老舗アイドル誌『WiNK UP』休刊 月刊アイドル誌は『Myojo』『DUeT』のみに 識者が今後を考察

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2025年04月01日 08:00  リアルサウンド

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SixTONESが表紙『WiNK UP』2025年6月号(ワニブックス)

 1988年に創刊した老舗アイドル雑誌『WiNK UP』(ワニブックス)が、5月7日発売の2025年6月号をもって休刊する。創刊号は男闘呼組が表紙を飾ったように、STARTO ENTERTAINMENT(旧ジャニーズ)を中心に多くのアイドルたちの魅力を発信してきた。37年と長きにわたって愛されてきた雑誌だけに、SNSでは青春の思い出とともに別れを惜しむ声が上がっている。


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◾️紙媒体からデジタルコンテンツへ、変わりゆく推し活の形


 休刊する理由については「昨今の社会状況の変化や価値観の多様化」との説明があった。実際、雑誌を取り巻く状況は厳しさを増しているのは、なんとなく感じていたところ。しかし、出版科学研究所によると、2022年の雑誌の売上は1997年のピークに比べて3割にも満たないそうで、こうして数字で示されるとその苦境ぶりがリアルに感じられる。


 たしかに、雑誌の値段は上がり続けるなかで、SNSなど無料で推しの情報を入手できる環境へと変化していったのも大きい。もちろん近年では、アイドル雑誌もデジタル版の配信をスタートさせ、スマホやタブレットで楽しみたい層へのアプローチも進めてきた。しかし、STARTO ENTERTAINMENTが長らくWebへの顔写真露出に慎重になっていたことから、電子書籍での購読がファンの間になかなか定着しなかった部分もあったように思う。


 加えてアイドルたちへの取材から、編集、印刷、全国の書店への発送……とタイムラグがある雑誌に比べて、デジタルコンテンツはリアルタイムで更新されるメリットも。アイドルたちを応援する「推し活」の形も、雑誌を隅々まで読み込む時代から、最新情報を追うことに忙しい時代へと変化していくのも自然なことなのかもしれない。


◾️「5大アイドル誌」月刊誌を維持するのは2誌のみに


 そもそも幅広い情報に触れられるテレビより、興味のあるコンテンツにアクセスしやすい動画配信サービスが人気を博しているように、雑誌も様々な人物が載っている1冊を買うことに躊躇する風潮もあるようにも思う。だが、一方で雑誌にしかない魅力というものがあるのもたしか。先述した推し以外のページが載っていることも、新たな推しを見つけるチャンスになっていた。特に、アイドル雑誌は人気絶頂のスターを特集するのと同時に、これからデビューを目指すジュニアをピックアップしていく役割も大きかった。その成長を見守り、数年後には考えられないような組み合わせのお宝ページに、なんてこともアイドル雑誌を購読する楽しみのひとつ。


 また、毎月テーマに沿って撮影された写真も、ヘアメイクやカメラマンによる1つの作品として見応えがあるもの。アイドルがSNSでアップする素が映し出される自撮り画像も、プロによる「盛れている」写真があればこそ、そのどちらの魅力も楽しめると言えそうだ。今回休刊を発表した『WiNK UP』についても、読者から写真に対する評価が高かった雑誌。ふわっとした自然体な表情を捉えた写真を好む声が多く、熱い支持を獲得していた。発行元のワニブックスが写真集を多く出版していることから、グラビアを得意としていたように思う。また、表紙の構図についても粋な演出が見られた。


 4月号(3月7日発行)では、なにわ男子が初めて7人で初表紙を飾ったときのポーズを再現。5月号(4月7日発行)でも、SixTONESが過去のポーズを再現し、撮影時にはメンバーからも「懐かしい。エモいね!」といった声が聞こえたと公式Xでポストされている。そんなふうに、アイドル雑誌の中にも「グラビアならここ」「テキストならここ」と強みや個性を感じていた読者も少なくなかったはず。だが、かつて「5大ドル誌」とファンから親しまれていたアイドル雑誌のうち、月刊誌を維持するのは集英社の『Myojo』とホーム社の『DUeT』のみになってしまった。


◾️アイドル雑誌の形を更新する企画力と企業体力


 昨年7月には1992年創刊の麻布台出版社の『ポポロ』が9月号(2024年7月22日発行)をもって休刊。さらに、1984年創刊のワン・パブリッシングの『POTATO』も今年5月号 (3月22日発行)より月刊誌から隔月発売のA4ワイド判に変更されるなど変革の時を迎えている。


 月刊誌を維持している『Myojo』は、1952年創刊と草分けとして牙城を築いてきた、いわばアイドル雑誌の王者。次期デビューを占う読者投票の「ジュニア大賞」は業界にも大きなインパクトを与えてきた。さらに、読者層がファンであるという信頼のもとで綴られるディープなロングインタビュー、連載で築かれた関係性があればこそ実現する海外や富士登山などの大型ロケ撮影、アイドルの希望を叶えるスペシャル企画に、長期連載をまとめた本の出版……と、王道アイドル雑誌としての道を切り拓いてきた。


 一方、1986年創刊の『DUeT』もカードピンナップや綴込ピンナップなど、手元に残せる付録に力を入れてきた印象。さらに、昨年11月には別冊として『Duet LUXE』を新たに発行しており、30歳で卒業と言われてきた大人アイドルたちを特集するという新たな試みも。4月16日には『Duet LUXE vol.2』が発売されるが、その表紙Bには、timeleszのオーディション番組『timelesz project』(通称『タイプロ』)で注目を集めた寺西拓人が起用されているのも興味深い。寺西はすでに30歳と大人になってからのブレイクということもあり『Duet LUXE』にハマった形だ。


 ちなみに『Myojo』も『DUeT』も集英社グループという意味では、やはり大手出版社の財力が生き残りのキーとなっていることは否めないようだ。他ジャンルの雑誌でも多くのアイドルがその魅力を発信していることもあり、アイドルの売れ方も、ファンの推し方も多様な時代となってきた。今後は、ますますアイドル雑誌の形を更新し続ける企画力と、それを実現できる体力が求められている。


(文=佐藤結衣)



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