写真 2006年にボードゲーム専門店「すごろくや」を創業した丸田康司さん。ロシア発の人気カードゲーム『ナンジャモンジャ』を累計国内出荷150万個以上の大ヒットに導くなど、新たなボードゲームの企画開発やイベントの開催、店舗でのボードゲームの選び方のアドバイスを行い、初心者やファミリーなどの幅広い層を対象にしたボードゲームの普及に尽力しています。
前回は丸田さんに、ボードゲームで育まれる2つの力(「社会性」と「自分の頭でうまくいく方法を考えること」)や、親が子どもの年齢や成長に合わせたボードゲーム選びをすることが大切だというお話を聞きました。
今回は、年齢別のおすすめボードゲームや、その魅力について聞きました。ぜひ、お子さんにボードゲームを選ぶ時の参考にしてみてください。
◆親子でボードゲームを楽しむコツ
――子どもと一緒にボードゲームで遊ぶときに気をつけたほうがいいことはありますか?
丸田康司さん(以下、丸田):子どもが自分達だけで社会性を保って遊ぶ場を作るのは難しいので、親子で遊ぶようにしていただきたいです。今回ご紹介するボードゲームは、基本的には親御さんが一緒に遊ぶことを前提にしておすすめしています。
また、最近は大人でも説明書を読むのが苦手な人が多くいます。ボードゲームは最初にルールを理解しなければなりません。そのためには、論理的に考え、必要な情報と重要ではない情報を見分けて取捨選択をする力が必要です。しかも、ルールを子どもに説明しなければいけないので、ハードルが高いと感じる方もいらっしゃると思います。
でも難しく考える必要はありません、まずはお子さんと一緒に説明書を読んでみるといいと思います。1人で背負い込んでしまうと失敗することが多いので、家族みんなでゲームをやって「この場合はどうするんだろうね?」と遊びながら徐々に理解していけばいいのです。その部分も含めて「自分が先導しなきゃ」ではなく「みんなで楽しむ場を作るんだよ」という心持ちで始めてみるといいのではないでしょうか。
◆【3歳〜大人】『イチゴリラ』(2〜6人用)
所要時間:15分 ルール難度:1.すぐわかる
「すごろくやで作った未就学児もできるカードゲームで、日本では『神経衰弱』として知られるような、カードのペア合わせをするゲームです。ヨーロッパでは『メモリーゲーム』と呼ばれる定番のキッズ向けゲームで、カードの数は大抵の場合24枚くらい。絵柄も動物やアナ雪など色々な種類があります。日本ではそれを52枚もあるトランプで無理やりやっているので、『神経衰弱』という名前の通り、つらいイメージが付いてしまっています。
『イチゴリラ』は、メモリーゲームを少し進化させたゲームです。例えば『サンタ』のカードは3枚入っており、最初に『サンタ』をめくった場合は3枚連続でサンタをめくれたらもらうことができます。他にも『にんじん』は2枚、『ヨット』は4枚、『悟空』は5枚など、絵柄によって揃えるべき枚数が違います。『イチゴ』のカードは1枚だけなので、最初にめくった時点でもらうことができます。
ハードルの高い『悟空』は最初から諦めて、『サンタ』だけを狙って記憶するなど、自分なりの作戦を立てることができます。しかし、『悟空』と『ゴリラ』など、似た絵柄のカードがあったりするので混乱してしまいます。
また、大人は『5枚は無理だ』と諦めてしまうけれど、子どもは気にせずどんどんめくるので意外に取れたりすることもあって、盛り上がると思いますよ」
◆【3歳〜大人】『パカパカお馬』(2〜4人用)
所要時間:10分 ルール難度:1.すぐわかる
「すごろくのような形式のゲームです。”牧場で遊びすぎたので早く厩舎に帰らなければいけない”というストーリーがあります。
特殊なサイコロを振って、自分の馬をゴールの厩舎に進めていきます。しかしゴールするためには、それぞれに与えられたパズルボードに、7つの道具を全て揃えて入れなければなりません。そのため、サイコロを振ったときに、コマを進めるのか、アイテムを取るのかを選択しないといけないんです。どのタイミングでどの選択をするのかは、大人でも迷うところです。
最初、子どもはどんどんコマを進めるのですが、大人がアイテムを集めているのを見て、『進めるだけではなくアイテムを効率的に集めないといけないんだ』と気づくようになります。すごろく、パズル、アイテム集めという子どもの好きな要素を集めた鉄板のゲームです」
◆【4歳〜大人】『ナンテッタ』(3〜7人用)
所要時間:10分 ルール難度:1.すぐわかる
「カルタと似ているのですが、読み札がありません。絵札は新井洋行さんという絵本作家さんが描かれていて、イラストがとても可愛いです。
15枚の絵札を取り合うのですが、皆で1人ずつ順番に読み手をします。読み手は、『これを当ててほしいな』という絵札を心の中で決めて、そのイラストに合ったセリフを考えて言います。例えば、パンダとペンギンが踊っている絵札なら『ブルーノ・マーズ最高だね〜!』とか(笑)。文字が読めなくてもできますが、情景を表現する語彙が必要で、感受性が育まれるゲームです。
最初は、『パンダが踊っていて……』とイラストを説明するだけでも大丈夫です。大人がちょっと気の利いたことを言ってあげると、子どもが『次は自分もこう言ってみよう』と段々と面白いセリフを考えられるようになっていきます。頭の使い方が楽しいゲームです」
◆【6歳〜大人】『ゆっくり行こうぜ!』(2〜4人用)
所要時間:15分 ルール難度:2.わかりやすい
「小学校1年生くらいになったら、ファミリーでやっておくべき名作ゲームです。
カタツムリのコマが野菜畑のコースを進んでゴールを目指す、すごろく的なゲームですが、先にゴールした人から脱落させられるんです。つまり、もっともゆっくり進んで最後までコースに残った人が勝者です。
それぞれ野菜が描かれた手札を持っていて、手札を出すことでコース上の野菜のマスまで飛ぶことができます。また、他の人を押して進めさせるカードがあったりするので、『ちょっと押さないでよ!』とやり取りが生まれたりします。どうすればゆっくり行けるのか、考える力として年齢的にちょうどいいゲームだと思います。しかも所要時間が15分くらいなので、飽きずに楽しむことができます」
◆【6歳〜大人】『サイトシーイング』(2〜4人用)
所要時間:25分 ルール難度:2.わかりやすい
「これは絶対におすすめしたい、6歳以上にベストなゲームです。ドイツの最高のメーカーHABA社の名作で、絶版状態からすごろくやの『HABA名作ゲーム復刻シリーズ』として復刻しました。
ヨーロッパの地図上のいろいろな国と国が道路でつながっており、1台のバスを皆で交代で動かします。参加者はそれぞれ“秘密のカード”を持っていて、一人ひとり目的地が違います。自分の目的地は、他の人には秘密です。自分の目的地にバスを到着させることを目指すゲームです。
自分の順番がきたら、袋からチケットを引いて、その指示通りに動かします。道路が分岐している時は、どっちに進むか自分で選ぶことができます。バスの動かし方で他の人の目的地を予想して邪魔をしたり、自分の目的地から遠いところにバスを動かされて“ギャー”っとなったり、ドキドキしながら自分の狙いを達成していきます。ゲーム本来の楽しみを味わうのに、とてもいいゲームだと思います」
◆【番外編:対象年齢6歳〜】『スティッキー』(1〜4人)
所要時間:約15分
「本来は対象年齢6歳以上のゲームですが、遊び方を変えることで3歳くらいからでも遊べます。うちの子どもが3歳のときに、サイコロを振って出た色の棒を、棒の束から引き抜くという棒倒しのようなルールで遊んでみました。
本来は棒の色ごとに点数が付いているので点数が低い棒は抜かずにパスするなど、駆け引きが楽しいゲームです。もし買ったボードゲームがお子さんにはまだ難しかった場合は、簡単なルールにアレンジして遊んでみるのもいいと思います」
◆【8歳〜大人】『犯人は踊る』(3〜8人用)
所要時間:10分 ルール難度:2.わかりやすい
「会話をしながら、犯人探しのドキドキ感や楽しさを体験させてくれる優秀なゲームです。配られたカードの中に、1枚だけ『犯人カード』が入っています。ゲームの中でカードを交換するので、ババ抜きのように『犯人カード』が移動していくことになります。そうやって『今はあの人に犯人カードが移動したな』と考えたりします。探偵の役割のカードを使って『あなたが犯人でしょう』と指摘したり、『違いますよ』と言われたり。
どんどんカードが減っていく中で、誰が『犯人カード』を持っているのか当てることを目指し、『犯人カード』の持ち主は逃げ切ることを目指します。“小さな子どもが楽しめる犯人当てゲームがあったらいいのに”という発想から生まれたゲームです」
◆コミュニケーションの輪を広げるきっかけに
――丸田さんは、ボードゲームの魅力とは何だと思いますか?
丸田:ボードゲームには、子ども向けでも大人が一緒に楽しめるものがたくさんあります。他の娯楽は大抵、大人か子どものどちらかが退屈に感じることが多いので、本当の意味で親子が一緒に楽しめる体験はあまりないと思います。そういう意味では、稀有なエンターテイメントではないでしょうか。一緒に遊べるとこんなに楽しいものはないと思いますので、ぜひチャレンジしてみてほしいです。
最近では、お友達を家に招くような機会が昔よりも減っていると思いますが、僕はよく人をたくさん呼んでボードゲームを楽しむ会を開いています。ぜひ、ボードゲームを介して、お友達と交流する機会を持っていただきたいと思います。
<取材・文/都田ミツコ 撮影/鈴木大喜>
【都田ミツコ】
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。