近年、内蔵チューナーがないテレビである「チューナーレステレビ」が注目を集めている。文字通り、内蔵チューナーがなく、NHKをはじめとする地上波の受信ができないテレビを指す。
多くのモデルで、Google TV(Android TV)などのOSが端末にインストールされており、インターネット環境さえ確保できれば、YouTubeやTVerなどの動画配信サービスを視聴できる。
チューナーレステレビを家庭に導入すると、どのようなメリットとデメリットが生じるのか、また、チューナー内蔵テレビはどのような人にとって必要なのか、考えてみたい。
●チューナーレステレビとチューナー内蔵テレビ、何がどう違う?
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まず、チューナーレステレビとチューナー内蔵テレビの最大の違いについて触れておくと、地上波・BS/CS放送用チューナーの有無が挙げられる。
チューナーレステレビは、インターネットに接続できる環境において、YouTubeやTVer、Amazon Prime Video、Hulu、Netflixなどのネットコンテンツの視聴や、モニターとしての利用に適している。
一方、NHKや民放のテレビ番組を全てリアルタイムで視聴したい場合、チューナー内蔵テレビが必要となる。チューナーが内蔵されているため、別途チューナーを購入する手間や費用を省くことができる。
では、チューナー内蔵テレビでYouTubeやTVerなどが全く視聴できないのか? というと実はそんなことはない。
別途、ストリーミングデバイスを用意すればいい。例えば、「Google TV Streamer 4K」(1万6000円)、「Fire TV Stick」(画質がHDのタイプは4880円、4Kは6980円)などの選択肢がある。
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●チューナーレステレビは誰向けか――「3つのポイント」を確認
チューナーレステレビのメリットは大きく3つ。1つ目は、本体価格だ。YouTubeやTVerの視聴にはインターネット環境(光回線などがある環境)が必要だが、チューナーを内蔵しないことで製造コストが削減され、本体の価格が同サイズのチューナー内蔵テレビよりも安価だ。
例えば、ビックカメラ.comで確認すると、30〜43型の大型モデルでは、チューナーレステレビが2〜3万円台であるのに対し、チューナー内蔵テレビは10万円以上と、その価格差は歴然だ。チューナーレステレビのコストパフォーマンスがいかに高いかが分かる。
2つ目は、NHK受信料だ。チューナーレステレビは、NHK受信料の支払い義務が法的に免除されるため、年間約1万2276円(地上波のみ・12カ月前払いの場合)の節約が可能だ。
NHK受信契約の解約には、所定の届出書の提出が必要で、家電リサイクル券や廃棄・譲渡証明書などの証明書を捨てずに保管しておくと、NHKに「本当に受信料対象テレビがない」ことを証明しやすい。例えば、テレビを処分したり、売却したりした場合は、処分/売却の後にNHKふれあいセンターに問い合わせると必要書類が送付され、解約手続きを行える。
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そもそもNHKの番組を視聴しない人にとっては、受信契約にまつわる手続きが手間・負担となり、これこそがチューナーレステレビの選択理由になるはずだ。
3つ目は、導入のしやすさだ。アンテナの設置やアンテナの配線が不要で、電源とインターネット環境さえあれば設置できるため、導入しやすいといえる。
●チューナー内蔵テレビは「オワコン」なのか……?
……と、ここまで聞くと、「チューナー内蔵テレビはもう必要ないのでは?」と思うかもしれない。あるいは、「地上波放送は時代遅れで、すでに終わったコンテンツ(オワコン)なのでは?」という考えが浮かぶかもしれない。
しかし、実はチューナー内蔵テレビにも確かなメリットがある。
チューナー内蔵テレビは、どのような人にとって必要なのか。メリットを考えてみる。1つは、リアルタイムにテレビ番組を視聴したい、あるいはそのような視聴習慣がある人だ。
TVerでも、主にゴールデン・プライムタイム(19時頃〜23時頃)を中心とした時間帯の番組なら、リアルタイムに視聴できるが、全番組ではない。見逃し配信サービスを活用する手もあるが、放送後1週間程度の視聴期限や広告挿入の制約がある点には注意が必要だ。
もう1つのメリットは、災害時のテレビ視聴だ。「災害時の情報収集手段」を重視する人にとっても、チューナー内蔵テレビは必要だ。災害時に通信障害によりネットワーク環境が確保できなければ、いくらプラットフォームの多いチューナーレステレビでも太刀打ちできない。
ネット全盛期の現在は、需要が薄れているかもしれないが、チューナー内蔵テレビはブルーレイディスクレコーダー一体型のモデルも多く、録画後すぐにディスクに保存したい場合にも役立つ。
オールインワンをうたうチューナー内蔵テレビが多機能であることも、本体価格に少なからず影響しており、機能を求め使いこなす人にとってはメリットといえるため、チューナー内蔵テレビの全てが悪とは言い難い。
●どちらを取るか悩ましいテレビ選び――「コスト」か「機能」か
このように、ネット動画配信サービスが全盛の現在、チューナー内蔵テレビの必要性が薄れてきたように思われるが、テレビ放送の全ての番組のリアルタイム視聴には欠かせない存在で、大規模災害によってネット環境が絶たれれば、チューナー内蔵テレビの利便性が再び注目されそうだ。
とはいえ、最初はチューナーレステレビを導入したものの、必要に迫られて後から追加コストを払い、チューナーやアンテナを取り付けることは可能となる。
チューナーレステレビとチューナー内蔵テレビにはそれぞれメリットがあり、一概にどちらがベストとはいいづらい。チューナーレスかチューナー内蔵かで迷った場合は、 「本当に地上波を観る機会があるのか?」 を基準に考えるといいだろうが、利用環境や予算の考慮も忘れずに選びたい。
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