藤原竜也が挑む「マクベス」 「1日1日、壁を突破することが目標」【インタビュー】

0

2025年03月29日 08:10  エンタメOVO

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

エンタメOVO

藤原竜也(写真:藤本和史)

 2024年5月にスタートした、吉田鋼太郎が芸術監督を務める【彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd】。待望の二作目となる「マクベス」が、藤原竜也を主演に迎え、5月8日から上演される。藤原に初めて挑む「マクベス」への思いや吉田とのクリエイトについて話を聞いた。




−今回、(吉田)鋼太郎さんに背中を押してもらって出演を決めたそうですが、具体的にどんなやりとりがあったのですか。

 鋼太郎さんとは「アテネのタイモン」や「終わりよければすべてよし」でご一緒して、「じゃあ、次はどうしようか。何かやりたいのある?」と聞かれたのですが、そのときは軽はずみなことも言えなくて。やはりシェークスピアは背負うものが大きいですから、避けられるものなら避けて通りたいものなんです。ただ同時に、今年、43歳になって、自分を疑いながらも次のステージにいくためには苦労をしなくてはいけないとも思います。それで、鋼太郎さんの「マクベス」に決まりました。作品を全て自分が背負うわけではないですが、僕たちは台本を手に取る前の時間が非常に大切で、手に取ってしまったらそこからは修行のような生活が始まり、常に何かがスタートするわけです。今回、「マクベス」の台本を手に取ったとき、ドローンで現在地から瞬間的に世界が広がっていくような感覚があり、良い年齢でこの役と出会えたなと感じています。

−「アテネのタイモン」「終わりよければすべてよし」という2作品を経て、再びシェークスピア作品で鋼太郎さんとご一緒することへの思いはいかがですか。

 やはり「マクベス」は特別な本で、見る方も演じる方も非常に充実した空間、時間になると思います。ただ、僕個人としては、シアター・コクーンが好きで(笑)。

−以前、埼玉への愛を語っていらっしゃいましたが(笑)?

 そうですね。コクーンは渋谷という若者の多い、殺伐とした街でシェークスピアや歌舞伎をやっているというのが非常に魅力的だなと(笑)。ただ、僕は埼玉県で生まれましたし、彩の国さいたま芸術劇場によってもう一度、地域が活気付くというのもすてきなことだなと思います。蜷川(幸雄)さんが(初代の)芸術監督をされたことで、埼玉のあの地に世界各国からアクターもお客さんもどんどん来て、高いレベルの芝居をして立ち上げた。(彩の国さいたま芸術劇場に行くために使う)首都高5号線は特別な道路だと役者仲間とも話しますし、そこにまた通えるというのは特別な思いがあります。楽しいと簡単には言えない、苦しみの方が多い稽古になると思いますが、鋼太郎さんと一緒に今までになかったようなシェークスピアの軽やかさを感じられるものを作り上げられればと思います。

−男性として、一人の役者として、マクベスという男の魅力と彼の問題点をどう感じていますか。

 僕にはまだまだ「マクベス」は分からないというのが正直なところです。いつも(シェークスピア作品は)分かっていないんです。その瞬間瞬間を生きてみて壁を突破します。1日1日、壁を突破することが目標です。「マクベスとはこうなんだ。シェークスピアというのはこういうことなんだ」ということは僕の口からは言えないですし、言いたくない。ただ、(シェークスピア作品に)絶対的に時代がついてきてしまっているのだと感じています。人間のしている行動は、全てにおいて同じことの繰り返し。われわれはちっとも進歩していないのではないかということをうまく突いているので、そこがなんとも言えない魅力なのかなと思います。

−では、鋼太郎さんの演出の魅力はどこに感じていますか。

 鋼太郎さんらしい的確に丁寧な演出をつけてもらえるので、われわれとしてはやりやすいです。尊敬していますし、シェークスピア作品の演出家としてこの方の右に出るものは今、日本にはいないんじゃないかなとも思います。ただ、僕が役者として思うのは、失礼な言い方ですが、鋼太郎さんも役者としてこれからもワンステップアップしなくてはいけない。鋼太郎さんにもっとビシバシ演出してくれる方が欲しいなと僕は思います。ご自分もやっていくべきだと。今、そういう方がいないことは鋼太郎さんも寂しいのではないかなと思います。演出に固まらず、演者として厳しく的確な指示を出してくれる演出家と巡り合ってほしいなと思いますが、鋼太郎さんの演出は面白いです。

−なるほど。

 それから、これは自分が間違っているのかもしれませんが、「テンペスト」でも「ハムレット」でも「マクベス」でも、もっと人間の生命力やエネルギーが僕は欲しいんです。例えばイギリスで上演しているときは、もっと高級に作られているんですよ。「マクベス」の本質的なもの、人間の泥臭さみたいなものがあっても良いのではないかと思います。これは僕が日本人だから思うのかもしれません。違う方向からも「マクベス」を見てみたいんです。ただ一方で、(イギリスで上演されているような)ジェントルな気品のある攻め方をしたほうがやはり伝わるのではないかという思いもあるので、そのさじ加減の難しさがあるなと思います。それをつかんでいきたいです。

−今回、土屋太鳳さんをはじめ、幅広い豪華なキャストがそろっています。共演者の皆さんについても教えてください。

 太鳳ちゃんが今回、この座組に入ってくれたことは非常に光栄なことですし、ありがたいなと思います。きっと太鳳ちゃんにとってもすばらしい、人生の経験値になるのではないかなと。それから、この作品の魅力の一つは、8人の亡霊だと思います。それを見に来るだけでもいいのではないかと思うほどです。鋼太郎さんがどんな演出プランを持っているのか分からないですが、8人の亡霊が行列を作って入ってくるシーンは相当なプレッシャーだと思いますし、演出の腕の見せどころだと思います。

(取材・文/嶋田真己)

 彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.2「マクベス」は、5月8日〜25日に彩の国さいたま芸術劇場 大ホールほか、宮城、愛知、広島、福岡、大阪で上演。


彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.2「マクベス」

もっと大きな画像が見たい・画像が表示されない場合はこちら

    ニュース設定