学などに所属する研究者らが発表した論文「Age and cognitive skills: Use it or lose it」は、年齢とともに認知能力は低下するといわれてきたが、実はそうとは限らないことが新たな研究で明らかになった研究報告である。
これまでの研究では、読み書き能力(リテラシー)や数的能力といった認知スキルは30歳ごろから低下し始めると考えられてきた。しかし、こうした見方は異なる年齢の人々を一度に調査する横断的研究に基づいている。
今回の研究では、ドイツの成人3263人(16〜65歳)を対象に、同じ人の能力を3.5年の間隔をあけて2回測定する研究を行った。これにより、実際に個人の能力がどう変化するかを正確に追跡できた。
その結果、平均的に見ると認知スキルは40代前半まで向上し続け、その後緩やかに低下することが分かった。特に読み書き能力は46歳でピークを迎え、その後の低下は緩やか。一方、数的能力は41歳でピークに達し、その後は比較的急速に低下した。
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しかし最も重要な発見は、スキルの使用頻度による違いだ。読み書きや数的能力を頻繁に行う人々は、50代まで急速に向上し65歳になってもスキルの低下が見られなかった。逆に、これらのスキルをあまり使わない人々は30代半ばからスキルが低下し始めた。
職業や教育によっても違いがあった。ホワイトカラー職や高等教育を受けた人々は、スキルを頻繁に使う限り、40代以降もスキルが向上し続けた。また性別による違いも明らかになり、女性は高齢になると特に数的能力の低下が目立った。
Source and Image Credits: Eric A. Hanushek et al. ,Age and cognitive skills: Use it or lose it.Sci. Adv.11,eads1560(2025).DOI:10.1126/sciadv.ads1560
※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2
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