中古スマホの整備を自動化、キャリアやメーカーの“認定中古端末”を手掛けるAssurantの強みとは

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2025年03月28日 06:11  ITmedia Mobile

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モバイル事業では、中古端末の整備や端末の保証、サポートなどを展開している

 Assurantという企業をご存じだろうか。同社は家電や車両機器の保証、モバイル端末のサポートや保証、中古端末の整備、住宅向け保険などのサービスをグローバルで展開している。モバイル端末事業では、端末保証、下取り、中古端末の整備、アフターサービスや修理、カスタマーサポート、端末診断、ソフトウェア開発などを手掛けている。


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 Assurant Japanが3月27日に開催した事業説明会で、グローバルと日本における中古市場の現況や、同社が持つ“中古スマホ整備”の強みについて説明した。


●AIや機械を活用し、年間で2000万台の中古端末を整備


 中古端末事業は、Assurantの中でも大きなポジションを占めている。


 世界では中古スマートフォンの販売数は増加しており、2023年〜2024年は世界で販売されたスマートフォンのうち19%が中古端末だったという。Assurantのプレジデント、ビジュ・ナイア氏は、こうした中古市場の伸びが今後も続いていくとみる。米国では、下取りプログラムでユーザーに還元される金額が年々増加しており、2024年は45億ドルに達したという調査結果もある。


 ナイア氏は、ここ数年のスマートフォンは進化の幅が小さいことから、同じ機種を長期間使い続ける傾向が続いていた。しかし米国ではその傾向が2024年に変わり、第1四半期に発売された「Galaxy S24」や、第2四半期に発売された「iPhone 16」が好調に売れた事例を示す。その理由として同氏は「生成AIの機能が最新スマートフォンに搭載され、イノベーションを感じてアップグレードにつながったと感じている」と述べる。最新機種が売れれば古い機種を下取りに出す機会が増え、中古市場の循環につながる。


 Assurantは、欧米や南米など世界8カ所にデバイスケアセンターを持ち、日本を含む20以上の市場で事業を展開。最大で2000万台の端末を年間で処理しており、整備した端末の価値は、1年で40億ドル相当になるという。米国には2万4000平方メートルの敷地面積を持つ最新のデバイスケアセンターを構えており、2024年には1500万台以上の中古端末を出荷した。


 そんな同社が独自に構築しているのが、中古端末の整備を、AIや機械によって完全自動化するシステムだ。Assurantの完全自動化システムでは、本体のクリーニング、20項目以上の診断テスト、50種類以上の機能検査、個人情報の消去、梱包(こんぽう)やラベリングなどの工程を、全て機械が行う。修理が必要な箇所は人の手を使うが、大半の処理を機械が担うことで、処理速度が最大50%向上し、毎時600台の端末を処理できるという。端末の整備が完了するまで通常は50日かかるところ、Assurantでは平均10日間で完了することもアピールする。


 Assurantのシニアバイスプレジデント、ブランドン・ジョンソン氏は、自動化のクオリティーについて「世界の他のどのシステムよりも速く正確に、信頼性の高いものになっている」と自信を見せる。


●日本でもキャリアやメーカーが主な顧客 海外へ流れる中古端末も多い


 日本市場では、スマートフォンの保証サービスや中古端末の整備、家電や住設の保証サービス、アプリ開発を行っている。家電の取扱説明書をまとめた「トリセツ」というアプリを聞いたことがある人もいると思うが、このアプリはAssurant Japanが開発したものだ。


 中古事業については、キャリアや小売業者、メーカーなどから調達した端末を整備し、キャリアやメーカーの認定中古スマートフォン(CPO)として卸したり、海外で販売する事業者へ卸したりしている。具体的に取引をしているキャリアやメーカーについては非公表だが、キャリアの購入プログラムやメーカーの下取りプログラムなどで買い取った端末をAssurant Japanが整備し、キャリアが展開している認定中古端末や、メーカーの整備済製品として展開されているようだ。


 ナイア氏によると、日本で回収した端末は状態が良く、海外の中古市場でも高い評価が付くことが多いため、その多くが海外に流れているとのこと。なお、日本の端末は独自仕様としてFeliCaを搭載しているが、Android端末については、FeliCaの機能は削除した上で海外へ出荷しているとのこと。Assurant Japanバイスプレジデントの石谷匡弘氏によると、日本独自仕様が海外へ端末を展開する際の障壁にはなっていないという。


 中古業界で一般ユーザーにとって、Assurantの名前はなじみがないかもしれないが、これは同社が一般ユーザーに直接中古端末を販売するのではなく、キャリアやメーカーに対して販売する、B2B2のビジネスモデルを採用しているため。日本では子会社のTWG Japanが「My WIT」中古端末販売サイトを運営しているが、規模は大きくない。グローバルでも、キャリアやメーカーの中古事業を支える“裏方”に徹するというスタンスは変わらない。


●中古整備の完全自動化システムを日本にも導入する


 日本では中古スマートフォンの利用率が約6%にとどまっているという調査結果もあり、海外よりも利用が進んでいないのが現状だ。Assurant Japanとしては、中古端末整備の自動化システムを活用しながら、「中古市場を活性化させて、健全なものにしていく」と藤本潤一社長は話す。


 石谷氏は、日本市場でのミッションとして「端末処理コストを最小化すること」「最小限のコストで利益を最大化すること」「キャリアやメーカーのCPO、認定中古品に対して、高品質なものを安定した在庫で提供すること」を挙げる。日本でも「ビジョントンネル」と呼ばれる整備機材を導入しているが、海外同様の完全自動化までは至っていない。今後は、米国で実績のある完全自動化システムを日本にも導入し、「1〜2年の短期で実現したい」と石谷氏は意気込む。また、日本の中古端末に対して高い品質を求める事業者が多く、そうした日本独自の基準も定義して、完全自動化のプロセスに盛り込んでいく。


 なお、Assurant Japanではスマートフォンのバッテリー交換は行っていない。海外では、メーカーが認証したパーツをOEMから提供してもらい、バッテリーを交換も行っているという。一方、日本では、バッテリーを交換すると技適(技術適合基準)から外れて電波法に違反する恐れがあるため、バッテリーを交換するには、総務省が定めた登録修理業者に登録する必要がある。Assurant Japanは現時点では登録修理業者ではないが、今後は「そうした流れをスタートしていきたい」(藤本氏)とのことで、登録修理業者としてバッテリーの交換も行っていく意向もあるようだ。



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