“義手のギタリスト”として活躍中のLisa13さん 先天性四肢障害により、生まれつき右手首から先がないLisa13さん。音楽一家で育ち、小学6年生の頃からギターを始め、現在は“義手のギタリスト”として活躍中。ソロやバンドでの活動を行いながら、『東京2020パラ五輪』の閉会式でも演奏を披露した。そんなLisa13さんが投稿したギター演奏動画が反響を呼び、「神の右手じゃん」「カッコ良すぎる」「ライブ観てみたい!」などと、さまざまなコメントが寄せられている。ギタリストになろうと思ったきっかけや義手のギタリストとして活動することへの想いなどについて、投稿者のLisa13さんに聞いた。
【写真】スタイル抜群!モデルとしても活躍するLisa13さん、無邪気にはしゃぐ姿も
◆“義手ピック”を製作し、練習の日々…「できないことが人より多い分、努力をしなさい」
――生まれつき右手首から先がない先天性四肢障害とのことですが、幼少期はつらいこともありましたか?
【Lisa13さん】 保育園で、ほかの子に右手のことを聞かれたことがありました。「変だ、おかしい」というわけでもなく、ただ不思議な様子で、「どうして右手がないの?」「どうやったらそういう形になるの?」とストレートに質問をされました。それに対して私は、「生まれつきだからだよ」と答えていたみたいです。私自身は幼少期のことなので記憶にないのですが、両親から聞きました。
――子どもだからこそ、ストレートに聞いてしまうのですね。
【Lisa13さん】 いまでこそSNSが普及したネット社会なので、子どもも障害について目にする機会はあるかもしれません。当時は相手からすれば、そもそも「“生まれつき”って何?」というところからのスタートなので、つらいというよりも面倒なことだと感じていました。自分の右手がどうのではなく、そういった疑問への対応が面倒でした。
――ご家族はどのようなサポートをしてくれましたか?
【Lisa13さん】 両親には、「できないことが人より多い分、努力をしなさい。Lisaのやりたいことは全てサポートをするから」と言われてきました。いまも変わらず私の活動に協力してくれて、とても感謝しています。
――「義手のギタリスト」として活動されていますが、どのようにしてギターの練習をしていたのでしょうか?
【Lisa13さん】 祖父がハワイアンバンドでギターを弾いていたので、小さい頃からギターに触れる機会がありました。小学6年生の頃、お年玉でギターを買い、“義手ピック”を父と製作し始めました。“義手ピック”が形になる前は、胃薬の箱の角でギターを鳴らしていました。そして、ギターを箏のように横に置いてコードの練習をしていました。
◆母のCDコレクションがきっかけで…「hideさんや布袋寅泰さんのような華やかなアーティストになりたい」
――初めて弾いた曲は?
【Lisa13さん】 X JAPANやhideさん、布袋寅泰さんのバンドスコアを買い、まずはhideさんの「Rocket Dive」や「ピンクスパイダー」、「DICE」を練習しました。いまは家にないガレージで、大きい音で家族でセッションしたことが思い出です。
――“義手ピック”はどのようにして製作されたのですか?
【Lisa13さん】 通常、ピックは指で持つものですが、私には指がありません。当時はギターを弾くための義手の情報もなかったため、自分で作るしかなかった。家族でホームセンターに行き、製作に使えそうなアイテムを組み合わせ、ピックの当たる角度やデザインをああでもないこうでもないと父と母と相談しながら決め、最終的に父が形にしてくれました。
――いろいろと意見なども寄せられるみたいですね。
【Lisa13さん】 最近、フォロワーやファンの方ではなくネットの通りすがりの方に、「もっといろいろ装飾して派手な義手にしたら?」「ドリルをつけたらバズるんじゃない?」といったような意見をいただくことが増えました。ですが、演奏する際の重さやフィット感、使用シーンを選ばずファッショナブルかどうか、私の演奏スタイルや楽曲に合うかなど、全て私の好みで考えて作っているので、そういった意見は面白いとは思いますが、実践には至っていません。素敵だなと思ったアドバイスは、ありがたく私の引き出しにしまっています。
――お母様のCDコレクションにあったhideさんと布袋寅泰の作品がきっかけとなり、ギタリストを目指したそうですが、どういったところに惹かれたのですか?
【Lisa13さん】 hideさんと布袋寅泰さんに共通して感じたことは、ギターを持ってただ立っているだけでとにかく目に留まる。彼らにしかない存在感とカリスマ性、そしてオシャレさ。楽曲面では、hideさんが見せたい世界の全てに惹かれ、布袋さんのギラッとしていながらスマートでスタイリッシュなギターフレーズに気分が上がりました。ギターを抱えて弾きまくる、技術にこだわるタイプというよりは、彼らのような華やかなギタリスト、パフォーマー、アーティストになりたいと思いました。
――近年は3人に1人が推し活をしていると言われています。Lisa13さんは、hideさんや布袋寅泰をきっかけにギターを始めました。「推しの存在」というものをどのように捉えていますか?
【Lisa13さん】 いま私がファンの方から“推し”ていただけているように、私もこうなりたい、ああなりたいというロールモデルがあって、それも活動のモチベーションを維持する方法の1つになっています。「推し」という言葉よりは、ファッションやパフォーマンスを参考にしたり、ロールモデルにしているバンド・アーティストと言った方が、私のスタンスには近いかもしれません。
◆『パラ五輪』閉会式がきっかけで“義手ギタリスト”と明記を…新しいことを始めるきっかけになれたら
――ギタリストになることを諦めずに続ける秘訣やモチベーションを教えてください。
【Lisa13さん】 両親のサポートがあって、「とにかく好きなことができて楽しい」という気持ちがあります。そして、私を応援してくれているファンの方の声、ギターを始めた頃に抱いた「hideさんや布袋寅泰さんのようになりたい」という強い気持ちが、“1つのことをやり続ける”ということにつながっています。
――ソロやユニットなど、現在はどのような活動をしているのでしょうか?
【Lisa13さん】 ソロでは自分の好きなように楽曲制作、復興支援テーマ曲の制作、ファッションブランドのキービジュアルやイメージモデルをしています。ユニット「GAROCKTOKYO」では、シンガーのMisakiと私で「HEAVY POPS」という独自のジャンルで国内外でライブやイベントに出演しています。作詞作曲やヴィジュアルも全て自分たちで手掛けています。これからもっとたくさんの方に目に留まるよう、大規模なフェスの出演、楽曲タイアップなどを目標にしています。
――ほかには何かありますか?
【Lisa13さん】 2013年から始めた「Moth in Lilac」という激しい音楽性とゴシックな世界観のバンドが、2024年に新メンバーを迎えて再始動しました。タイやイギリスなど、多国籍なメンバーで構成されています。いろいろな場所で演奏やイベントに出演できればと思っていますし、音源リリースも楽しみにしてもらえたらうれしいです。
――SNSではご自身のことについて発信されています。なかには心無い言葉を投げかける人もいるかもしれませんが、どのような想いで投稿をしていますか?
【Lisa13さん】 「障害アピールをしている、売りにしている」と言われることもありますが、バンドを始めた当時は、義手や障害について語ったことはありませんでした。ですが、『東京2020パラ五輪』の閉会式でギターを演奏させていただいてから、障害のある子を持つ親御さんから「子どもが将来やりたいことを見つけたら、Lisaさんの両親のようにサポートできる親になりたい」とポジティブなメッセージをもらうようになりました。それから“義手ギタリスト”とプロフィールに書き始めました。
――ご自身の活動を通してどのようなことを伝えたいですか?
【Lisa13さん】 障害のある方でスポーツや音楽、義足モデルをやっている方と出会うことはあります。ですが、私のようなスタイルや活動、音楽性の方にはまだ出会ったことがないので、新しいことを始めるきっかけや気づきを与えられたらいいなと思っています。
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