神木隆之介『海に眠るダイヤモンド』で芝居に変化 “最強トリオ”野木×塚原×新井とのタッグは「初めて」の連続だった

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2025年03月28日 09:10  クランクイン!

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テレビドラマ『海に眠るダイヤモンド』場面写真  (C)TBSスパークル/TBS
 「2024年12月度ギャラクシー賞月間賞」を受賞するなど高い評価を受けたテレビドラマ『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)。本作は、『アンナチュラル』など数々のヒット作を手掛けてきた、野木亜紀子(脚本)×塚原あゆ子(監督)×新井順子(プロデューサー)のヒットメーカーたちによる初の日曜劇場であり、俳優・神木隆之介が日曜劇場初主演を果たしたドラマだ。神木は一人二役に挑み、1950年代の端島に生きる荒木鉄平と、現代の東京で無気力に生きるホストの玲央を見事に熱演。そんな神木と、野木、塚原、新井というファン垂ぜんの四人に、今回なんとインタビューが実現した。野木×塚原×新井との仕事を、「これまでにない」や「初めて」といった言葉で振り返る神木。そんな新鮮味のある撮影現場は、神木の芝居にも変化をもたらしたようだ。

【写真】『海に眠るダイヤモンド』を振り返る

■神木が語る“史上最強の作品を作る三人”との仕事

――神木さんは、野木亜紀子さん脚本、塚原あゆ子さん監督で、新井順子さんプロデュースの作品に出演されるのは初めてのことかと思います。このお三方の作品に出演しての感想はいかがですか?

神木隆之介(以下、神木):お三方が手掛けたドラマは放送されるたびに、面白くて話題になっていたので、“史上最強の作品を作る三人”だと思っていました。撮影前は、しっかりついていけるかが不安だったんですけど、もしも必死についていくことができたら、僕自身のことを「自分は大丈夫だ」って思えるのかもと思ったのもあり、今回引き受けさせていただきました。

――塚原さんの演出はいかがでしたか?

神木:塚原さんの演技に対しての提案も、これまでにないもので、例えば「このシーンは、鉄平がもうちょっと悲しかったらどうですか?」といった感じで伝えてくださるんです。役者にとって、それって答えがなくて無限の選択肢があることなので、「うわっ」ってなるんですよね。

新井順子(以下、新井):宿題をもらうみたいな感じなんですかね。

神木:そうですね。一応、考えてもみるんですけど、これは現場に立ってやってみないと分からないなってことに落ち着きました。多分、ほかのキャストの皆さんも、きっと國村隼さんであっても、「今までつかんだことのないものをつかんでやろう」という気持ちになったんじゃないかと思います。

野木亜紀子(以下、野木):塚原さんには、直接的に表情を指定したくないという思いとかがあるんですか?

塚原あゆ子(以下、塚原):そこは無自覚でしたねー。どっちかっていうと、そのシーンの表情を指定できるほど芝居を知っているわけじゃないから、正解が私の中にないんですよ。ただ、もうちょっと前のシーンからの流れをくんだ方がいいとか、そういうことがあるんですよね。

――野木さんの脚本に関してはいかがでしたか?

神木:同じシーンに何人かキャラクターがいる時、だいたいの作品では、うれしいシーンなら全員うれしい気持ちを持ってるものなんですよ。でも、今回初めての感覚だったのが、全体的にはうれしいシーンであっても、ある人にとっては悲しかったり、ある人にとっては、うれしいのに切なかったり寂しかったりして、全員が違う思いを抱いて、そこに共存しているということがあったんです。それは、脚本には逐一書いてはいないので、現場に行ってみないと分からないんですけど、それが難しくもあり、すごい脚本だなと思うところでした。

――今回、神木さんを日曜劇場の主役に迎えるということで、お三方は、新たな一面を出したいという思いがあったのではないかと思います。

塚原:今回は二役でしたからね。だから、その二つのキャラクターが近くならないようにということは考えました。どちらかというと、玲央のほうがこれまで見たことのない神木さんの姿だったのではないかと思います。始まる前に、私と新井さんと野木さんの三人で、神木さんの透明感のある色気を引き出したいなという話はしましたね。

野木:今まで見たことのないキャラクターを演じてもらおうと思って書いてはいたんですけど、玲央と鉄平って、別の人間であるけれど、その上で、だんだん終わりに向かって近づいていくという役なので、それを演じるのってすごく難しいことだと思います。でも自然に演じてくださっていましたね。

塚原:撮影が順撮りではないので、そこはちゃんと計算してくれて、最終回ではちゃんと「第三形態」になってましたね。

野木:面白かったですね、鉄平でもなく玲央でもなく。

神木:うれしいです! それまでは、ウィッグをかぶったら玲央の気分になれていたんです。でも最後は、ウィッグはかぶっていないけれど、気分は玲央にならないといけないので、まあ玲央で演じればいいのかなって。

――見ていて、印象に残った神木さんのシーンはありますか?

新井:第8話で、自分の働いているホストクラブが風俗店に女性をあっせんしている証拠を、玲央が警察に持っていくシーンがあるんです。玲央は、自分もその店に協力していたので「逮捕してください」って言って、一日警察で過ごすんですけど、次の日、迎えに来たいづみさん(宮本信子)に「あなた警察に泊まるのが好きなの?」「なんだか楽しそうねえ」って言われて、笑うんです。そのシーンの笑顔を見て、スタッフの女性が、「さっきまでと何かが違う。いい表情だ」って言って、泣いていましたね。

神木:第8話でいろんなことがガラっと変わるので、やりやすいシーンではありましたね。

――神木さんは、この作品に出演しての変化はありましたか?

■野木亜紀子も驚いた“告白シーン”の裏側

神木:僕は今まで俳優をしてきた中で、芝居がだんだん自分の想像の範囲内にあるように感じることがあったんです。だいたい、こういう時は、こういう顔をしてるんだろうなあという予想がついちゃっているような。でも今回の現場では、自分で想像できないお芝居ができたんじゃないかなって思いました。特に、塚原さんの現場って、演じる人が同時にしゃべることがあるんですよ。日常では、そうやって同時にしゃべることってあるのに、お芝居ではあまりやらないことだから、それが新鮮で。だからお芝居の中で、自分が普段の生活でやっていることを自然に出す感じじゃないとダメだって思いました。そんなこともあって、特に玲央役をやっている時は、現代に生きるホストのドキュメンタリーを撮られている気分で演じていますって塚原さんにも言っていたんですよね。それと、第6話の告白のシーンで、「朝子(杉咲花)が好きだ」って言う時、僕があんなハイトーンでセリフを言っていたとは思っていなくて、自分でチェックしてみてびっくりしたんですよ。

野木:あれは、声優で培ったテクニックかと思ってた!

神木:違います、違います!

塚原:上ずってたね。

神木:そうなんです。鉄平はしゃべるときに、あんな柔らかい声は出さないので、まったく予想外で。これも自分が出会ったことのない新しい自分でしたね。

――その第6話の告白のシーンでは、神木さんもアイデアを出されたそうですね。

神木:鉄平自身はそこまでロマンチックな人ではないから、どういうお芝居のアプローチをしたらいいかなって考えた時に、恋愛リアリティー番組の『あいのり』っぽい感じがいいんじゃないかと思って、それを塚原さんに提案したら「いいんじゃない?」って言ってもらえたんです。

塚原:第6話って賢将(清水尋也)と百合子(土屋太鳳)の告白シーンもあるので、ダブル告白なんですよ。しかも、順番でいうと、後半になる鉄平と朝子のシーンのほうが不利で。

野木:賢将と百合子の場合は、被爆の話も背負っているので、重みがあるんですよ。その後の鉄平と朝子の場合は、プロポーズだかなんだか曖昧なシーンですからね。

神木:そういうこともあって、お話しさせていただいたんです。

塚原:あのシーンはね、カメラマンに下手くそに撮って! ってお願いして。

神木:『あいのり』ってスタッフさんが手持ちでカメラを回しているので、画面が揺れたりするんですよね。その感じをやってくださって。

新井:実際は、すごく長いんですよね。6分くらいあるんです。

野木:どんだけ時間かけたの!?

新井:スタッフも、いつ好きって言うんだろうって思いながらモニターを見ていて。そこもBlu-rayの特典映像でフルで入れられたらいいなと思ってるんですけどね。

――野木さんは、できあがった告白シーンを見られていかがでしたか?

野木:思っていたよりもずっとピュアだったので、びっくりして「ほほー、そうくるかー」ってなりました(笑)。台本はやりようによってはコミカルにもなる可能性もあったんですね。それがまさか、純度120%の感じになるとは…。だって鉄平は告白しながら泣いちゃうんですよ。さすがに私も脚本に「鉄平、告白して泣く」とは書けない。もし書いていても困ると思いますし。この「泣き」については、オーディオコメンタリーで神木さんが初公開の話をしてくれて面白かった。「発想のきっかけがそれ!?」という驚きのエピソードだったので、ぜひBOX特典で聴いてもらいたいですね。

――神木さんは、4月18日に長崎でトークイベント「神木隆之介トークイベント2025〜神木SA in長崎〜」を開催されるそうですね。

神木:このドラマが終わってからは、まだ長崎に行かせていただいていないので、感謝の気持ちを伝えたいなと思って計画をしました。ドラマにもリンクしたような内容になればと思っていますし、もしファンの方からリクエストとかがあったら教えてほしいです。長崎の方々に少しでも喜んでいただけたらうれしいです!

(取材・文:西森路代)

 ドラマ『海に眠るダイヤモンド』Blu-ray&DVDは3月28日発売。
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