
「“戦争の弾”として、こちらは亜紀のヌード写真しかないから、その弾を使うだけのことですよ!!」
男性は、そう威勢よく言い切る。
若かりしころに撮影されたプライベート写真
声の主は、2023年12月に急逝した演歌の女王・八代亜紀さんの若かりしころに撮影されたプライベート写真を、追悼CDとともに発売することを企てた人物だ。
男性は、なぜ今“暴露”に至ったのか――。
《八代亜紀さん 私的写真 勝手に頒布 衝撃トラブル》とセンセーショナルな見出しが躍ったのは、2025年3月13日発売の『女性セブン』。
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スポーツ紙記者が解説する。
「過去に八代さんは、既婚男性と不倫関係にあったと報じられたことがありました。そのお相手こそ、レコード会社で八代さんを担当していた音楽ディレクターの男性です。今回、問題となっている写真は、かつて、このふたりの間で撮影されたもののよう。それを所有する会社『ニューセンチュリーレコード』が、4月下旬にその写真を封入した追悼CDを発売するというのです。『ニューセンチュリーレコード』のホームページを見ると、鹿児島県に本社を置くレコード会社を自称しています」
故人の私的な写真が、第三者の手によって公にされようとしている。その理由を、同社の代表である早川寛氏に尋ねると、冒頭のように語ったのだ。
“戦争”とは、いったい何を意味するのか。早川氏は次のように明かす。
「私が写真を封入したCDを発売するに至ったのは、亜紀の所属事務所であった、元『ミリオン企画』社長の大野誠が許せないからです。大野は亜紀が亡くなったことを利用して、新会社を立ち上げ、彼女の絵や楽曲の権利を全部、新会社に移している。
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亜紀は生前“財産をみんなで仲よく分けなさい”と遺言を残したと大野が話している記事を読みました。亜紀の財産を残ったスタッフで分配したら、退職金は1人頭2千万円から3千万円にはなるはず。しかし、スタッフの1人に聞くと数十万円しかもらっていないという。そこで私は大野に不信感を抱いたのです」
おそらく早川氏が読んだのは、2024年12月3日発売の週刊女性に掲載した、八代さんの自宅が売却されたことを報じた記事だと思われる。
記事では《遺言書を作成した弁護士からは“八代亜紀のもとに集まった関係者は、ケンカをせず、その後も仲よくしてほしい”という八代さんの思いがあった》と、自宅売却の背景を大野氏の言葉で報じた。
しかし“財産をみんなで仲よく分けて”との言葉は、どこにも記していない。
また、『ミリオン企画』は八代さんの遺言に従って解散している。大野氏が代表取締役である八代さんの権利や財産を管理する会社は、八代さんの生前に立ち上げを依頼されたとも明かしており、実際その権利管理会社は八代さんが存命だった2023年3月に設立されている。
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謝罪するなら話は別
しかし早川氏は、
「そもそも新たに個人会社を立ち上げる必要がありますか? 亜紀の楽曲などの権利を管理するなら『ミリオン企画』内に新部署をつくればいい。私は筋道の通らないことは嫌いなんです。しかし、人としてやっちゃいけないことをしようとしているのも事実です。ただ、僕がこの戦争で使える武器はこの写真しかない。だから出すことを決めた」
と独自の論理を展開する。
とはいえ過ちに手を染めると理解しているのなら、発売を中止する道はないのか。
「私もこんな騒動にはしたくなかったんです。ただね、大野が“私が間違っていました。ごめんなさい”と謝罪するなら話は別です。そのうえで“じゃあこれを買い取ってくれますか”と、冷静に話ができたはず。
それなのに大野は雑誌の取材に“ニューセンチュリーに権利はない”とか、ああだこうだ言っている。私からすると、連絡もよこさず何言っているんだコノヤロー、です。
ともかく私のこの行動を止めさせるには、ウチの権利、いろんなもの全部買い取ってくれってだけのことですよ」(早川氏、以下同)
結局は金が目的なのか。
「私はお金を持っていますよ。ドカーンとね。仕事なんて何一つない鹿児島で、リゾート地の一等地のマンションに住んで悠々自適に暮らしていますから。金の問題じゃない」
と、キッパリ否定した。
では八代さんの事務所は、こうした事態にどう対処するのか。
元『ミリオン企画』社長の大野氏に話を聞くと、
「現在、八代さんのご遺族が主体となり、弁護士とともに対応しているため、申し訳ないのですが、私が何かコメントをできる立場にはありません」
と話す。早川氏が不信感を持つ、お金のことについてはどうか。
「今回のCD発売を知り、『ミリオン企画』に在籍していたスタッフとも話をしましたが、早川を知る人は1人もいませんでした。またスタッフの退職金も、顧問税理士とともに会社の内規に基づき勤続年数などから算定をして支払いました。法や内規に則って手続きを行うことが必要なものですから、私の独断だけでどうこうできることではないんです」(大野氏)
演歌の女王として活躍し、震災の被災地や養護施設の子どもたちを支援するなど、さまざまな慈善活動も行ってきた八代さんの名誉が今、傷つけられようとしている。
売春を強要されたと告発
八代さんの遺族は、何を思うのか。事情を知るレコード会社関係者が明かす。
「八代さんのご親族は当然、許せないという怒りの気持ちを持ちつつ、それと同じくらい“亡くなった後に、なぜそんな写真を表に出そうとする人がいるのだろう……”と深く悲しみ、傷ついていると聞いています」
そして早川氏の人物像について言及する。
「20年以上前ですが、早川さんは『ニューセンチュリーレコード』所属の女性タレントから“売春を強要された”と週刊誌で告発されているんです。早川さんは、CDの発売には金が必要だと多額の金銭を支払わせ、発売したCDの半数を買い取りさせるなど、タレントたちを食い物にしていた。この問題は裁判にも発展しています」(レコード会社関係者、以下同)
2005年の『毎日新聞』によれば、女性3人が『ニューセンチュリーレコード』と早川氏に損害賠償を求めて提訴したところ、裁判所は同社に約300万円の支払いを命じたとされる。一方で早川氏も名誉を傷つけられたと損害賠償を求めて女性らを提訴したが、裁判所はその請求を棄却した。
「八代さんの遺族は代理人弁護士を通じて、CD発売の中止を要請する通知書を郵送したそうです。その対応を見て、発売を差し止める法的手続きに入っていくと聞いています」
写真封入のCD発売を止めるには
すでに当事者である八代さんは亡くなっているが、写真を封入したCDの発売を止めることはできるのか。法律事務所Zの溝口矢弁護士に話を聞いた。
「写真に関しては、通常なら肖像権やパブリシティー権などの人格権で対抗していきます。人格権は、その個人のみが保有できる権利なので、亡くなると消滅してしまうのです。今回の事案では、人格権を持つ人がいない状態になっています」
では、発売の差し止めは難しいということか。
「販売の差し止めは、人格権を前提に請求するので、ハードルが高いといえます。過去の裁判例では、写真の使用が遺族の故人に対する敬愛追慕(けいあいついぼ)の情を侵害したとして、損害賠償請求が認められた事例があります。故人も遺族も販売を望んでおらず、こうした法的利益の侵害があることを強く訴えることで、差し止めが認められる可能性はゼロではないと考えます」(溝口弁護士)
こんな冒涜は、誰も望んでいないはず――。