
4月3日(木)よる8時より、新番組『toi-toi』(NHK Eテレ)が放送開始する。この番組は今年3月まで13年間続いた『バリバラ』の後継番組となる。当番組の制作を行うNHK大阪放送局は、『バリバラ』の前身の『きらっといきる』(1999年〜)、そのさらに前番組の『列島 福祉リポート』(1997年〜)の時代から長きにわたって福祉や多様性をテーマとした番組づくりに取り組んでいる。
【写真】第1回のテーマはルッキズム。アルビノ当事者が「問い」を立てる
新番組『toi-toi』では扱うテーマをさらに広げ、その週ごとの主人公である「問いを立てる人」と、多様なバックグラウンドと視点を持つメンバー5人が対話を重ねながら「問い」を探求していく。番組の見どころと魅力について、制作統括の久保暢之さんと、第1回の演出を担当したディレクターの加藤寛貴さんに聞いた。
さまざまなマイノリティー性のある人が日常生活に感じる「問い」を立てる
前身の『バリバラ』をはじめ、長らく福祉番組に携わってきた久保さんは、『toi-toi』の番組コンセプトについてこう語る。
「福祉番組というと、どうしてもハードルが高いと思われがちですが、今回はいろんな視聴者の方に見ていただける番組を目指しました。毎回『問いを立てる人』とディレクターが一緒になって『問い』を考えるのですが、それはマイノリティー性のある人も、ない人も、誰しもが『自分ごと』として考えられる、日常生活の中で感じる『問い』です」
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司会者なし、カンペなし。自由に語ってもらう対話番組
「『toi-toi』の収録現場には『司会者』と『カンペ』が存在しません。番組がほしい答えを引き出そうとしたり、ディスカッションの方向性をコントロールしたりするのを一切やめました。6人の出演者の皆さんに自由に、ざっくばらんに語り合ってもらっています。偶発性を大事にしているので時々話が脱線したりもしますが、その脱線が一周回って深い議論につながったりするんです。それがとても気持ちいい、豊かな時間になっています」
出演者の後ろの「紹介パネル」に注目してほしい
4月3日放送の第1回のタイトルは「“見た目”に自信ありますか?」。
アルビノ当事者団体代表の薮本舞さんが「問いを立てる人」となり、ミックスルーツの三浦アークさん、ネット放送キャスターで知的障害のある辰己正一さん、自立生活センター職員で脊髄性筋萎縮症の油田優衣さん、哲学研究者で脳性まひの河合翔さん、随筆家で薬物依存症の風間暁さんという5人の「toi-toiメンバー」と対話をしていく。
出演者たちについて久保さんはこう語る。
「多様な当事者性のある方に出演していただいていますが、メンバーの皆さんの後ろにあるパネルに注目していただきたいんです。障害名などだけではなく、職業や、その人のキャラクターが伝わる座右の銘など、出演者ひとりひとりの中にあるいろいろな側面をパネルの情報に込めています。それらを背負ってお話しいただくことで、見る人も『○○障害のある人』という一面的な見方をせず、出演者それぞれの話を聞いてもらえるんじゃないかと思っています」
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「これまでの福祉番組では、同じような当事者性の方に集まってもらい、共通点をトークをするという作り方が多くありました。しかし『toi-toi』では、マイノリティー性も悩みも全く違うバラバラのメンバーに集まっていただいています。違うからこそ化学変化が起こったり、違うからこそ理解が深まったりする。『パネラー』という一歩引いた立場で評論してもらうのではなく、ひとりの人間同士が6人集まって『みんなで一緒に考えてみよう』という番組です」
第1回のテーマは「ルッキズム」について
番組の名刺代わりとも言える第1回に、ルッキズムというテーマを持ってきた理由について、担当ディレクターの加藤さんに訊ねると、
「ルッキズムは、それについてすごく深く思い悩んでいる方以外でも、誰でも考えやすい問いだと思うんです。『見た目』って、誰しも小中高生の頃に一度は悩んだりしますよね。多くの方に『自分ごと』として考えてもらいやすいのではないかと、初回のテーマとして選びました」
と話してくれた。また加藤さんは、第1回の「問いを立てる人」となった薮本舞さんから言われた、こんなひと言が心に残っているという。
「『toi-toi』ではスタッフと『問いを立てる人』が一緒になって考えて、現場に出て取材をして、番組を作っていきます。その中で薮本さんに、『他の番組は制作者が言いたいことを私に当てはめるようなやり方だったけど、この番組は一緒に作っていく。大変だったけど、楽しかった』と言ってくださった。それが嬉しかったです」
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「NHK大阪ではずっと『当事者発信』『当事者視点』を大切にしてきました。その伝統を引き継ぎながら、『toi-toi』では福祉番組に軸足を置きつつも、あらゆる視聴者の方々の知的好奇心を刺激するような番組作りを目指しています」
toi-toiメンバーの魅力を際立たせる、稲垣吾郎の「声」
番組のナレーションを務める稲垣吾郎の声が、この番組のテイストにとてもマッチしている。稲垣の起用理由について久保さんは、
「世代や性別を問わず親しまれてきた方でいらっしゃいますし、より多くの視聴者の方々に関心を持っていただくために、という気持ちももちろんありますが、とにかく声の透明感に惹かれました。稲垣さんの声はとてもフラットで、どの色にも寄らない、偏らない。色とりどりの多様性を持つメンバーの皆さんの魅力を際立たせる役割であるナレーションには、ぴったりの声だと思いました」
と明かす。
視聴者と双方向で一緒に考える「装置」に
最後に、久保さんから視聴者にメッセージをもらった。
「ご出演いただいている方の中には知的障害者のある方、脳性まひの方、言語障害のある方など、さまざまな障害のある方がいらっしゃるのですが、対話がちゃんと成立しているんですね。それは、『言葉が聞き取りにくいときは言ってね』『ちょっとわかんなかった。もう1回言って』とフランクに言い合える空間が、メンバーの中で出来上がっているからなんです」
「誰もが対等に話ができる。どんな人もその人らしくありながら、当たり前に認め合える世の中になったらいいなと僕は常々思っているのですが、6つの椅子が車座に並んだ『toi-toi』のスタジオは、そうした我々制作陣の姿勢を表す場所なのかなと思っています」
「この番組は『問い』と『対話』をキーワードにしています。番組を見てくださった皆さんに何かを感じていただいたり、ご家族の間で『問い』について会話をしていただいたり、SNSで『自分はこう思った』というような発信をしていただけたりしたら嬉しいです。一方的に情報を伝えるのではなく、双方向のやりとりで一緒に考える『装置』に、この番組がなっていくことができればと願っています」
(まいどなニュース特約・佐野 華英)