2025年F1第2戦中国GP ドライバーズパレード 長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、各グランプリウイークエンドのドライバーたちの戦いを詳細にチェックし、独自の評価によりベスト5のドライバーを選出する。今回は中国GPの戦いを振り返った。
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■チームメイトに圧勝したピアストリ
オスカー・ピアストリ(マクラーレン):スプリント予選3番手/スプリント2位/予選1番手/決勝1位
2024年には苦戦した上海で、ピアストリは圧倒的な走りを見せた。週末を通してランド・ノリスよりも速く、スプリントでは終盤マックス・フェルスタッペンを抜いて2位をつかみ、予選では初のポールポジションを獲得した。Q3では彼の2番目のタイムでもポールに十分であったことから、彼のペースがいかに優れていたかが分かる。
日曜日、若きピアストリはベテランのような走りを見せ、徐々にではあるが確実に、ノリスとの差を広げながら、チームメイトよりもタイヤを良い状態に保った。
レース半ばにノリスがプッシュし始めると、ピアストリもペースを上げ、ノリスをコントロール下に置いていることを示し、文句なしの勝利を手にした。
■最強マクラーレンに唯一挑んだラッセル
ジョージ・ラッセル(メルセデス):スプリント予選5番手/スプリント4位/予選2番手/決勝3位
上海の日曜日にマクラーレンに立ち向かったライバルは、メルセデスのリーダー、ラッセルのみだった。そしてラッセルは、ピアストリより優れた予選ラップを走ったともいえるだろう。劣ったマシンで、ノリスより良いタイムを出したのだから。
決勝スタート直後のターン1でマクラーレンに挟まれて、ラッセルは3番手に後退。しかし、マクラーレン勢に近い位置にとどまり続けた。それにより、ラッセルは唯一のピットストップの後にアンダーカットを決めて、ノリスの前に出ることに成功。後ろに迫った友人ノリスに対して強硬なディフェンスを見せたが、ラッセルのマシンには、マクラーレンのワンツーを阻止するだけの力はなかった。
スプリントの4位と2戦にわたる3位で、ラッセルはドライバーズ選手権で現在3位、上位争いに食い込む存在になっている。ランキング2位のフェルスタッペンとは1ポイント差、4位のピアストリとも1ポイント差。ラッセルが自分自身とマシンの力を最大限に引き出していることは明らかだ。
■驚きの挽回で貴重な10ポイントをつかんだオコン
エステバン・オコン(ハース):スプリント予選18番手/スプリント16位/予選11番手/決勝5位
わずか1週間前との違いに驚いた。メルボルンでは最後尾を走っていたオコンが、中国GPの週末では高い競争力を発揮したのだ。
スプリントでは思うような結果を出せなかったが、予選ではQ3進出まで0.03秒差というところまで詰め寄った。そして、日曜決勝という最も重要な場面で、オコンは優れたペースとタイヤマネジメントを組み合わせて、ミッドフィールド勢のなかで最高のパフォーマンスを見せた。
レーシングブルズの戦略によってふたりのドライバーがポイント争いから外れるなか、オコンはアレクサンダー・アルボンとランス・ストロールを抜き、レースの後半はアンドレア・キミ・アントネッリを抑え込み、7位でフィニッシュした。その後、フェラーリ2台の失格によりオコンは5位に繰り上がり、彼とハースにとって非常に貴重な10ポイントをつかんだ。このポイントはシーズン末まで、大きな意味を持つことになるかもしれない。
■速さは健在、チームプレイヤーとしても優れているハミルトン
ルイス・ハミルトン(フェラーリ):スプリント予選1番手/スプリント1位/予選5番手/決勝失格
確かにハミルトンとフェラーリの中国GP予選と決勝のペースは期待外れだった。しかしハミルトンのスプリントでのパフォーマンスはあまりにも素晴らしかったため、上海でのベスト5ドライバーのひとりに入れるべきだと考えた。
7度のワールドチャンピオンは、スプリント予選で目覚ましい速さを発揮。フェルスタッペンとピアストリを実力で打ち負かし、彼の力に疑問を持っていた者が間違っていたことを証明してみせた。
さらに印象的だったのは、ハミルトンがシャルル・ルクレールよりも0.2秒も速かったことだ。ルクレールが予選でどれほど速いかは誰もが知るところであり、ハミルトンが決して簡単ではないことを成し遂げたのは明らかだ。スプリントを完全に制覇してみせたことで、競争力のあるマシンを手にしたハミルトンが、どれだけ素晴らしい結果を達成できるかを改めて示した。誰にも脅かされることなく勝利を飾ったハミルトンを、中国の観客が大声援で称えた。
フェラーリは本戦に向けたセットアップ変更において判断を誤った。それでもハミルトンはQ3でルクレールよりも速いタイムを出した。決勝では、ルクレールほどのペースがないと感じたハミルトンは、自らポジション交換を提案。彼が年齢を重ねるにつれ、完璧なチームプレイヤーへと成長したことを示す出来事だ。
■堂々とメルセデスと戦った角田裕毅
角田裕毅(レーシングブルズ):スプリント予選8番手/スプリント6位/予選9番手/決勝16位
上海での週末を通して角田が見せた走りには、スプリントレースで獲得した3ポイント以上の価値がある。
スプリント予選では、“ベスト・オブ・ザ・レスト”となり、メルセデスのアントネッリにわずか0.035秒差まで迫った。スプリントレースでは、アントネッリとノリスを堂々打ち負かし、6位を獲得した。
本戦の予選でも再びQ3に楽々進出。最後のラップでフェラーリの2台に割って入るかと思われたが、ターン12での小さなミスにより、コースアウトしてしまった。それでもポイント圏内9番グリッドからのスタートで、素晴らしいオープニングラップを走ってポジションを7番手まで上げ、アントネッリに挑戦した。
残念ながらチームが2台とも2ストップ戦略で走らせるという決断を下したことで、角田とチームメイトはポイント圏外に落ちてしまった。さらに角田のフロントウイングは構造的な破損に見舞われ、3回目のピットストップを余儀なくされ、もともと低くなっていたポイント獲得の可能性が完全に消滅した。
角田自身は、2週連続で、レーシングブルズの優れたチームリーダーになれること、レッドブルがリアム・ローソンを降ろすのであれば、有力な後任候補になり得ることを示したといえる。
[オートスポーツweb 2025年03月27日]